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長岡良子「古代幻想ロマンシリーズ」
「日出処の天子」と並び、私の古代史好きを決定的にした長岡良子さんの「古代幻想ロマンシリーズ」。
残念なことに紙の書籍としてはシリーズ全て絶版となっているようですが、便利な世の中になったもので、今なら複数の配信サービスにより電子コミックで読むことも出来ます。
シリーズ中、奈良時代が舞台のものは乙巳の変から壬申の乱を経て、元明・元正天皇の頃までが描かれていますが、中でも藤原不比等を主人公にした「天離る月星」と「眉月の誓い」が大のお気に入りで、今でもよく読み返しています。
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注)以下ネタバレあり
長岡先生はこの2作品については『尊卑分脈』をネタ元にしたらしく、不比等は天智天皇のご落胤という設定で、頭脳明晰かつ超美形キャラに描かれています。
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入内した五百重娘(いおえのいらつめ)を取り戻し、かつて自分を貶め傷つけた者達への復讐のために、時には謀略に手を染め、のし上がっていく姿は今思うとシャアみたいですね。
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余談ですが「御意」という言葉は不比等のセリフで知りました(笑)
五百重と不比等のロマンスを中心に据えながらも、全体としては骨太な歴史劇が展開されており、作者がこれらを描くにあたり、先の『尊卑分脈』のほか各資料を丹念に読み込んでストーリーを練ったことが伺えます。
名前のある登場人物はほぼ実在の人物ですし、随分あとになって気がつきましたが田辺の大隅が隠し持っていたという体で「国記」もさらっと出てくるんですよ。
それだけに、2000年以降(多分)長岡先生が古代日本史モノを描いていないのがちょっと寂しかったりはします。
ところでこの物語は律令にはじまって律令に終わります。
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作者は不比等が「眉月の誓い」を果たし五百重を取り戻すところではなく(しかもその後の二人の描かれ方は読者の期待を裏切る?😅)、律令制定をもって物語の完結としたのは、7世紀という時代そのものを描きたかったのでないかなと想像しました。
二人のロマンスも歴史の一部分であり、不比等も時代を描くためのキープレーヤーなんだよと。
いや、私が勝手にそう思ってるだけですけどね💦
でも上でも書いたように、骨太な歴史劇であることがこの作品が好きな理由。
だから韓流時代劇も大好きですけど、設定だけ歴史から借りてきて自由に創作するフュージョン時代劇は、史実からの大きな逸脱や現代的すぎる表現が多かったりしてあまり好みじゃないんですよね。(まあ歴史劇で当時の風俗を史実通り完全再現してるドラマなんてどの国にもないでしょうけど。)
話は変わりますが長岡良子さんの古代幻想ロマンシリーズの中で「天離る月星」「眉月の誓い」についで好きなのは「異聞竹取物語」です。
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源氏物語の中で「物語の出で来はじめの祖(おや)」とも語られている、日本最古の文学作品「竹取物語」。
「竹取物語」の作者が田辺百枝であるというストーリーは長岡先生独自の仮説に基づいているものと思いますが、「竹取〜」の舞台設定や含まれる風刺性からも初めて読んだ当時、この説に非常にリアリティを感じました。
作者像として、当時の推定識字率から庶民は考えづらく、上流階級に属しており、貴族の情報が入手できる平安京近隣に居住し、物語に反体制的要素が認められることから、当時権力を握っていた藤原氏の係累ではないと考えられている。
さらに、漢学(漢語・漢文訓読体の使用)・仏教・民間伝承に精通し、仮名文字を操ることができ、和歌の才能もある知識人で、貴重であった紙の入手も可能な人物で、性別は男性だったのではないかと推定されている。
その着眼点もさることながら「竹取物語」そのものの解説も丁寧でわかりやすく、古代へのさらなる好奇心を掻き立てられる作品と思います。
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また、「異聞竹取物語」には不比等の息子達、藤原四兄弟も登場します。
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昔から、四兄弟の中でも房前を不比等に最も似せて描いているのは何でかなーと思っていましたが、おそらく
四兄弟の中で政治手腕が最も優れていたと言われている
兼家や道長や頼通など、藤原家のスーパースターはみな房前の嫡流(北家)である
このあたりが理由なんじゃないかなと。
古代幻想ロマンシリーズはこんな風に作者の頭の中をあれこれ想像するものまた楽しいんですよね。
古代日本史が好きな方は是非一度読んでみて欲しい作品です。
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