1RM%とRPEの比較について(マニアック編)

前提:パワーリフターで最低限のRPEや1RM換算に関する知識があること。

お断り
 本記事中の考え方については、内容を理解してもらうためにある程度の一般論化をしております。個人差に言及するとキリがないため、このことをご承知おきいただき、ご拝読願います。

1RM%やRPEは便利なツール

 いきなりですが質問です。
『1RM=200kgの人が同重量で5回5セットの限界に挑戦するとしたら重量選択はどの程度が妥当でしょうか?』
 経験則ではなく、論理的に答えることが出来ますか?
 先に答えを書くと、おおよそ『165kg』になると思いますが、具体的には以下のとおり、『7RMの重量』を求めることで導き出せます。

7RM=1RM×82.5%  ここで、1RM=200kgを代入
        =200kg×0.825
        =165kg
 
 これを見て疑問に思うことは『なぜ7RMなのか?』という点でしょう。7RMが1RMの82.5%であることについては、個人差はあるものの、現在ではある程度共有された知見であり、ここでは意見を述べませんが、『7RMが5回5セットの限界重量になる理由』は、RPEを用いて説明が出来ます。
 165kgで5回5セットを進行した場合、以下のような表記になります。

例①『7RM×5回×5セット』
1RM=200kg(7RM=165kg)

1set目 165㎏×5⇒RPE8.0(あと2回挙がる=7RM)
                                    ↓以下、RPEが0.5ずつ増
2set目 165㎏×5⇒RPE8.5

3set目 165㎏×5⇒RPE9.0

4set目 165㎏×5⇒RPE9.5

5set目 165㎏×5⇒RPE10

平均強度…165kg=1RM82.5%
平均RPE…9.0

 まず、『7RM』とは言い換えると、『5回挙げた後にまだ2回の余力を残した状態』です。また、セットを重ねる毎に疲労は蓄積しますので、同一重量による5回5セットの限界とは、『5セット目でセットを継続することが出来なくなる(=RPE10を迎える)重量』ということになります。そして、一般的には1セット進行する毎にRPEはおおよそ0.5ずつ漸増することから、逆算することで『5回5セットの限界重量はおおよそ7RMになる』と導き出せます。
 その日の体調、セット毎のRPEの漸増量やRM換算など個人差があるということは言うまでもありませんが、上記のとおり、多くのパワーリフターが経験則的に導き出していることをおおよそ計算することが出来ました。
 このことは、RPEやRM換算が『経験則を可視化するためのツール』であるとも言えます。詳細なデータがあれば、より精緻な数値を経験則ではなく計算で導き出せるので、とても便利なツールであることがお分かりになられたかと思います。

1RM%とRPEの違い

 先ほど例①による1RM%による限界付近の同重量5回5セットは、RPEを用いたプログラムでは通常あり得ません。RPEは『疲労を管理すること』がメインの目的なので、疲労困憊になるようなプログラムを組むことはしないからです。
 では、例えば『5回×5セット @8.0』と『5回×5セット @9.0』で指定された場合、どのような重量設定になるでしょうか?

例②『5回×5セット @8.0』
1RM=200kg(7RM=165kg)    

1set目 165㎏×5⇒RPE8.0
                                    ↓RPEが0.5増
2set目 165㎏×5⇒RPE8.5(指定のRPEを超えたので重量を下げる)
                   ↓重量を3%down
3set目 160kg×5⇒RPE8.0
                                    ↓RPEが0.5増
4set目 160kg×5⇒RPE8.5(指定のRPEを超えたので重量を下げる)
                   ↓重量を3%down
5set目 155kg×5⇒RPE8.0(完了)

平均強度…161kg=1RM80.5%
平均RPE…8.2

【補足】
・2set目がRPE8.5になったところで重量を下げましたが、小数点のRPEは無視して、RPEが9.0に達してから初めて重量downさせる方法もあり得ます。
・0.5ずつRPEが漸増するモデルでの解説ですが、セットを継続してもRPEが変動しないこともあります。つまり、1set目と2set目が同じRPE8.0であっても問題ありません。逆に一気に1.0上がることもあり得ます。
・1set目がRPE8.5だった場合は2set目も165kgで継続し、RPE9.0なら重量downさせるか、2set目からdownさせるべきか、これもケースバイケースです。
・重量は一律に3%downではなく、体調次第で2~5%幅程度でdownさせるケースもあります。

