ハイスクール屍〈ショートショート〉

闇でもあり、光でもある人の深い深い心の中。それを粘着質のルアーで絡め上げる。 そこにエ…

ハイスクール屍〈ショートショート〉

闇でもあり、光でもある人の深い深い心の中。それを粘着質のルアーで絡め上げる。 そこにエロ、恐怖、笑いが潜んでいるのか… 自分の型とは何なのか… それを探し続けるためにショートショート やっております。

最近の記事

魔法の言葉〈ショート〉

僕がまだ幼い頃の話なのですが 膝を擦りむき、大声で泣いていると 必ずバァバが駆けつけてくれた そして僕に魔法の言葉をかけてくれる 「痛いの痛いの、どんだけ〜  痛いの痛いの、どんだけ〜」 その魔法の言葉を聞くと なぜだろう 笑いが込み上げ 痛みを忘れる事ができた そんなバァバ 僕が生まれた頃は、ジィジだった 本当のおばあちゃんが亡くなったのをきっかけに、バァバになった 家族の猛烈な反対を押切り バァバになった 死んだ おばあちゃんの あでやかな お召し物を身にまと

    • 愛し妻2〈ショート〉

      妻は、いつも大きな夢を語る その夢は壮大で、とても手の届かぬような夢だ なので 現実離れした夢を語る事と引き換えに妻は、ある物を見失う 「あれっ、メガネどこにいったんだろう」 妻は突然、歌手になりないと言いだした ギターを弾いた事がないのに ピアノを弾いた事がないのに 自分で作詞作曲をする、シンガーソングライターになりたいと言った 「楽しい曲をいっぱい作って、みんなに元気を与え  るの  そして、たくさんの愛を届けて  たくさんの人に歌ってもらうの」 どうやら、その夢

      • 桃源郷〈ショートショート〉

        ハンドルを握るモモコ先輩が、ずり上がるスカートスーツの裾を押さえながら、助手席の僕の顔を覗いて、こう言った 「そうた君は、腰は強い方?」 唐突な質問に、僕は唾をゴクリと飲み込み、言葉を返した 「ちょっと、危ないですから、前を見て運転して下さい」 「あははは。ごめんごめん。  今日会社出発する前、部長から  『ずっと入ってない貸テナントの物件、見に行っ  てもらうかも…』  て言われて、一応 鍵持って来てたの」 スカートのポケットをモゾモゾとあさり 「シャキーン」

        • 愛し妻〈ショート〉

          どうしても一緒に寝たいと言う、かわいい妻の頼みを受け入れたのですが やはり妻のイビキはうるさく、寝不足の日々が続いております 愛らしい寝顔で快眠する妻の寝顔は 注意する事を躊躇させ その晩も寝れず、一人悩んでいました 冴えた目は 天井の模様の、穴ぼこの数を数え 冴えた耳は 夜も明ける前から動き出す新聞配達の排気音を聞き分ける 新聞配達の排気音が向こうの路地からこちらに折れて来て、家の前を通り過ぎたのをきっかけに 改めて妻のイビキを聞いてみて、びっくりしました それは、新

          誕生

          友よ水の中から何を見ていたんだい 母のお腹で過ごした過去を見ていたのかい 友よ水の中から何を見ていたんだい 母のお腹で過ごす未来を見ていたのかい  誕生日が命日なんてどれ程ロマンチックなのか、子供の頃漠然と思った。  勿論なんの根拠もないし、憧れでも願望でもない。 死に対しての理解も乏しい。  何故だろう、単純にカッコいいと思った。  誕生日に生まれ誕生日に死ぬ。命日に死に、命日に産まれた。残された人達はいったい何を口にするのだろうかなんて、自分が死んだ後の他人の評価を気

          伝家の宝刀〈ショートショート〉 

          俺は怒鳴りたい 怒鳴りたくてしょうがない 何故なら 気持ちが良いからだ 怒鳴った瞬間、辺りは静まりかえる そこはもう、俺の独壇場だ 脳から何かが分泌している 麻薬の一種だ 止められない 怒鳴れるトラブルが起きれば いの一番に怒鳴ってやる そして俺に怒鳴られた奴等は 端っこでショボくれる 俺は産まれてこの方、怒鳴り一辺倒でやってきた 俺は怒鳴りで のしあがって来たんだ だからこの刀を精一杯振り回す 伝家の宝刀 怒鳴り刀だ 若い頃は生意気なダンプの運転手を怒鳴りつけた レストラ

          伝家の宝刀〈ショートショート〉 

          いいねぇ〈ショートショート〉

          「君いいねぇ。とてもいい顔をしている」 歩いていたウォーキングマシンを止め、白髪まじりの中年が、ニタリと笑いながら僕に近づいて来る 「いいねぇ  君はダンベルを持ち上げた時  眉尻が下がり困った顔になる  それはとても興味深い」 仰向けの姿勢でダンベルを持ち上げている僕を上から覗きこみ、何の躊躇もなくパーソナルエリアに入って来た 「ちょっと何ですか、そんなに近づいて来て」 知らない中年との距離感に驚き、静止する意味を込めて発したのだが 中年はとっさに反応する 「駄

          いいねぇ〈ショートショート〉

          つよくにぎって〈ショートショート〉

          物陰が動く教室の中央へ目線をやると 机の下でごそごそと動く何か… 眉をひそめ焦点を合わせる すると 僕の机の下にもぐり込み 背中を丸めている 髪の毛の長い女 そして女の手元にはリコーダー 体育座りをして、両膝の間に顔を埋め 僕のリコーダーにむしゃぶり付いていた 尖らした唇を上下に運動させ 僕のリコーダーにむしゃぶり付いていた ピロロと吐息のような息づかいが笛先から漏れ 僕のリコーダーにむしゃぶり付いていた リコーダーの下の穴から唾液がポタポタと床に垂れるほど 僕のリコーダーに

