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古賀及子『無計画によるままならなさの事例』

 思い立って計画性なく何かをしようとするときに起こるひととおりのままならなさを、いちど詳細にまとめておいてもいいかもしれない。この手の顛末は友達に会っていよいよ話すことが無くなったときに小話として披露することはあるけれど、となるとそれはもうエンターテインメント化されてしまって、振り返っても反省にならない。

 眉毛の脱色をしようと思い立ったのだ。友人に、毎日の化粧がすごく楽になると聞いた。調べてみると賛否はあるようだが、化粧の好きな人たちの界隈では一般的らしい。まったく知らなかった。

 20代のころ、髪色を明るくする際に色を合わせるために美容院でお願いして脱色してもらった覚えはあるが、友人によると、今の私のように髪の色が黒くても、眉毛の色を抜くのは化粧作業負担の軽減に役立つのだという。

 いわれてみれば、もう何年も前から眉マスカラというものをよく見かける。あれも、眉は上から書くだけではなく地眉の色をコントロールすべきであるという発想の商品だ。うっかり自分には無関係のもののようにとらえていた。どんなことでも意識と知識をアップデートしないことには人は地点を見失うわけで、なるほど、ここが眉の現在地なんだろう。

 私はそもそもトレンドなんか見失ったっていいじゃないかと思っているところがある。倫理観であれば人として最新式に追いつかねばならないけれど、装いなんかは絶対に好きずきでいい。けれど、今回については「楽になる」というのが良いなと思った。それに、単純に眉毛を脱色してみたい。体毛の脱色というのは、根源的に冒険的でロマンティックだと思う。

 友人によると、美容院でできればそれがベストだそうで、自宅で自力で眉毛の色を脱色するための専用ツールというものは目測範囲では見つかっていないそうだ。自分でやる場合は腕や足の毛用の脱色クリームを使うんだという。

 自分でも簡単に検索して調べてみた。友人の言っていたとおりのことがおおむねネットでも紹介されている。いくつかの記事や動画を確認したが、言っていることはおおむね同じだ。

 ・脱色クリームを使った自力での眉毛脱色はメーカー推奨外であり、やるなら自己責任になる。
 ・脱色クリームにはスピードを重視するタイプと、敏感肌用のタイプがある。
 ・必ずパッチテストを行うこと。また絶対にクリームが目にはいらないようにすること。

 界隈では一般的な行為と聞いたわりには行動の種類として裏街道的なのが意外だ。

 それなりに面倒だし、しばらく興味を失っていたのだけど、ある週末、ぽかっと時間が空いて思い出したのだった。暇つぶしに、眉毛の脱色でもするか。

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