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日本歯科新聞編集長・冨田インタビュー「情報配信で歯科医療に貢献したい」

冨田真人 週刊『日本歯科新聞』編集長
2005年入社以来、「日本歯科新聞」の編集一筋。学術面などの担当記者を経て、現職。日歯・厚労省の審議会・記者会見から、学術大会、全国の歯科大学・歯学部、歯科医院まで幅広く取材。書籍『3.11 歯科界の記録―東日本大震災の被害・復興・支援活動』編集主幹。現在は改めて医政の取材のおもしろさを実感中。
インドア派に見られることが多いがスポーツ好き。総合格闘技ファン、朝倉未来選手推し。

◆歯科医療界に向けて情報を発信

―まず、「日本歯科新聞」について教えてください。
冨田 歯科医療関係者向けの週刊紙です。厚労省の審議会や歯科医師会などの歯科医療行政の動きや、大学の研究、器材の製品情報などを掲載しています。
 ブランケット版(朝日新聞や読売新聞などの日刊紙と同じ大きさ)です。毎週、だいたい8~10ページくらいで発行しています。

―いつ頃から発行されている新聞ですか。
冨田 1967年の創刊で、60年近くの歴史があり、2012年からデジタル版も発行しています。

―読者は歯科医療関係者とのことですが、具体的な特徴は。
冨田 歯科医療器材のメーカー・ディーラー、大学・教育関係者、歯科技工士、行政関係者など様々ですが、開業の歯科医師が最も多いボリュームを占めています。特に、歯科医師会を始めとする様々な団体の役員の方が熱心にチェックしてくださっています。
 また、歯科医院を顧客とする税理士事務所やインターネットサービスの会社、地域の保健センターなどにもご購読いただいています。

サイズは朝日新聞や読売新聞などと同じブランケット版

◆甘党メンバー6人で新聞づくり

―どんな編集チームで制作していますか。
冨田
 専属の記者は私を含めて4人、レイアウトオペレーションの担当者が2人ですね。
 当社の場合、記者全員が記事の執筆だけでなく、校正、レイアウト、見出しつけを担当します。社歴や年齢に関係なく、常に全員が意見を出し合いながらブラッシュアップを考えています。

 編集部員の個性はばらばらですが、強いて共通点を上げるとしたら、甘党が多いということでしょうか。私もお酒がまったく飲めませんし、前編集長は「ご飯に砂糖をかけて食べたい」というほどの甘いもの好きでした。仲は良いですが、団体行動を強制されるのが苦手なタイプばかりで、いわゆる「飲み会」というのは、ほとんどありませんね。仕事が終わったら、みんなさっさと帰ります。
 

レイアウトや見出しについて話し合う様子(机の上の扇風機は換気促進、暖房冷房のエコ対策のためのものです)

◆とにかく記事を書くのが好き

―そうしたメンバーの中で、編集長の役割とはどんなものでしょうか。
冨田
 どちらかというと、編集長というよりはリーダー記者のような立ち位置かもしれません。
 編集長はいわゆる「デスク」といって自分自身では記事を書かず、編集全体のディレクションに特化するケースも多いのですが、私自身が取材して記事を書くのが好きということもあり、記者の一員として仕事をしています。
 記者がそれぞれの感性で「面白い情報」を展開することで、より紙面が活気づくと思うので、編集部スタッフの一人一人の強みを生かして活躍できる環境づくり、編集部体制を作っていくのが私の編集長としての役割なのかなと感じています。
 

◆全国の歯科大学・歯学部を巡って

―編集長になるまでの経歴を教えてください。
冨田 2005年に入社し、ずっと日本歯科新聞の編集部に所属しています。
 私は高校卒業後、2年フリーターとしてバイクで北海道を一周するなど自由に過ごした後、会社の近くにあるエディタースクールという編集の専門学校に通っていました。卒業を控え、就職活動をしていたら、当社の募集があり、2月に採用されました。もともとは4月入社の予定で就職活動をしていたのですが、「いつから来られますか?」と聞かれ、とっさに「来週からでも」と答えてしまい、専門学校を卒業をしないままに2月に入社しました。
 入社してから、新聞独自の編集ルールや記事の書き方、写真の撮り方などを先輩から教わりました。歯科のことは何も知らないまま入社したので、最初はまったく専門用語なども分かりませんでしたが、先輩や取材先の方々に教わりながら、徐々に学んでいきました。

