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【書評】『歯周治療・インプラント周囲治療のための Er:YAG レーザー パーフェクトガイドーベーシックから最新アドバンスまで』

月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2023年12月号に掲載する「HYORON Book Review」を発刊に先がけて全文公開いたします.(編集部)

宮本泰和/京都市下京区・医療法人泰歯会 四条烏丸歯科クリニック

現在の歯科においての「三種の神器」は,歯科用 CT,マイクロスコープ,歯科用レーザーではないだろうか.
当院においても約 15 年前から使用しているが,今や歯周・インプラント治療には欠かせない治療器具 の1つになっている. 主に,歯周再生療法時における歯石除去,根面処理,不良肉芽の除去,さらにはインプラント周囲炎に対するインプラント表面のデブライドメントに対して不可欠なツールである.しかし,今回出版されたこの書籍を読ませていただき,これほど応用範囲が広がっているのかと驚かされた.

Er:YAGレーザーの主な役割は大きく分 けて2 つあり,1つは 物 理 的 な蒸散効果を利用した局所のデブライドメントの効果,もう1つはレーザーの生物学的効果,すなわち細胞活性化効果である.
前者はすでに多くの先生方においてその効果は知られているところであろう.筆者の注目は,後者の役割である.近年,Low reactive-level laser therapy(LLLT)と名付けられた新しい概念の治療法が研究され,実践されている.

具体的には,骨芽細胞増殖活性化の上昇,線維芽細胞と歯根膜細胞の増殖活性の上昇,遺伝子やタンパク発現により創傷治癒が促進され,さらにはセメント芽細胞の増殖機能・遊走能の促進などが認められる.このような効果は,われわれの取り組んでいる「成功率の高い歯周再生療法」に必要な要件であり,われわれも今後の治療に納得して応用できると考えている.

さらに,Er:YAG laser assistedcomprehensive periodontal pocket therapy(Er-LCPT) と い う 新 し い歯周治療法も紹介されている.何と成長因子などを使わずとも,歯周ポケットに対して Er:YAG レーザーのみで歯周組織を再生できる方法である.まずは,レーザーを用いて根面廓清と殺菌・無毒化を図り,上皮・肉芽除去を行い,続いて骨欠損部の廓清を行う.それによって生体刺激が加わる.さらに外縁上皮除去を行い,出血に対してレーザーの低出力照射により血餅を作り,凝固層を作る.

この一連の処置をレーザーの出力や使用チップを変化させることで,歯周組織が再生してくる.成長因子を用いて再生療法を行っているわれわれにとって信じ難い話ではあるが何例もの実例が提示されている.当然,適応症の問題もあるので,全てのケースに適応できるわけではないが,MIST が応用できるようなケースでは対応できそうに思う.

もう少し,広範囲な骨欠損を伴う歯周ポケットには,エムドゲインなどの成長因子や骨移植材を併用したケースも提示されている.Er:YAGlaser-assisted bone regenerationtherapy(Er-LBRT)という手法は,従 来 の 再 生 療 法 の 最 後 に Er:YAGレーザーをディフォーカスして非注水下で非接触で照射を加える.比較的,簡便に安心して取り入れることができそうな手法である.ぜひ,試してみたい.

その他,口内炎の治療,メラニン色素やメタルタトゥーの治療,小帯切除やクラウンレングスニング,インプラント周囲炎の治療,PAOOへの応用など多岐にわたる治療の実例も多数紹介されている.
現在,Er:YAG レーザーを使われている方にも,これから導入しようと思われている先生方にも必携の1冊である.日常臨床の「 光 明」になることは間違いない.

関連リンク
『歯周治療・インプラント周囲治療のための
Er:YAG レーザー パーフェクトガイド
ーベーシックから最新アドバンスまで』(青木 章・谷口陽一・水谷幸嗣 編著)

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