忍殺TRPGソロリプレイ【リトル・ニンジャ・アンド・ビッグ・モンスター】

◇前置きな◇

 ドーモ。しかなです。今回もまた気まぐれにソロリプレイをしていくぞ。

 今回やるのはこの非公式ソロシナリオだ。

 見てお分かりの通り、自作のソロシナリオである。そういえばテストプレイもしていなかったし……ということで、許してほしい。

 で、下水道に探検に行くのはこのニンジャだ。

ニンジャ名:リトルスナッチ
【カラテ】:6
【ニューロン】:3
【ワザマエ】:2
【ジツ】:2(ムテキ)
【体力】:6
【精神力】:3
【脚力】:3(+1)
持ち物など:
オーガニックスシ
ヒキャク
○ピンハネ

 カラテに特化したニンジャである。そのくせ生い立ちがピンハネなので、まあ小悪党なのだろう。サイバネも持たせてみたが、例の自称女子高生サイコパスニンジャと同じヒキャクとなった。まあ、そういうこともある。あと性別でアンケートを取ったところ、男装美少女という結果になった。

 では早速やっていこう。ヨロシクオネガイシマス。

◇オープニング◇

「リトルスナッチ=サン。少しいいか」

 今日のミカジメ・フィー徴収を終え、さっさとスカウト部門オフィスを後にしようとしていたリトルスナッチは脚を止めた。呼び止めてきたのはくたびれたヤクザスーツの男。

「なんだよ、アベレージ=サン。オレ、もう今日あがろうかと思ってたんだけど」
「そういうな。いい小遣い稼ぎのできる仕事を紹介してやる」

 小遣い稼ぎ。その言葉に興味を惹かれたリトルスナッチは足早にアベレージの元まで向かう。最近置換したばかりのサイバネ脚が、小気味いい金属音を立てた。

「カネか。いいねェ。あって困るもんじゃない。で、なんの仕事? ヤクザ事務所の襲撃か?」
「臭いところは好きか?」
「ハァ? 好きなやつのほうが珍しいだろ」
「だろうな。俺も嫌いだ。だがカネを稼ぎたいんなら諦めてくれ……頼みたいのは下水道掃除なんだからな」

 リトルスナッチは素直に今の気持ちを顔に出した……つまり、大いに顔をしかめた。アベレージが苦笑する。

「まさかと思うが、文字通りの掃除と捉えてないだろうな? そんなことにわざわざニンジャを使わんよ」
「じゃあなにすんだ」
「『ネオサイタマ・アーバンレジェンズ』。見たことは?」

 突然の変化球的質問に、リトルスナッチは訝しみつつも頷いてみせた。有名なスカム都市伝説番組。胡乱な噂の検証と称して、普通の報道番組が踏み込まないところに突っ込むのが売りだ。アベレージがうんざりとした様子で続ける。

「そこの報道員が、幻のアルビノワニ捜索とかいう名目で下水道に潜り込んでな。消息を絶った」
「……死んでんじゃねェの、それ」
「俺もそう思う。が、非ニンジャの生死なんぞどうでもいい。重要なのは、テレビ局がやきもきしながらその生死確認を待っているという事実だ。報道員の死体なりスクープ映像なりを持ち帰ってくれば、恩が売れる」

 ああ、とリトルスナッチは納得した。報道機関とのコネが得られるのならば、成る程カネも出るだろう。

 アベレージは真っ直ぐにリトルスナッチを見やる。

「実際にアルビノワニがいるかもわからんが……まあ、お前なら大丈夫だろう。信頼の置ける、たしかなカラテがあるからな」
「フフン! まあ見てろ! すぐに片付けてきてやる!」

 いくらか得意になりながら、リトルスナッチは携帯IRC端末からミッションの情報を受け取る。アベレージはミカジメ・フィー徴収の度に顔を合わせる程度の仲だが、リトルスナッチは彼のことを気に入っていた。自分のカラテを評価してくれるからだ。