―どのような記事を担当してきましたか。
冨田 医療行政・歯科医師会など担当する先輩のアシスタントから出発し、大学や学会の担当になった際は、秋の学会シーズンは毎週末、学会に取材に行っていました。
 日本には29の歯科大学・歯学部があるのですが、大学・学術担当になったからにはすべてに足を運ぼうと、毎月1校ずつ各校の特徴を紹介する連載の企画を通して、北海道から鹿児島まで取材に行きました。どこでも温かく迎えていただき、歯科学生教育のこれからをお聞きできたことは、私の貴重な財産になりました。
 今は再び医療行政を中心に取材しており、新人の頃よりさらに取材が面白いなと感じています。

―特に関心のあるテーマは、ありますか。
冨田 最新の研究成果は全般的に興味を惹かれるのですが、だんだんと実用化されてきた再生医療が、どのように活用されていくかに特に注目しています。
 また、かかりつけ歯科医の役割が具体的にどのようになっていくかも興味があります。健康寿命の延伸に寄与すると言われている歯科医療ですが、データヘルス改革も含めて各医療機関が何をすれば良いのかが具体的に示されていない段階だと思うので、今後が気になっています。
 また、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨など被災地の現地取材も多く携わってきたので、災害時の歯科保健医療の在り方、警察歯科の活動などは継続して追っていきたいと思っています。

―新聞づくりで楽しいと感じるのは、どんなところですか。
冨田 何より取材を通してさまざまな人や考え方と出会えることだと思います。自分になかった考え方に触れるのも新鮮です。
 また、制度などが変わるプロセスや決定的な瞬間に立ち会えるのも、記者ならではの魅力ですね。

―逆に大変なところは、どんなことでしょうか?
冨田 週刊「日本歯科新聞」だけでなく、日刊「歯科通信」も発行しているので、いつもあわただしく、締め切りに追われて、焦って記事を書く日もありますね。もっと記事を掘り下げたいという気持ちと目の前の締め切りの狭間で過ごしています。
 また、発言者の意図した内容やニュアンスを分かりやすく、そして正しく伝えるにはどうすればいいのかという一番の基本が、永遠の課題です。
 

◆「ねぇねぇ」と「シェア」を目指して


―どのような新聞を目指して作っているのでしょうか?
冨田 誰かに会った時に思わず「ねぇねぇ、アレ知っている?」と話したくなる情報が毎号一つでも載っている新聞でありたいと思っています。
 ネット時代の今、玉石混交とはいえ自分が欲しい情報は、いくらでも検索できる時代になりました。それに対し、ぺらぺらとページをめくって、思いもよらない情報と出会えるというのが新聞の醍醐味でもあると思います。
 そのためにも読者がどのようなことに関心があるのか、どのようなことで困っているのかヒントを得るために、取材の時もなるべく雑談を大切にしています。

 そしてもう一つ、歯科界の良い取り組みをシェアする場でもあったらよいな、と考えています。例えば「口腔がん検診」や「震災などの災害時の歯科医療の介入」、「小児患者の虐待の早期発見」など、一部のグループが始めた取り組みが全国の歯科医療現場に広がった事例はたくさんあります。そうした様々な現場の取り組みを紙面で紹介することも、専門紙の役割だと思っています。
 私たちは情報発信を通して、歯科医療者を支え、少しでも社会に貢献できたらと思っています。

―プライベートはどのように過ごしていますか?
冨田 学会を担当していた頃は、土日の取材も多かったのですが、コロナ禍でのオンライン開催・ハイブリッド開催のお陰で、家族で過ごす時間が増えました。
 また、体を動かすことが若い時から大好きで、最近、ボクシングジムに通い始めました。フィットネスで体を動かすだけでも気分がリフレッシュしますが、ミットやサンドバックを叩くと普段とは違った爽快感がありますね。

社員に聞いた冨田編集長の印象&エピソード
・飄々としている。
・本気で怒っているところを見たことがない。
・なんでもこなす。器用。バランスがいい。
・身体能力が高く、天狗がついてるんじゃないかと思うことがある。
・ボルダリングにはまっていた時、給湯室の鴨居とか、会社の色んなところにぶら下がっていた……。

(2022年4月収録)


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