例③『5回×5セット @9.0』
1RM=200kg(6RM=200kg×85%=170kg)

1set目 170㎏×5⇒RPE9.0(あと1回挙がる=6RM)
                                    ↓RPEが0.5増
2set目 170㎏×5⇒RPE9.5(指定のRPEを超えたので重量を下げる)
                   ↓重量を3%down
3set目 165kg×5⇒RPE9.0
                                    ↓RPEが0.5増
4set目 165kg×5⇒RPE9.5(指定のRPEを超えたので重量を下げる)
                   ↓重量を3%down
5set目 160kg×5⇒RPE9.0(完了)

平均強度…166kg=1RM83%
平均RPE…9.2

【補足】
・例②よりも難易度が高いため、より慎重な重量設定が求められます。
・特に3set目はRPE9.5になる可能性が高く、もっと重量downが必要になるかもしれません。

 以上のとおり、色々な可能性があるのでやってみないと分からないところもRPEの特徴と言えます。また、個人差がとても大きいので、より詳細なデータも必要になりますので、面倒だと感じる方が多いかも知れませんが、見てのとおり疲労管理を目的としているため、最終セットでも基本的にはオールアウトさせないようにしていることが分かるかと思います。
 このことから、RPEによるプログラムの作成は高頻度の練習と相性が良く、また、体調の変動にも柔軟に対応出来ると言えます。

1RM%とRPEのどちらがいいのか

 例①~例③を比べると、扱っている重量の平均値が高い例③が特に筋力アップにおいて効果が高いように見えますが、そうとは言い切れません。なぜなら、挙上スピードが速いセットが多いほど、各レップの質がより良い可能性が高いからです。
 挙上スピードによってもたらされるレップの質向上に関する詳細な解説はいたしませんが、おおむね扱う重量が軽いほど、また、セット進行時の疲労具合が少ないほど理論上は挙上スピードは速いことになりますので、例②はその点で優れていると言えます。
 また、疲労具合については、断言は難しいですが、平均的には例③の方がRPEが高いものの、例①は最終セットでオールアウトしていることを考慮すると、例①の方が疲労が大きい可能性があります。
 まとめると以下のとおりです。

        高    低
平均強度   例③>例①>例②
挙上スピード 例②>例①>例③
疲労具合   例①≧例③>例②

最後に

 当然RPEにも弱点があり、特に以下の2点が挙げられます。
 ・個人差に対応するためのデータ量
 ・RPEの見積もりと重量設定の正確さ

 1RM%によるプログラムは柔軟性に欠けるため、上記の2点を満たすことが出来るのであれば、RPEベースのプログラムの方がより優れている可能性は高いかも知れません。管理がきちんと出来るのであれば、挑戦してみてください。
 今回の比較は、『限界重量付近での5×5』というかなり限定的な条件ですので、これだけでRPEが優れているとかいないとか言うことは断言出来ません。あくまで『違い』だと、参考程度にとどめていただければ幸いです。

 また、本記事は夜中の3時に書き始め、朝7時に書き終えるという突貫工事であり、校正などは一切していないため、大変お見苦しい文章になっております。また、参考にしようと思っていた資料も見ることなく記事を書いてしまい、わたくし自身の独断と偏見が多分に入り混じっておりますことを深くお詫びいたしますとともに、本記事の内容を鵜呑みにせず、RPEを用いたパワーリフティングプログラム作成の本家であるRTS(クリックでリンクへ)をよくご確認いただきますようお願い申し上げます。

 海外の記事を読んでも、今回の記事のような比較は見たことがないので、オリジナリティに富んだ内容だと自画自賛しているところですが、『もっとマシな記事を見たことがある』、『考え方がおかしい』、『文章が気持ち悪い』などご意見がございましたらコメントください。内容次第で返事したりしなかったり致します。
 ここまでご覧いただき、まことにありがとうございました。
 

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