 いずれにせよ、こうしてリトルスナッチの下水道探索は始まったのである。

◇本編な◇

 ネオサイタマの地下に張り巡らされた下水道は、もはやダンジョンといっても差し支えない程度に入り組み、複雑化している。清掃業者であっても行方不明になる……という噂さえあるほどだ。

「……ウエー。やっぱクセェなここ……」

 鋭敏な嗅覚に届くドブの臭気にげんなりとする。幸いなのは、アベレージが報道員が行方を絶った場所の位置情報を連携してくれていたことだ。なので下水道にいる時間を短縮することができる……

アイエエエ!?」

 突然の悲鳴。リトルスナッチは顔をしかめた。下水側道の影から顔を突き出したのは薄汚い浮浪者だ。突然の遭遇に驚いたのだろうか、懐からチャカガンを取り出しこちらへと向ける。

「ハン! ちょうどいいウォーミングアップだぜ!」

 リトルスナッチは笑う。浮浪者など恐るるに足らず。カラテを構えて、踏み込む!

【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 1, 1, 2, 3, 3 失敗!

 だが、そのときだ! 「ンアーッ!?」リトルスナッチが突如転倒! 遅れて引き金を引こうとしていた浮浪者も目を丸くし、硬直! ナムサン! なにが起こったというのか!?

 ……それを説明するには、まずこのニンジャがどのような性格の持ち主であるかを説明するところから始めねばならない。小さなヤンクチームに所属して暴れまわっていた頃から、彼女はその背の低さを周囲にからかわれていた。負けん気の強いこのニンジャにとって、それは耐え難い屈辱であった。

 故に、リトルスナッチは身なりに気を使う。まずナメられない外見から入ろう、という思考からだ。日々のミカジメ・フィー徴収からわずかな額をピンハネし、ヤクザスーツとヤクザコートの購入に当てた。このとき、やや見栄を張って大きめのサイズを購入した。

 そしてふわふわローンでローンを組み、自らの脚をサイバネに置換。その際にやや寸法を長めにとった。もっとも、あまり長すぎると見た目がアンバラスになり返って失笑を買う。テッコへの置換を次の目標としつつ、それでも身長を底上げした。

 つまるところ、リトルスナッチの見栄によって新調されたサイバネ脚が気づかぬうちに大きめのヤクザコートを踏みつけており、そのために転倒した格好だ。インガオホー!

「……ち、チクショウがァーッ!」
「アイエエエ!」

 BLAM! 怒りの雄叫びとともに起き上がるリトルスナッチに恐怖を刺激され、浮浪者はついに発砲!

【回避】判定(難易度NORMAL)
7d6 → 1, 2, 4, 6, 6, 6, 6 成功

 「イヤーッ!」だがリトルスナッチはこの銃弾を拳で弾く! そしてあっという間にワン・インチ距離へと達すると「イヤーッ!」「アバーッ!?」浮浪者の脇腹へケリ!ほとんどくの字型に身体が折れ、即死! そのまま下水の中へと叩き込まれた!

「クソが! 恥かかせやがって!」

 吐き捨てたリトルスナッチは、足音も荒く下水道の奥へと進んでいく。恥のためか怒りのためか、その顔はひどく紅潮していた。

◇◆◇◆◇

 あれからどれほど歩いただろうか。行けども行けども、風景は変わらない。薄暗い闇。側を流れていく下水。時折前を走り抜けていく、丸々と太ったバイオドブネズミ。リトルスナッチの顔にげんなりとした色が浮かぶ。そのときだ。

アイエエエエ! 助けてーッ!」

 悲鳴とともに駆けてきた人影に、リトルスナッチは身構える。それはラフな格好の男だ。全身ズタボロで、浅からぬ傷さえ伺える。彼はこちらを認めるや否や、転げんばかりの勢いで縋りついてきた。

