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脳のなかの幽霊

楽しいことを楽しいことをと楽しいことに飢えている。なにか自分の壁を突破し有頂天に達してはそれを持続してみたい。しかし僕は僕。その不思議な永続性を断つことのなんと難しいことよ。常識という言葉を反吐が出る程嫌いながらも井戸の外より見られれば、そこはまだ常識の中という。

『神よ!鹿田に常識を突破した思考を与えたまえ!あほなことがしたい!ばかなことがしたい!ちらりと一瞥した人々がぷぷっと笑ってしまうくらいの』

その域に達することこそが、現在の鹿田の望むところである。

鹿田です、よろしくね。

ビールを飲む。飲もうと缶をつかむと身震いするほどの冷たさに身が引ける。しかし飲まずにはやってられんのだ。さあ飲もう。乾杯だ、この2連休に素敵な奇跡を!もう一日は消えかけているじゃないかなんて、余計なことは言いなさんな。休日のみ昼夜逆転する鹿田の習性により、まだ1日目は始まったばかりなのだから。さあ、素敵な1日に乾杯だ!

身震いしつつ一口を大きく飲む。酔えば多少暖かくなるのだ問題はない。…上着を1枚羽織ったが問題はない。そう不安の正体は募る冬への恐怖なのである。寒くて静かでいいこと1つなしのあの季節のせいなのである。

しかし、まだ暫く時間はある。何か対抗する術はないか。ない頭をひねって考えるのである。ここに鹿田一大プロジェクトの発足を表明する。名前はまだない、中身もない。

ああどうしようとも負ばかり目立ってしまう憎き冬を、楽しむ術はないだろうか?考えろ、考えるのだ鹿田!!

冬を楽しむ、そのためにまずクリアしなければならないのは"寒さ"だ。寒さを排除し楽しむ何かでなくてはならない。そして期間はひと冬である。ひと冬の間その憂鬱を忘れ、楽しめるものでなくてはならない。

まず、静かで単調な景色に対する寂しさは如何にしよう?

つまらないのだ冬は

雪は深々降るばかり、この歳になって雪だるまやかまくらなどるつくる気もしない。かといって酒に逃げるわけにもいかない。仕事もある。1日中のんでいたならアッという名にアル中になるだろう。アル中で現実逃避するとしても、それは冬の時期だけで完結させなければならないのだ。毎年、毎年冬にだけ都合よくなるなどできるはずがない。夏に及ぶ危険もある。そんなもの言語道断却下だ却下。

冬がきた途端クリスマスツリーを飾ろうか?視覚的には賑やかになるかもしれないが所詮クリスマスだ。行事というものはそもそもその当日が楽しいのではなく、待つことが楽しいのだ。毎日毎日クリスマス気分などなれるはずもない。ましてやクリスマスなんて鹿田にとってはにっくき冬の象徴である。却下だ。

やはり寒さ対策が妥当であろうか。となれば策は一つ、ヒートテックの下着や靴下、そこら辺を今年は冬が来る前に完備しておこう

そして季節が冬になる前に使用し【寒い】という体感を自身の体に及ばせないのだ。朝晩はエアコンタイマーを活用し、眠りにつくまでと起床時は常に一定の温度に保つよう調節する。となると問題は、屋外に出るときである。例え足元から頭の先まで防備しようと、目までは対策できない。目とその周囲の微細な隙間に、きっと北風はするりと滑り込む。北風とはそういう奴だ。それでゲームはジエンドだ。

今アマゾンで調べてみた。やはり数多フェイスマスクは売られているが、どれも目の部分は繰りぬかれた強盗仕様だ。ゴーグルをしたところで、今度はゴーグルとフェイスマスクの隙間に必ず北風は侵入する。

鹿田は大いなる課題にぶつかってしまった。はたしてどうすればこの最難関の課題に答えを導くことができるだろう。目の周りだけは、冬に晒されてしまう。ヘルメットか?しかし鹿田は車通勤である。ヘルメットを被り車を運転などできない。積んでしまったか…

キラキラキラキラキラ…✨



その時天より舞い降りるものがあった。白く四角い形容をしたものが、鹿田の悲観し落とした頭上に下りてくる。キラキラというオノマトペにより漸く鹿田は気が付き顔を上げる。空から降りてきたのは女の子ではなく一冊の本であった。

脳のなかの幽霊」

まだやっと4章に入った所だから、理解不足なところもあるのだけれど。とてもとても不思議な人体の色々を、脳の働きをこの本は教えてくれる。

例えば幻肢とか(事故などで失われた腕などが、まだついていると感じること。鹿田はこの本を読むまでそれらは本人の強い願望による錯覚だと理解していたのだが、この本にはそうではないことが書かれている。とてもとても好奇心の食指がうずく1冊だ)、自分の体の一部が、他人のものに感じてしまう現象など。

そう、その中になにか、日本にいて常夏を過ごすことがヒントが隠れていやしまいかと、鹿田はわくわくしながら読んでいるのである。まだまだ前半、どんな人の脳の秘密が、この本には隠されているのか!?読むことが楽しくて楽しくて仕方ないのだ。

そして読了した暁には寒さに対する解決策ばかりか、自身の感覚上に夏を纏い、常に夏を体感する技を身に付けていることだろう!そうしてとうとう鹿田は季節を覇するのだあぁ!

てなことで、続きを読みたいので唐突に終わる。

またね。

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