          つよくにぎって〈ショートショート〉

          事務の新田さん〈ショートショート〉

          お昼休み、必ず家に帰る事務の新田さん 淡いクリーム色の軽自動車に乗っている 年齢より若く見えるが、歳は40 おっとりしていて綺麗と言うよりは 可愛いタイプ 若くして結婚し、旦那とは共働き 1人息子は大学生 身なりも良し、デスクも整理整頓 分け隔てなく、皆に笑顔で挨拶 仕事も平均以上をこなし 社内からの人気も高い そんな新田さん お昼休みに必ず家に帰る 会社から自宅まで車で15分だそうだ 行って来いで30分 必ずお昼休み終了5分前には デスクに戻って来る まてよ 逆算する

          事務の新田さん〈ショートショート〉

          変態〈ショートエッセイ〉

          「お前は変態だ」 そう断定されると 私は変態なのかもしれない 人は何を基準に変態と断定するかは、各々であり 私の常識は相手にとっても常識だとは限らない となると 「お前は変態だ」と 相手に断定されてしまったら それはもう変態なのである 変態の対義語は無いらしい しいて使うのなら「正常 」「普通」 のようで しかし何を思って正常なのかは各々の感性であり、ここに言葉の矛盾があるのだが、難しいことは考えたくはない 私としては「正常」「普通」などの言葉で、ひとくくりにされるので

          そこにあるもの〈ショートショート〉#思い込みが変わったこと

           私はトイレットペーパーを綺麗に織り畳むタイプの人間だ。  いつからこの作法で自分のお尻を拭っているのだろうかと追憶すると、物心ついた頃からと結論できる。  誰かに教わった記憶はないし、誰かを真似た記憶もない。  幼き私は、自らこの作法を見い出だしたと言うことだ。合理性や効率ではなく、美しさと優しさを選択したのである。  二十センチ程ロールを引き伸ばし、それを半分に折り返す。続けて十センチロールを引き伸ばし同じ方向へと折り返す。ペーパーの両端を平行に保ち、四回反復させ

          そこにあるもの〈ショートショート〉#思い込みが変わったこと

          一服〈ショートショート〉

          カーテンから漏れる光 その一筋が私の横顔を照らす 暖かい目覚めだ 数年前郊外に建てたこの別荘は 季節を問わず、朝日が寝室に入り込む造りになっている 人は朝日と共に起床する 私のこだわりの一つだ 寝室から光の臨む方へと そこはベランダから覗くオーシャンビュー キラリと光る水面 勝ち組だけが手に入れられる絶景だ 既にベランダに居る君の肩を抱き寄せ 海を眺めながら目覚めの一服 すぅぅ ふぅううう この一服がたまらない 父親から受け継いだ建設会社は起動に乗ったままだ 社長

          風来坊〈ショートショート〉

          口うるさい親もいなけりゃ 煙草をせがむ仲間もいない  だから お前の去るこの街に未練はない お前にフラれたら風来坊になると決めていたから その時が来たというわけだ 夜のネオンが後ろ髪を引くが 小粋なタップで 思い出のリズムにする お前は南に行くと言った 湿気混じりの晴天が あたいのボサノバにメロディーを乗せるんだって なら おいらは… そうだ 北へ行こう 恋していない女のボサノバじゃ踊れないって 惚れたあんたが言うもんだからさ この恋冷める前に 思い出にするよ

          風来坊〈ショートショート〉

          CSW〈ショートショート〉

          宇宙人が空から攻めてくる 宇宙船に乗り、列をなして 空から攻めてくる 空を仰ぎ、ざわめく地球人 円盤形の小さな宇宙船が 幾重にも重なり 空から降りてくる 一世一代だと 直ちに応戦する地球人 戦闘機を飛ばしロケットを飛ばす しかし宇宙人には 地球人の作った兵器がまるで効かない 放ったロケットは、宇宙船に吸い込まれるように消えていく 嘲笑うかのように 街の上空でホバリングする宇宙船 打つ手のない地球人 宇宙船は街の上空で陣を組むと コックピットのハッチを開け 白い液体

          CSW〈ショートショート〉

          尻舐めババア〈ショートショート〉

          法廷で突然真実を語りだす被告がいる あれは尻舐めババアの仕業だ 尻舐めババアの姿は、誰も見えない 私以外だれも… 国選弁護士を長く勤めると、非道で残忍な犯罪者を弁護する事もある 眼を覆いたくなるような資料に目を通し、容疑も心も真っ黒な被告を 証拠が無いだの、精神状態が だのと擁護する 馬鹿馬鹿しいが、それも人間に与えられた権利であり、私の仕事である しかし、真実か否かは、目を見て話せばわかる 今日もそんな男のもとに 尻舐めババアが現れる 被告人尋問に立ち、しらを切る男 の

          尻舐めババア〈ショートショート〉

          限りなくピンクに近い灰色〈ショートショート〉

          子供の頃、鮮やかに彩る花や草木が嫌いで 植物を踏みにじった 通学路に咲く野花 手入れの された花壇 それら目に映る色彩を 力一杯踏みつけた 薄暗く ほの暗く 心無い少年時代を送った 流れ行く日々の中で  吐き捨てたツバは飲み込み 睨みつけた世界を受け入れ いつしか、大人になっていた すさんでいた 遠く 過去の自分 優しく植物を愛でる君を見ていたら 思い出した 何の因果か怨念か 僕は今年から小さな植物園で働く事になった 多肉植物エリア担当に任命されたが、右も左もわからない

          限りなくピンクに近い灰色〈ショートショート〉