「た、助けてください! ワニが! アルビノワニが、みんなを!」
「アルビノワニだァ……?」
「ほ、本当なんだ! 映像だってある!」

 わたわたとビデオカメラを引っ張り出す男を、リトルスナッチは冷たく見下ろした。どうやら例のスカム都市伝説の報道員らしい。生きていたとは驚きだ。

 そしてこの状況でつまらない嘘などつくまい。彼らはアルビノワニに遭遇し、襲撃を受け、この男を除いて……おそらくは全滅だろう。この狭い空間の中、猛獣に襲われた非ニンジャが生き残れる可能性は極めて低い。

「まあ、いい。オレがなんとかしてやる」
「ほ、本当か!? ありがたいが……アブナイぞ! よく見ればまだ子供じゃないか……」
「……ア?」

 報道員が何気なく口を滑らせる。それが彼の運命を決めた。

選択肢2:汚らしいこの報道員を掃除し、スクープ映像の記録媒体を奪い取る
【万札】4、【スクープ映像の記録媒体】、【DKK】3獲得

 「イヤーッ!」「アバーッ!?」リトルスナッチのサイバネ脚が、無慈悲に生き残り報道員の頭を踏み潰す! 当然即死! 「クソが! イヤーッ!」リトルスナッチはもはや血溜まりと化した報道員の頭をさらに踏みつける!「非ニンジャのクズ風情が! イヤーッ!」踏みつける!「このオレを! バカにしやがったな! イヤーッ!」ナ、ナムアミダブツ……!

 ……息を荒くしてリトルスナッチが暴虐をやめたころには、すでに報道員は首なしの死体と成り果てていた。リトルスナッチは鼻を鳴らし、残った死体を下水道へと蹴り落とそうとする。どのみち、元から死んだと思われていた連中だ。帰ってこないことに疑問を抱くやつなどいないだろう。

 「おっと。忘れてた」

 ふと脚を止めたリトルスナッチは、報道員の死体を漁り、スクープ映像の記録媒体と万札を抜き取る。ミッションにはこうした臨時収入がつきものだ。先ほどの暴言の慰謝料として、これは懐にしまっておくとしよう。

 改めて死体を下水の中へ蹴り落としてから、リトルスナッチはぶらぶらと報道員が駆けてきた方角へと歩き始めた。

◆◇◆◇◆

「アーアー、ひっでェなこりゃ」

 ようやく目当てのものを見つけたリトルスナッチは眉をひそめる。ナムサン……彼女の眼前に広がるはツキジめいたゴア風景。力任せにちぎられたと思しき人体のパーツが散乱し、下水には恐怖の表情を浮かべたオイランレポーターの上半身が浮かぶ。流れ出た血が下水を赤く染めている……

 ゴポリ。その中から湧き上がった泡を、リトルスナッチは見逃さなかった。

【ニューロン】判定(難易度EASY)
3d6 → 2, 4, 5 成功!

 「イヤーッ!」リトルスナッチは跳躍した。直後! SPLAAAAASH! 「GROWL!」下水と血肉を撒き散らして飛び出してきたのは、闇の中でもはっきりと視認できるほどに白い大型のワニ! 顎門が凄まじい音を立てて噛み合わされる!

「本物のお出ましか? だがいらねェ! スクープ映像があるんでな! イヤーッ!」

【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 1, 2, 4, 6, 6 成功!

 足場へ這い上がってきたアルビノワニ向け、リトルスナッチは急降下! そのまま頭部へ強烈な蹴りを見舞う! 「アバーッ!」 アルビノワニが呻き、もがき………やがて力尽きた。

「ハン! 大したことのない……?」

 勝ち誇ろうとしたリトルスナッチは、ふと違和感に気付く。アルビノワニの体躯にはすでに浅からぬ傷がいくつも刻まれていた。明らかに今のカラテで生じた傷ではない。

 ザンシンをといた彼女は、無造作にアルビノワニに近づくとその顎を開けて中を覗く。牙には屍肉がこびりついていた。報道員たちのもので間違いあるまい。この惨劇を作り出したのはたしかにこいつだ。だが……

(非ニンジャの連中が、こんな傷をつけられるか……?)

