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雪マークの新潟

 新潟は冬本番。
 今年は晩秋になってから割と過ごしやすく、紅葉もきれいだった。そのせいか、師走の声を聞いたとたん、急に冬ざれた印象だった。
 例年、勤労感謝の日あたりをさかいに、日本海に面した新潟の雲は灰色がだんだん濃くなってくる。
 天気がめまぐるしく変わる。これは通年だけど、この時期は特に変化が激しい。晴れ、曇り、雨、雷、雪、すべての天気マークが必要になる。おかしなもので、小学校で天気の記号を習った時、もっと雪マークがいっぱい使えたらいいのにと、思っていたら、いつの間にか雪マークだらけの町に住んでいる。雪の苦労を知らないから、雪はきれいで珍しいものでしかなかった。
 弁当忘れても傘忘れるな。これに私は、晴れていても出かける前には洗濯物をとりこめ、を加えたい。いいお天気でも、あっという間に時雨になって洗濯物を洗い直す経験は、新潟に住むとみんな経験することではないだろうか。この数年、私は風呂場干しの一択にしている。
 気分的にいちばん嫌なのは、冷たい雨の多いこの時期。しだいに荒れて、風が台風並みに強く、海は大荒れになる。最大風速10メートルなんて、まだおとなしいほうだ。昨日、12月5日だったか、佐渡では最大風速32.9メートルを観測し、竜巻が起こって家屋の屋根がはがれたり、被害が出た。
 新潟の人は動じない。愚痴もさほど聞こえてこない。毎年ながら、私は淡々と日常を生きるその姿を貴いと思う。
 私などは少し風が強いとくじけそうになり、用事がある時は決死の覚悟で出かけるが、けっこうふつうに人々が行きかう。
 自然の前で人は無力である。お天道様に文句を言ってもしょうがない。抗わずやりすごすしかない。どんなにひどい天気でも、やがては終わる。
 荒々しい自然と折り合いながら暮らしてきた新潟の人々には諦観がある。
 ある大作家の小説を読んでいたら、その人は、越後の人を愚直に雪を耐えると、もっとひどい表現で書いていて、正直、私は腹が立って、そこで読むのを止めてしまった。
 新潟や、豪雪地帯の人々は人間ができている。毎年、冬、全員で寒行をしているようなものだから。
 そして、明るく、愉快に過ごす知恵がたくさんある。別に無理して辛抱しているわけでもない。
 雪が降ると覚悟が決まる。新潟らしいこの気候をしみじみ味わおうと思う。
 
 

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