パワーリフティングのためのピリオダイゼーションについて(初級編)

5/3/1とかスモロフJrとか意味も考えずに実行している皆さん、ごきげんよう。強くなっていますか?
もし強くなっているのであればこの記事は見る必要ありません。

今回は「ピリオダイゼーション」と言いつつ表層的な内容ですが、「どうやって計画的な練習に取り組んでいくべきか」という話について書きました。

【なぜ計画的な練習が必要なのか】
やりたいように、好きなように練習して強くなれる人間はごく一部だけ。
漸増性の原則を見据えて計画的に練習しないとそう簡単に強くはなれません。目先の重量を追ってしまうとすぐに行き詰るでしょう。
「今週より来週、来週より再来週」と毎週のように強度を高めようという方法は、初心者や一部の(超)上級者であれば可能かもしれませんが、ある程度の経験者になると、それを達成することは非常に困難です。
月単位、半年、年単位で漸増させていくという視点が必要となります。

日本のパワーリフターによく知られている伝統的なサイクルトレーニング(=単純な線形ピリオダイゼーション)を採用したことがある人もいると思いますが、それだけで強くなれるでしょうか。

【伝統的なサイクルトレーニングの例】
以下、SQを週1回やる場合の伝統的なサイクルトレーニングを組んでみましょう。(MAX220kg前後を想定)

W1 140kg×8rep×5set
W2 150㎏×8rep×5set
W3 160㎏×8rep×5set
W4 170㎏×8rep×4set
W5 180㎏×8rep×3set
W6 190㎏×6rep×3set
W7 200㎏×4rep×3set
W8 210㎏×2rep×2set
W9 220㎏×1rep×1set

※このサイクルを「軽すぎる」「ボリュームが少ない」「頻度が足りない」などの視点で論じるものではありません。

【上記サイクルの問題点】
①序盤がやや単調すぎる
 ディロード的な意味や技術的な気づきを得る期間としてとらえることもできますが、1RM向上が至上命題であるパワーリフターにとって、後半のストレングス期に向けた助走期間として適切な設定かやや疑問があります。筋肥大を狙うためのボリュームワークという解釈もできますが、それにしては期間が短すぎるかもしれません。

②デッドリフトと組み合わせにくい
 デッドリフトも同じようにサイクルを組もうとすると、スクワットとの重複が避けられません。疲労管理が難しく、共倒れしてしまうかもしれないでしょう。あまり論じられない点ですが、個人的には致命的な欠点だと感じます。

③調子を崩すと、立て直しにくい
 直線的に負荷を高めようとする計画は途中で力尽きる可能性があるだけでなく、予期せぬ生活リズムの乱れにも強いとは言えません。序盤の助走期間が長いので通常は問題ないはずですが、狙ったとおりに調子が上向いてくれない可能性もあります。自己管理能力の高さだけでどうにかならないことは社会人であれば往々にしてあるため、スケジュール調整の効きやすさは大事な要素になります。

④次のサイクルが組みにくい(長期的な継続性の問題)
 仮に次回からすべての週を+5kgするとして、それを何回続けられるでしょうか。すぐに頭打ちになると思われます。

私見
そもそも上記のようなサイクルは「あまりに単純すぎて伸びにくい(←伸びない訳ではない)」と現代では広く知られており、これを採用している人間は何をやっても伸びる初心者か、「限界を知らない教」を信仰する一部のジャパン人しかいないのではないだろうか…
(単純だからこそ取り組みやすいという利点はあるし、一概にダメとは言えないが…敢えてやるメリットを個人的に感じない)

【ブロックピリオダイゼーションについて】
文字通り、「ブロック単位」で「期分け」を行うもの。
先ほどの例で挙げた9週のサイクルを分解し、1ブロックを3週とし全5ブロックで合計15週として組みなおしてみます。

W1 140kg×8rep×5set
W2 160㎏×8rep×4set
W3 180㎏×8rep×2set 合計88rep

W4 150㎏×8rep×5set
W5 170㎏×8rep×3set
W6 190㎏×6rep×2set 合計76rep

W7 160㎏×6rep×4set
W8 180㎏×6rep×4set
W9 200㎏×4rep×4set 合計64rep

W10 170㎏×6rep×4set
W11 190㎏×4rep×3set
W12 210㎏×2rep×2set 合計40rep

W13 180㎏×4rep×4set
W14 200㎏×2rep×3set
W15 220㎏×1rep×1set 合計23rep

※repやsetはブロックの性質に合わせて若干調整している。

ブロックが進行していくことでボリューム期→ストレングス期という方向性を持たせつつ、3週の中で強度を変化させ、(弱)→(中)→(強)と短期間で繰り返す構成になっています。(この例ではボリュームのピークを最序盤ではなく2ブロック目にズラした方が良いとは思う。)
序盤はボリュームをそこそこ持たせつつ、多少重さも扱うようにするとストレングス期への移行がスムースになると思います。
単調な刺激にならないよう強度にメリハリを与え、刺激・回復・適応をバランスさせることが大事…