 体躯へと視線を移す。穿たれた傷は、より大型の獣による咬傷のように見えた。バカバカしいと言ってしまえばそれまでの話。しかし尻尾の方を見ると、あまり笑ってばかりもいられなくなる。そこに突き立つのはスリケンだからだ。ニンジャの仕業!

 リトルスナッチは下水道のさらに奥を見やる。ミッションはこれで完了だ。下水道に長居する理由もない。……しかし、気になる。やや逡巡してから、彼女は結局奥へと進み始めた。

◇◆◇◆◇

 薄暗い闇。側を流れる下水。たまに前を走り抜けるバイオドブネズミ。代わり映えのしない風景が続く。だがその中に荒い息遣いを察知し、リトルスナッチは警戒を強めた。

 そしてついに、見つけた。

「こいつは……!」

 思わず呻きが漏れる。果たしてそれは、先ほどのアルビノワニとは比べるべくもない巨体の持ち主だった。爛々と輝く二対の目がこちらを睨む。オオカミめいた頭部が二つ。それは八つの脚を備えた巨大な胴体へと繋がっていた。双頭なのだ。

 そしてその背には小柄な影が跨っている……否! 人間の上半身が生えているのだ! イルカめいて湿った黒色の肌を持ったその者は、アンバランスなまでに端正な顔をしている。尋常の存在ではない!

「……ドーモ。リトルスナッチです」

 リトルスナッチは油断なくアイサツを繰り出す。相手がニンジャ……正確には、ヨロシサン製薬で研究されているというバイオニンジャと看破したからだ。先ほどのアルビノワニに手傷を負わせたのもこいつだろう。油断ならぬ相手!

 だが、いつまでたっても相手はアイサツを返さない。なんたるシツレイか? まなじりを上げかけたリトルスナッチは、すんでのところで己の勘違いに気付く。返さないのではなく、返せないのだ。衰弱しきっているのである。

(さっきのワニとのイクサでやられたのか? でも、傷があるようには見えねえしな……)

 当然のごとく、リトルスナッチは知らぬ。バイオニンジャはその生命の維持にバイオインゴットが不可欠であり、この個体がその供給を絶たれ欠乏症に陥っていることなど。彼女は自らの行動を決めかねた。そのとき!

「フゴーッ……」

 重い足音が向こう側からやってくる。「イヤーッ!」リトルスナッチは衰弱バイオニンジャを避け、反対側の側道へと跳躍した。そして来訪者を見やる……バイオスモトリだ。ただのバイオスモトリではない。ヨロシサンの社印が刻印されたボディアーマーを装着している。脱走バイオニンジャを駆除するためのトルーパーか。

 バイオスモトリはヨロシ・デコンタミネイター火炎放射器を構えた。あのバイオニンジャを焼却処分するつもりか。それは別にいい……いや、よくない!

「おい、待て」

 リトルスナッチは思わず呟いた。下水道はそこまで広くない。もしあの位置から火炎放射されれば……まず間違いなく自分も巻き込まれる。バイオスモトリの手が火炎放射器のトリガーを「イヤーッ!」

【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 5, 5, 6, 6, 6 成功! バイオスモトリ【体力】4 → 3
著者注:本来はサツバツ! が発生してもいいのだが、そういえば書き忘れていたので今回は単純に成功とした。あとでシナリオを修正します

 「フゴーッ!?」バイオスモトリがたたらを踏み、後退! 「テメェーッ! オレごと焼こうとしやがったな!?」リトルスナッチは怒りのままに指を突きつける! 「オレが小さくて見えなかったってかァ!? ふざけやがって! 殺す!」「フ、フゴーッ!」ボウ! バイオスモトリが火炎放射で反撃!

