パワーリフティングにおけるRPEとRIRの相違点について

 書いてる途中で力尽きたことを先に謝っておきます…
 5/20追記しました。

 RIRとはReps in Reserveの略で、『予備レップ』などと訳すのが適切かと思う。「あと〇回挙がるはず」という意味を持ち、RPEと基本的には同じと解釈してよい。ただし、一般的にはRIRは小数点を用いないことが多く、RPEは0.5単位で表記することがある。
 例えばRPEで「×8@8.0」と表記した場合、これは「8回挙げて、あと2回挙がる余力がある」ことを意味しており、RIR2と表記することで同様の意味を持つ。同様に、RPE7はRIR3を意味し、RPE10はRIR"0"(ゼロ)である。

 では、RIRとRPEで何が違うのか。わたしは「1RMに近づくほどニュアンスが変わっていく」と考えている。

 例えば、デッドリフトでMAXが300kgのA選手が280kg、285kg、290kg、295kg、300kgに挑戦したと仮定する。回数を挙げることが苦手なA選手は275kgなら2回挙げられるが、280kg以上はすべて1回しか挙がらないとすると、これをRPEでどう表すだろうか。

A選手の記録
280kg×1@9.0←実際はこれ以上挙がらないが、285kgよりは軽い
285kg×1@9.5←実際はこれ以上挙がらないが、295kgよりは軽い
290kg×1@9.5←同上(285kgと大差ないと判断)
295kg×1@10.0←ここは正しい
300kg×1@10.0←ここは正しい(295kgと大差ないと判断)
※簡略化のためセット間の疲労による影響は無視

 極端な例だが、すべてのセットで1回が限界のはずなのにRPEで表記すると上記のようにブレる可能性がある。これはなぜか。

 RPEは『疲労度の測定』であり『主観的な強度』を指すため、280kgも300kgも本来は1回しか挙がらないはずだが、280kgと300kgでは疲労度の体感が異なるため、実施者(=本人)の主観だと「300kgは本当に限界の1レップだったからRPE10.0で、280kgは明らかにそれ以下だったからRPEで表すと9.0くらいか…290kgは少しだけ余力があったからRPE9.5だな。」と判断する可能性が高いためである。
 この例だと、RPEが「あと〇回挙がる(はず)」という判断ではなく、過去の経験(≒重量や回数)と比較して疲労度を測定、主観的な強度を割り出す、という使い方に変わっていることが分かる。
 
 では、上記の例はRPEの誤った使い方だろうか。わたしはそうではなく、むしろ正しい使い方だと思う。
 RPEを「あと〇回挙がる(はず)」という測定基準のみで表記してしまうと、以下のようになる。

A選手の記録
280kg×1@10.0←確かに1回が限界だが300kgと比べたら明らかに軽いはず…
285kg×1@10.0←同上
290kg×1@10.0←同上
295kg×1@10.0←ここは正しい
300kg×1@10.0←ここは正しい

 このように、280kgも300kgも強度が同一に見えてしまうため、RPEで表記するメリットがなくなってしまう。
 RPEは疲労度≒レップスピードの測定・記録としても有用であるため、特に1RM付近など高重量の測定などの場合、「あと〇回挙がる(はず)」という基準のみを以って記録してしまうと、有益な情報にならない可能性があるだろう。

 一方RIRは、純粋に「あと〇回挙がる(はず)」だけで判断するものである。以下のような指定がされた場合、A選手はどのような重量を選択するだろうか。

①○○kg×1(RIR1)
②○○kg×1(RPE9.0)
 
 A選手は①だと275kgを選択するが、②だと280kgを選択する可能性がある。このように、RPEとRIRは同じような使い方がされているはずが、高重量になると若干意味が異なってしまう可能性があることを示唆していると言える。
※①も②も275kgを選択するべきだと思うが「この事例では」という仮定

 RIRは、主観ではあるものの「あと〇回挙がる(はず)」という基準のみに依存していることから、RPEと比べてある程度正確な数値設定を可能とすることが期待されるため、指導者が経験が少ない選手にプログラムを提供する上で用いる際に有用で、RPEは、経験のある選手が自身の判断でプログラムを作成またはより詳細な記録を取る場合などに有用であると言える。

追記(5/20)
 例えばRPE8.0とRIR2は本来同じはずだが、実施者によってはRPE8.0を「RPE8.0~RPE8.5あたりだな…」と解釈し、結果的にRPE9.0に限りなく近いRPE8.5になってしまった、ということが起こり得る。つまり、このような考え方をする実施者だと、RPEで負荷を設定するとオーバーシュート(行き過ぎ、上振れ)が起こり易い。一方、RIR2であれば、「2回の余力を残す」という以外に基準がないため、RPE8.5やRPE9.0に近い重量設定を行う判断に至らないため、「プログラム提供者の意図する負荷設定を守らせやすい」とも言える。
 これらはRIRと異なり、RPEが小数点まで含めた概念であるために起こる事象だと解釈する余地もあるが、前述のとおり、RPEは実施者の主観がRIRより入りやすいために起こる事象だと思われる。
 どっちが良い、という話ではないので誤解なきように

余談
 書きたいことが半分くらいで終わってしまった。RIRの具体的な事例が全然書けてないね…「RPEは疲労の管理というよりレップスピードの保持を意識させるために使うことを主眼とした方がいいんじゃないか」とか「補助種目とかハイレップ系にはRIRの方が役に立つかも」とか、局面に応じて使い分けをすることが可能な点なども、もうちょっと書くべきだと思ったが、疲れたのでもう限界です…
 プログラムを提供する側からしたら、RPEよりRIRの方が使いやすいと思うんだけど、あんまり見たことないかも。「あと〇回挙がる(はず)」っていう基準だけで考えさせた方が、実施する側からしたら迷わないからね。ただ、記録として残す場合、RIRだとイマイチ成長が実感できないかも。

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