ただし、3の倍数の週(強)については、特に序盤で重量を下方修正することも必要かもしれません。終盤の(中)が刺激としてやや弱いのでこちらは上方修正しても良いでしょう。また、ボリューム→ストレングスへ移行していくにあたり、全体の週数によりますが、1ブロック目より2ブロック目とか3ブロック目を高ボリュームにさせた方がより適応させやすいです。ここでは例に挙げたサイクルを分解して設定しているだけなので、かなり単純化している点をご承知おきください。

このブロックサイクルによって、先ほどの①~④のデメリットをある程度なくすことができます。

①伝統的なサイクルと比べて、進行具合の微調整がしやすい。

②DLも同じブロックサイクルを組むことで、SQ(弱)の週にDL(強)を充てるといった管理が可能。

③3週ごとに(弱)があるため、調子を上げるチャンスが多く、精神的にも肉体的にも燃え尽きにくい(=ピークを長く保ちやすい)

④拡張性があり継続しやすい。例えばW15が終了した段階で、調子が良ければW7からやり直しつつ、全体的に重量やrep数をupさせることもできるし、W3時点で調子が上がらないようであれば、またW4をもっと軽い重量で設定しなおすなど調整も効く。(ボリュームブロックを途中に追加して18週とか21週に設定したり、15週に減らすことも比較的容易)

また、3週を1ブロックにするという考え方はあくまで例であり、「3週ごとに(強)だと身体がもたない」とか、逆に「3週ごとに(弱)だと全体的に刺激が足りない」と感じるなら、カスタマイズすることも可能。

例)4週を1ブロックにして1週をディロードまたは完全休養とする。
 1ブロック目:(弱)→(中)→(強)→(ディ)or(休)
 2ブロック目:(弱)→(中)→(強)→(ディ)or(休)…以下、繰り返し

例)4週を1ブロックにしてなるべく高い強度を維持する。
 1ブロック目:(弱)→(中)→(強)→(限界まで)
 2ブロック目:(弱)→(中)→(強)→(限界まで)…以下、繰り返し
※オーバーリーチング的なアプローチも可能だが、長期的に回復が間に合わない危険性もある。

なお、重量設定に関しては%RMで指定するか、RPEベースとするかなども自分でやりやすいようにできるし、repやsetの設定も自由に設定できます。
ストレートセットでやる必要もないので、アセンディングでもいいし、トップセット+バックオフもOK。
大切なことは、ブロックが進行するたびに長期的に見ると強度が高まるというところを忘れないことですが、決して1ブロック目より2ブロック目の強度(←ここでは単純に「挙上重量」とする。)が高くなければいけない訳ではありません。

変則的な組み方の例
1ブロック目…軽いがボリュームは多い
2ブロック目…重いがボリュームは少ない
3ブロック目…軽いがボリュームは多い(1ブロック目より重いか多い)
4ブロック目…重いがボリュームは少ない(2ブロック目より重いか多い)
↓「長期的に」重量やボリュームが増加(オフシーズン向き)
 ※上記も(弱)→(中)→(強)で毎週の強度を設定していく。

注意事項として、repを毎週大きく動かすことはお勧めしません。
筋力向上が目的であれば、週を追うごとにrepを少しずつ減らし、重量を上げるよう進行させるべきです。
例えば、8rep→15rep→3rep→10rep→1rep…ここまで極端に動かすことはないと思いますが、このように毎週大きくrep数を動かすことは筋肥大にとっては良いかもしれませんが、刺激が多角的過ぎて身体的にも神経系的にも適応しきれない可能性があります。(疲労困憊になるだけ)
ボリュームを増やしたいのであれば、set数で調整することを勧めます。

【終わりに】
例に挙げたブロックピリオダイゼーションは全体像を分かりやすくするために単純化したものでしかなく、「これが良いプログラムです」というものではありません。
伝統的なサイクルトレーニングを採用しているとか、気ままに練習している諸氏に一つの考え方としてご参考いただければ幸いという程度です。
ただ、自分が得たつもりでいる知識や経験をきちんと具現化できる自信がない限り、プログラムは外注した方が良いと思います。(経験談)

ちなみに、中級編以降を書く気は…それでは、良いパワーライフを!!

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