【回避】判定(難易度HARD)
7d6 → 1, 2, 2, 2, 4, 5, 6 成功
【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 1, 2, 5, 6, 6 成功 バイオスモトリ【体力】3 → 2
【回避】判定(難易度HARD)
7d6 → 1, 3, 3, 4, 4, 5, 5 成功
【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 1, 2, 3, 4, 5 成功 バイオスモトリ【体力】2 → 1
【回避】判定(難易度HARD)
7d6 → 1, 1, 1, 1, 1, 3, 4 失敗 リトルスナッチ【体力】6 → 5
【カラテ】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 1, 1, 4, 5, 6, 6 成功 バイオスモトリ【体力】1 → 0

 「イヤーッ!」「フゴーッ!」「イヤーッ!」「フゴーッ!」炎が下水道を照らし、風めいたニンジャの姿をさらけ出す。ヤクザコートをはためかせたリトルスナッチは、怒り狂ったネコめいて縦横無尽に駆け回り、バイオスモトリのボディアーマーを着々と破壊していく! 「フ、フゴーッ!」

 ボウ! バイオスモトリは決死の覚悟で火炎をばらまく。その一つが偶然にもニンジャを焼いた。だが、それだけだった。「テメェーッ! オレの! 一張羅を! よくも! イヤーッ!」火炎を切り裂いて飛び出したリトルスナッチが、バイオスモトリの頭部を打ち砕く! バイオスモトリはよろめき、下水の中へと落ちていった。

「ハァーッ、ハァーッ……ふざけやがって」

 リトルスナッチは忌々しげに下水へ唾を吐き、衰弱バイオニンジャを見やる。あれがヨロシサンに追われているのは間違いない。自分を巻き込んだ慰謝料として、命をいただく。ハントしてヨロシサンからカネをもらうのだ。

 ……結論から言うならば、彼女は結局そうしなかった。リトルスナッチはこちらを弱々しく見やるバイオニンジャを見た。その目にはたしかにあの輝きがある。ミカジメ・フィー回収のためにヤクザ事務所へ赴くと、時折レッサーヤクザから向けられるあの眼差し。こちらにソンケイを感じ取った者の目。

 リトルスナッチの不機嫌は、それで即座に吹き飛んだ。

「ア、アー……無事で何よりだったな! バイオニンジャ=サン!」

 ニコニコと笑みを浮かべ、近づく。犬胴体のために背丈がだいぶ違うが「イヤーッ!」その背の上に飛び乗り、無理やり視線を合わせた。

「どうやらだいぶオツカレのようだな。よし、今のオレは気分がいい! スシを分けてやろう」

 そう言って、携帯用スシパックから取り出したスシを一つ、バイオニンジャ上半身の口へと詰め込む。やや億劫そうに咀嚼したバイオニンジャの目に、弱々しくも光が戻った。

「……ドーモ。ドッグスレッド、です」
「ドッグスレッド=サンか。いい名前だな!」
「……アリガト、ゴザイマス」
「ウム! しかし、なんだな。まだ調子が悪そうだが……」
「インゴット……バイオインゴットがあれば……」
「……よくわからんが、たぶんトコロザワピラーにあるんじゃないか? そうだ! お前、オレと一緒に来い! ソウカイヤはお前のようなニンジャも受け入れるぞ! たぶん!」

 リトルスナッチは満面の笑みだ。ニンジャをスカウトすればボーナスが出る。その事実をたった今思い出したのである!

