計画的なトレーニングにおける適切な重量設定

Rondel Hunteが話していた内容の一部に、計画的なトレーニングでは「momentum」(「勢い」「余勢」などの意)が大事という話があった。

目新しい話ではないが、見失いがちな点なので、備忘的に書いてみたい。
(以下は、わたしの個人的な意見なので注意。彼の話を翻訳した訳ではない。)

「momentum」とはどういうことか、旧来型のサイクルと比較しながら説明してみたい。

まず、単純な線形で"積極的に"ベスト更新を最終週で狙うというサイクルを「旧来型のサイクル」とここでは定義しておく。

旧来型のサイクルは以下の点で効率がよくない。
・経験年数が長い選手ほど最終週でベスト更新する確率が低い
・ピークアウトしやすい

具体的にどういうことか、旧来型のサイクルを簡略化して組んでみる。
※セット数は省略し、週数も最低限で簡略化

例)MAX200kg(5RM180kg、2RM190kg)で5レップベースの5週サイクルとする。
w1 145kg×5rep
w2 155kg×5rep
w3 165kg×5rep
w4 175kg×5rep
w5 185kg×5rep←ベスト更新狙い

さらに調子次第でMAX更新を狙って週を追加していくとする。
w6 195kg×2rep←ベスト更新狙い
w7 205kg×1rep←ベスト更新狙い

初心者~中級者であれば実行可能と思われるが、経験年数が長くなると、w5あたりで失敗するとか、成功してもそこでピークアウトすると思われる。
サイクルが失敗して調子が崩れてしまうと、また軽い重量でサイクルを組み直していく必要があり、長期的に筋力向上する機会の損失が大きいと思われる。
つまり、サイクル毎に(レップ)ベスト更新を狙い過ぎてしまうと、次セッション以降でまた一からやり直しとなってしまうため、「momentum」が続かないということである。

では、「momentum」を重視したサイクルとはどのようなものか。同じような線形のサイクルを用いてRPE表記で可視化する。

w1 145kg×5rep@6
w2 155kg×5rep@7
w3 165kg×5rep@8
w4 175kg×5rep@9←確実に可能な範囲で実行する
w5 185kg×3rep@8←無理にベスト更新は狙わない
w6 195kg×1rep@9←次週を見据えた設定で実行
w7 205kg×1rep@10←やる必要はないが目的によって実行
※w4以降は、自身の調子によって重量やレップはもっと下げてもいい。

要は、サイクルの目的が(レップ)ベスト更新に囚われてはいけないということである。
①確実に実現可能と思われる目標を立てる
②追い込まない、またはアンダーシュートさせて構わない
③週毎の重量増加幅は大きすぎず小さすぎず
④調子を切らさず持続させる
⑤ベスト更新はサイクルのゴールではなく途中経過と考える
⑥試合など重要な局面でのベスト更新を目指す

これらの意識でサイクルを組むことが推奨される。

MAXから逆算した理論値や自己ベストを更新するために数値目標を立ててしまうと、サイクル中に調子を崩しがちなので、願望で重量設定を行うことなく、サイクルを進める中で自己評価をしながら、適切な重量設定を行い、次セッション以降へと繋がる「momentum」を大事にしていくことが肝要である。

その他所感
・個人的には中級者くらいまではサイクル最終で毎回ベスト更新に挑戦するようなサイクルを組んでも良いと思われる。
(身体的な限界と比べて心理的な限界が低く、回復が十分に間に合うため。)
・サイクル中にたまたま(レップ)ベストを更新することがあるのはいいが、そこをゴールにしてしまうと、試合で良い結果に結びつかない可能性が高いということを認識しておくこと。
(最終目標とマイルストーンは別)
・単に「追い込まないトレーニング」という点だけが先行すると、ただの緩い練習になってしまうので、「計画的」という点をセットで考えていくとよい。
(RPEベースはただ楽をするため、というものではない。)
・Rondel Hunteの話が聞きたいのであれば、彼の動画(約27分ある)を見るべき。彼はこんな例え話をしていないし、部分的でしかない。また、これらにはわたしの個人的意見が多分に混ざっている。
(長くて動画を見返す気が起きず、部分的に合ってない気がする。)
・こんな文章を最後まで読む時間があるならもっと生産的な活動をした方がいいと思う。

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