見出し画像

代表たけしげの業務日誌「つつがある日々」 6月前半

2023/6/2(金)
台風が来て、シカクは臨時休業に。
雨漏りしていないか気が気でなく過ごす。

小説『アルジャーノンに花束を』を読み終わる。
有名作品すぎてタイトルは知っていたが読んだことはなく、東京の出張前に新幹線で読むための本を探しているときになんとな〜く目に入って買った。「有名な作品だし、読んどこうかな」という軽い気持ちで。だがいざ読み始めると最初の1ページから物語に引きずりこまれ、最後まで夢中で読み、読んだあとはしばらく放心状態になって、もう一度最初のほうを読み返した。

読んだことがない人のために簡単にあらすじを書いておく。
主人公のチャーリイは知的障害者で、頭を良くする手術を人体の被験者第一号として受ける。手術の結果、チャーリイの頭は日増しに良くなり、IQ60程度だったのが100、120、140と人並み外れた天才になっていく。しかしそれにつれ、周囲との関係も変わっていく……

あらすじで書くとシンプルなのだが、読んでみると言葉に表せない凄みがある。文庫版序文の一文に、著者のダニエル・キイスが
「いったいどうやってこんな作品を創りあげたのですか?」
と問われ、
「ねえ、わたしがどうやってこの作品を創ったか、おわかりになったら、このわたしにぜひ教えてください。もう一度やってみたいから」
と答えた、というくだりがあった。私がインタビュアーでも同じことを聞くだろう(しかしかっこいい答えだな)。

特に物語に多数出てくる、"頭が良くなかったころ"のチャーリイが周囲から見ると理解不能な行動をとり、しかし本人の中では理由や考えがきちんとあり(だけどそれを言葉にしたり自分で客観視ができない)、それを"頭が良くなった"チャーリイが回想し、私たちにもわかる言葉で当時の感情を書き起こすシーンが凄すぎる。

急に自分の話になってしまうが、私は最近シカクの過去を振り返るエッセイ連載を再開したものの、今書いている・これから書こうとしていることは今までよりもいっそう自分の内面に踏み込むことなので、はたして楽しみに読んでくれる人はいるのかとかなり不安に思っていた。
しかしたとえ多くの人に読まれなかったとしても、内面に少々"欠けているところ"がある私が自分の言葉で何かを書くことは、多少なりとも意味があることなのだと思えた。
自信があるとまではいかないが、自分にそう言い聞かせることくらいはできるようになった。

2023/6/3(土)
小川雅章さんの個展初日。


在廊している小川さんに会いに、次々とお客さんが来る。小川さんとお客さんの会話を聞いていると、多くの人が楽天食堂(小川さんがかつてアメリカ村で営業していた中華料理店)の常連でもあり、その頃の思い出を話している。「あの坦々麺の味が忘れられない」「またどこかで食べたい」と話している人も多く、聞いてると自分も食べたくなってくる。楽天食堂は2000年初め頃にいったん営業を終えたが、2010年半ばに再オープンし、2018年まで営業していたらしい。知っていたら全然行けたのに、知らなかったことが悔やまれる。

先日旧グッゲンハイム邸で会ったKさんが、
「小川さんが以前作っていた楽天食堂のレシピ本は増刷しないのか聞いてほしい」
と頼まれたので聞いてみたが、増刷はしないそう。
「そうやって欲しいっていう人がたまにいるぐらいがちょうどいいんですよ」
とのことだった。

2023/6/5(月)
ブックストアライターの和氣さんが東京から来店。
ときどきシカクを記事で紹介してくれていたが、会うのは10年ぶりくらいかもしれない。以前に何を話したかはまったく覚えていないが、気さくな人だったイメージだけ残っており、やはりその通りで気さくな人だった。私のエッセイを4冊買ってくれた。ちゃんとした本屋の内側を知っている人に読まれるのは恥ずかしい。
「スタンダードブックストアが閉店するっていうから、このあと泡盛を飲みながらどういうことか聞きに行くんです!」
とのこと。

ここから先は

1,930字 / 1画像

¥ 150

サポートしていただけたらお店の寿命が延び、より面白いネタを提供できるようになり、連載も続けようという気合いに繋がるので、何卒お願いいたします。