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【書評】 『対話で学ぶ EBMはじめの一歩―論文を読み解き,臨床に活かすために』

月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2023年10月号に掲載する「HYORON Book Review」を発刊に先がけて全文公開いたします.(編集部)

澤田則宏/東京都新宿区・澤田デンタルオフィス

対話形式で読みやすい

『対話で学ぶ EBMはじめの一歩』という本が上梓された.著者は蓮池聡先生と寺岡徳光先生である.
私は学会で診療ガイドライン委員会の一委員としてEBMを学んでいるが,かつて参加したワークショップにおいて,インストラクターとして基礎から教えてくれたのが蓮池先生である.

蓮池先生が月刊『日本歯科評論』に連載していた「EBM実践のためのイロハ」はいつも楽しみに拝読していた.
その内容を書籍化したのが本書『EBMはじめの一歩』である.

『日本歯科評論』の連載では,蓮池先生と新人Drとの対話形式で話が進んでおり,とても読みやすい内容であったが,本書もエビス先生(EBMの達人,蓮池先生?)とDr.ビギナーとの対話形式で進行する.
とても読みやすく,二人の顔が目の前に浮かんでくるような感じで,対話を聞いているうちにどんどん読み進めていくことができる.
連載時の新人Drと本書のDr.ビギナーは一緒なのだろうか.読み進めるうちに,Dr.ビギナーのレベルアップも感じられて面白い.

EBMの基本の「き」から丁寧に解説

本書は「エビデンスとは何か」という基本の「き」から始まる.
「セミナー講師でも誤用している」という一文は,多くのセミナーで講師をしている身としては「ドキッ」とする一言だった.
そしてシステマティックレビューの読み方,Randomized Controlled Trialの限界も解き明かしながら,論文の読み方を解説してくれている.例に出している論文が,臨床医が興味のある分野であることも嬉しい.

本の後半は少しずつ難しい分野に踏み込んでいくが,その解説はわかりやすい.
「研究デザインを学びなおす」の章では,コホート研究と症例対照研究の違いを丁寧に解説してくれている.
頭の中に「??」が浮かぶ内容のページも,読み返してみると「なるほど!」と腑に落ちる.
これは,EBMのエキスパートである著者の先生方が丁寧に解説してくれていることと,対話形式で話が進む本書の特色によるためではないだろうか.

また論文を読み進めるうえで,英文を読まねばならないのは多くの日本人にとって苦痛だと思うが,最近の自動翻訳を駆使して要所を楽に読む方法なども教えてくれている.かつては一所懸命英文を読んでいたが,やはり日本人は日本語で読んだほうが頭に入る.
ある程度日本語で理解してから,深読みする段階で英文を読むことにより時間も節約できる.この辺りは,英語の苦手な先生ほど活用してほしい部分である.

卒後間もない先生にも,ベテランの先生にも読んでほしい本

本書は卒後数年で壁にぶつかっている先生にぜひ読んでいただきたい.
「EBM?……」と最初は難しく感じるかもしれないが,入門書として非常にわかりやすい.
また,ベテランの先生にも役に立つ内容が多く書かれているので,ぜひ多くの先生に本書を手に取っていただきたい.読めば読むほどエビス先生(蓮池先生)の丁寧な解説がわかるだろう.
4,000円は安すぎではないだろうか.

関連リンク
『対話で学ぶ EBMはじめの一歩―論文を読み解き,臨床に活かすために』(蓮池 聡 ・寺岡徳光 著)

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