このネットスーパーはようすがおかしい(古賀及子のエッセイ)
ようすのおかしなネットスーパーがある。
今の自宅に引っ越してきた00年代後半のころはまだ生鮮品の宅配といえば生協くらいだったのが、2015年あたりか、じわじわとさまざまなネットスーパーがサービスを開始しだした。
田舎にまるでなじめず転がり出るように都会にやってきた反動から、できるだけ人の多いところに住みたくて探した都心の狭い家で暮らしている。宅配系のサービスが開始されると、配達可能圏内にわりとすぐに入る。
いまでは大小10種類くらいのスーパーが宅配サービスでしのぎをけずっており、もしかしたらちょうど今が淘汰の前の混乱状態なのかもしれない。
ネットスーパーというのは、サービスを開始するとどこもそれなりに派手な額の値引きクーポンを配る。試しに1〜2回使ってみて利便性を感じさせる狙いだろう。
私も開始の知らせを受けクーポンが配られるたびにまんまと飛びついてあちこちのネットスーパーを試した。結果、いまではあるスーパーにほとんど利用先が固定した。全体的に価格が抑えられていて、品揃えもいいうえ、配達の予約が取りやすい。
生協と併用しながらそれで数年やってきたのだけど、最近その、明らかにようすがおかしなネットスーパーが存在感を発揮しはじめたのだ。
はっきりとは覚えていないのだけど、サービスを開始したのは去年の終わり頃、タイミング的には後発で、状況からみてちょっと遅すぎる参入ともいえる。
まずよくわからないことに、このネットスーパーはすでに別のネットスーパーのサービスを展開しているのと同じ会社が運営している。
運営元が同じで、ネットスーパーの名前だけが違うのだ。
なんでまた2ブランドを並走させるのか。そりゃもう会社の頭脳明晰な方々が会議で熟考に熟考を重ねた結果の決定だろうから私がやいやい言うことではないのだけど、外野から僭越にも「なぜ」とは、どうしても思う。
同じことを疑問に思う人は多いようで、検索すると両者の違いを解説するページまであった。仕組の部分できっぱり違うようだけれど、利用客の側に影響のある差異はほとんど無いといっていいように見える。
世の中にはキウイがあってゴールデンキウイがあり、プラダがあってミュウミュウがあって、ドトールがあってドトール珈琲店があって、マーガレットがあって別冊マーガレットがある。
でもそれは、それぞれ別に担う役割があっての併存だろう。このネットスーパーは、両者のやってることがだいたい同じなんである。
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