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代表たけしげの業務日誌「つつがある日々」3月後半

2024/3/16(土)
「私は大学で非常勤講師をしてまして、担当していたゼミ生がもうすぐ卒業するんです。それで卒業式の日に訓示を述べる時間があるんですが、説教臭いことを言うのは嫌なので、何か1冊本を渡したいなと思って。その渡す本のおすすめってありますか?」
と、今までに受けたことのない角度からの選書を相談された。なぜシカクで!? と聞くと、
「普通の本屋で買える本だとありきたりでつまらなく思われるかもしれないけど、シカクにあるような変わった本なら、仮に中身が期待とずれていても物珍しさでカバーできる気がするから」
とのこと。確かにそうかもしれない。

ゼミの内容を詳しく聞くと、社会学部で地域活性や町についてを勉強してきた生徒たちらしい。悩みに悩んで、地方にまつわるものなら興味あるかな……と、『昭和街道』のシリーズを選んだ。
「これなら喜んでくれそうです!」と満足してくださり、生徒の数分の冊数をお買い上げしてくれた。「もしガッカリされたら私のせいにしてくれていいので!」と伝えて見送る。その後その先生はお店に来ていないが、生徒たちは満足してくれただろうか。

2024/3/20(水)
朝の新幹線に乗り、昼過ぎに博多駅に着く。今日から1泊2日の出張だ。福岡に来るのは5年ぶりくらい。

夜のイベントで販売する本をパンパンに詰めたトランクをホテルへ預け、まずはシェアサイクルを借りる。
博多〜天神エリアはシェアサイクルのポートがたくさんあり、それを使えば電車やバスよりも効率的に行きたいところを回れて便利らしい。それを事前にネットで知り、やる気満々でシェアサイクル用のアプリをダウンロードしてきたのだ。

しかし意気揚々と借りた自転車は、漕ぐとなんかギシギシ変な音がする。明らかにメンテナンス不足だ。
いきなりテンションが下がりかけたが、ここで私は文化的メタ意識を発揮し、「自分がもし映画の主人公だったら、新しくて快適な自転車よりもボロくてギシギシいう自転車のほうが絶対に画になるしかっこいい」と考え、ボロい自転車に乗る自分をヒキで収めた映像を妄想して落ち込みを回避した。
文化的な素養はこんなときにも役に立つのだ。文化をナメてる政治家とかにぜひこのことを知ってほしい。

自転車をギシギシ言わせながら、ネットで見つけて気になっていたアートブックの書店「青旗書店」へ行く。世界中のアートブック(写真の本が多めだった)がたくさんあり、見たことない本だらけだ。店内では展示もやっており、どこかプリミティブな感じの抽象的なテキスタイル作品が飾られている。
渋谷区が発行している『The Toilet Book』という、建築家が手がけたカッコいい公衆トイレのプロジェクト紹介本を購入。

お店の方に「大阪から来たんですが、このあたりにおすすめの書店ってありますか?」と尋ねると、「すぐ近くにある『くらすこと』というカフェに最近本のコーナーができて、人文系の本が中心でおすすめですよ」と教えてくれた。旅先で予定を決めすぎず、こうやって行く先々で地元の方に教えてもらいながら行動するのが好きだ。

「くらすこと」に行ってみると、店内に入ってすぐの目立つところに古賀及子さんの本が平積みにしてあった。嬉しい。
他の本のラインナップもすごくよくて、気になっていた本と知らなかったけど面白い本がひしめきあっており、全然先に進めない。ここで本を買ってカフェで読もうと思っていたが、本を見るのに夢中になってしまって時間がなくなる。
悩みに悩んで、小原晩さんのエッセイ『これが生活なのかしらん』、モノ・ホーミーさんの短編小説『するべきことはなにひとつ』、横道誠さんと頭木弘樹さんの往復インタビュー集『当事者対決!心と体でケンカする』の3冊を購入。
もうリュックがだいぶ重い。

ホテルに戻ってトランクを取り戻し、チェックインをする。
今回泊まったBUNSHODO HOTELはかつて書店があった建物を改装してできたホテルらしく、すべての書店へのリスペクトを込めて「書店オーナーなら一生に一度だけ500円で泊まれるプラン」というものが存在する。
そこに泊まってみたいと兼ねてから思っており、ついに実現したのだ。

で、チェックインのためにフロントのスタッフの方に名前を伝えると、
「私、以前にシカクさんに行ったことがあるんです。だからご予約くださって驚きました。今も『本物だー!』という感じです」
とおっしゃっていただき驚いた。福岡からわざわざ来てくださっていたなんて……。まだ滞在時間5分だが、もういいホテル認定である。(泊まり心地もとってもよかったです)

ホテルの部屋に荷物を置いて、本の詰まったトランクと共に「ブックバーひつじが」へ移動する。今夜はここで「シカクのイチオシ!ZINE紹介」というトークイベントをやらせていただくのだ。

福岡でトークイベントをするのは初めてだったので、お客さんが来てくれるか不安だったが、ありがたいことにひつじがの常連さんやシカクに本を置いてくれている作家の方々などが来てくださる。
緊張してぎこちなくなってしまった瞬間が多々あったが、みなさんリアクションをたくさんとりながら聞いてくださり、終わった後に「面白かったです!」と声をかけてくれたり、買い物もたくさんしてくれた。

トーク終了後、残ったお客さん数名とシモダさんと飲みながらお話する。
みなさんひつじがの常連で(そのうち一人は漫画家の津川智宏さんだった!)親しげな様子に、ひつじがが愛されてることが伝わる。
こんな店が自分の家の近くにもあったらいいのにな〜。

楽しくおしゃべりしてハッと気がついたらもう終電間際になっており、慌てて宿に帰る。

2024/3/21(木)
古賀さんと書店挨拶をしたあと、日記ワークショップの見学をさせてもらう日。福岡のジュンク堂書店で待ち合わせる。
少し早く着いたのでお店に入ってすぐの新刊コーナーを見ながら待っていたら、古賀さんが外から、グリコの看板のように両手を上げて駆け込んできたので思わず笑った。

ジュンク堂書店では月の頭にお会いした松岡さんが、サインを入れる本だけでなく色紙も用意して待ってくれていた。
古賀さんは色紙を書くのが初めてらしく、「何を書けばいいんですかね!?」と戸惑っていたが、やがてスラスラといい具合の一言を書いてくれた。柔軟でさすがや。


それから詩歌がメインの書店「ajiro」へ行く。数年ぶりに来たが、かなり本の量が増えた気がした。古賀さんの選書フェアをロングランで展開してくださっており嬉しい。
店内の写真を撮るときに「古賀さんも入ってください!」と言うと、「これなんの写真ですか!?」と疑問を呈しながらかわいいポーズをとってくれた。確かに古賀さんの本も映っていないのに、なんで私はここに古賀さんを入らせたんだろう。

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