「……ソウカイヤ」
「そうだ。歩けるか? 出口の方角は教えてやる」

 ドッグスレッドは低く唸った。その身体が持ち上がる。よろめきつつも立ち上がった双頭の犬胴体が、それでも確かに歩き始めたのだ。

「ハッハ! これはスゴイ!」

 犬の背に揺られ、リトルスナッチは笑った。そしてトコロザワピラーで待つボーナスに思いを馳せた。

◇エンディング◇

「……というわけで、ニンジャをスカウトしてきた! ボーナスをくれ」

 にこやかに手を差し出すリトルスナッチに、アベレージは顔をしかめた。その手に茶封筒を載せつつ、彼女の背後を見やる。重バイオサイバネ者用に備えられたバイオインゴットを、双頭の犬が貪っていた。

「オオ……甘露。助かった」

 背から生えた人の上半身がうっとりと呻く。一糸もまとわぬその肌は、まるでイルカめいて湿った黒色だ。波打った髪に覆うに任せるのみ。美人だ。上だけ見れば。

 アベレージはリトルスナッチへ視線を移す。

「ヨロシサンのバイオニンジャ……報道員どもはアレに?」
「いや、奴らはアルビノワニのエサになってた」
「そちらも本当にいたのか」

 どこか呆れたような声。リトルスナッチは気にしない。意図せずして、自分をソンケイする後輩ができたからだ。そしてカネ! いろいろあったが、今日はなんといい日だろう!

【万札】15、【名声】1、【余暇】2獲得

「……まあいい。ソニックブーム=サンには俺から話しておく。そっちのバイオニンジャについてもな」
「おう! 助かる」
「他になにか報告は」
「アー……いや、ないな!」

 アベレージが訝しげな目を向ける。リトルスナッチの背中に冷たい汗が流れた。だが彼は「そうか」と呟いたきり、書類仕事へと戻っただけだ。思わず胸をなでおろす。

 ……アベレージとしては、なにかリトルスナッチが隠していることには勘付いている。だが、ピンハネ常習者の彼女のことだ。またその類のことに違いない。大した額を隠しているわけでもないし、そちらを追求して仕事が増えるのはごめんだ。ニュービーニンジャが増えてきたおかげで、彼もまた手伝いに追われる身なのである。

後日、【スクープ映像の記録媒体】をテレビ局へ
1d6 → 5 【万札】5獲得

「とりあえず、ドッグスレッド=サン! ひとまずはオレの部屋で泊まるといい。住処はそれから考えるぞ!」
「すまないな、なにからなにまで……」

 ドッグスレッドが奥ゆかしく頭を下げる。自分よりはるかに巨大な怪物が自分に恭しく接する。それだけで、リトルスナッチは世界の王になれた気分だった。

【終わり】

◇リザルトな◇

 というわけで、リトルスナッチは生還。最初はバイオニンジャもハントしてカネにするつもりだったが、つい私が「異形バイオニンジャを出したい」という欲に負けたため生き残った。笑うがいい。

 で、このドッグスレッド=サンもダイスを振って能力を決めた。バイオ要素はトラッシュ=サンの非公式プラグインを参考にさせていただいた。

ニンジャ名:ドッグスレッド
【カラテ】:1
【ニューロン】:6
【ワザマエ】:2
【ジツ】:0
【体力】:7
【精神力】:4
【脚力】:5
持ち物など:
○ヨロシ脱走バイオニンジャ
●バイオインゴット欠乏症
●獣化/黒い復讐心
▲▲▲バイオサイバネ下半身

 バイオサイバネ下半身のおかげで、ニンジャスレイヤーからも逃げられそうだ。よかったね!

 さて、リトルスナッチはローン返済に加えてドッグスレッドのバイオインゴット代も払ってもらうことにした。こうだ。

リトルスナッチ
【万札】24 + 1(○ピンハネ)-10(ローン)-2(バイオインゴット)
→13

 彼女は自分を慕うコブンには寛大なのだ。

 さて、このシナリオも「バイオスモトリ戦のサツバツボーナスを明記」「ニンジャスレイヤー遭遇時の判定を調整」など、折を見て改善していきたい。

 以上です。気が向いたらまたやるよ!


 


 


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