ジャガーノートトレーニングシステムAI2.0について(前編)

概要

 アプリを使うことでAIがプログラム作成をサポートしてくれるというサブスクがあるのだが、アプリそのものについては面倒くさいので書く気はない。「JTS 」「AI 」「2.0」で検索してほしい。英語が読めないとかよく分かんないから説明してほしいみたいなリクエストには答える気はない。アプリの解説をしたい訳ではなく、プログラムについて書きたいので。

このアプリの良さ

 一応、このくらいは書いておくことにする。
 まず、良いところとして「他者が一切介在しない」という点を挙げたい。人間のコーチなどは居ないため、AIであるアプリがプログラムの全体像を作ってくれるが、自分でプログラムの細部を作成し、進行、管理をしなくてはいけない。良くも悪くも自己決定権が大きいという自主性の反面、アプリで指示されたプログラムを実行しなければいけないという最低限の依存があり、これが非常に気楽に感じた。そういった点はスプレッドシートを使った既成のプログラムも同じだが、このアプリは種目の選択性がかなり高く、そこそこ不測の事態にも対応が出来る点が良い。
 値段も安い。クーポンコードを使うと月額31ドル程度である。インターフェイスもそれなりに良い。操作のレスポンスも悪くない。バッテリーは大して食わない。すべて英語だが、中学英語レベルで十分に分かる。
 悪い点、それは難易度である。前作の1.0ver(アプリではなくスプレッドシートが届くヤツ)を実行したことがあるのだが、その頃よりはボリュームや強度において難しくないと感じる。しかし、何も考えずにやると、到底完遂出来ないだろう。著者の本や動画を見て、プログラムのコンセプトをある程度理解していないと、種目選択や重量設定でミスをしやすいためである。
 また、初心者から超上級者まで幅広く対応していると謳っているが、ボリュームは多いものの高重量を扱う頻度がやや少ないため、初心者や(肉体だけでなく神経系含めて)回復力に自信がある者はLinear Progressiveに重量を増やしていくとか、毎回高重量のTop setを組み込むなど、5/3/1や5×5、ノーリミッツ式の直線的なサイクルトレーニングなど、単純なプログラムを実施した方がベターかと思われる。そして、上級者にとっては、正直「ぬるい」だろう。
 なお、実施期間はなるべく長い方が好ましい。1~2か月やっただけで結果が出るのだとしたら、普段練習してないのと一緒、時間が掛かるのは当然だと思うべき。このプログラムをやるなら半年は覚悟した方が良い。
 このアプリが向いている人間は、わたしが思うに、長年停滞しており、経験はそこそこあるが期待した進捗が得られていない人間ではないだろうか。

特徴

  • Hypertrophy+Strength+Peaking(&Taper)の3部構成

  • 4週間1ブロックで構成されている。

  • 各ブロック中に1回だけMAX REPあり。

  • 4週目はディロードウィーク

  • 週4~5日程度の練習日を推奨(週3日or6日も可)

  • RPEベースと%ベースが混在している。

  • Top set+Back offだけでなくStraight setも含まれている。

  • 全体的に高ボリュームで、補助種目がそこそこ多い。

  • 期間は何日(何週)でも設定可能だが、半年前後を推奨

  • 経験年数、競技レベル、体重などのデータを元にプログラムを作成

強度設定

 所謂Max effortとかHigh Intensityの話だが、各ブロックの流れは以下のような設定となる。

Week 1 SQ:低強度 BP:低強度 DL:高強度
Week 2 SQ:中強度 BP:中強度 DL:低強度
Week 3 SQ:高強度 BP:高強度 DL:中強度
Week 4 Deload


 1週目から徐々に全体的な強度が高まっていき、3週目が身体的に最もハードになるが、種目すべての強度が一斉に上がるのではなく、DLだけ1週目に高強度なセッションが設定されているところがやや特徴的と言える。
 ここだけ見ると「漸進性の原則に基づいていないのでは?」と思うかもしれないが、1ブロックだけ見た時のミクロ的な視点ではなく、複数のブロックが連続した構成となっているため、マクロ的にすべてのブロックを俯瞰すると漸進性の原則が適用されている。
 SBDのすべてに各週で漸進性の原則を適用させてしまうと、最終的に蓄積する身体的なダメージが大きすぎるため、SessionごとのLoadはAlternaitiveにProgressしていくのだよ。(ルー語)

具体的内容

 わたしは週5日で以下の曜日を指定した。大まかな種目は自動的に設定される。なお、各人の属性によって内容は変わるので注意。

月曜日:休養
火曜日:SQ+BP他
水曜日:BP+上半身
木曜日:DL他
金曜日:休養
土曜日:SBD day他
日曜日:BP+上半身

 補助種目は割愛したが、四頭筋、ハムストリングス、ポステリアルチェーンなどがSQやDLの日に入ってくるので、好きな種目を行う。

種目選択

 Hypertrophy期では「Comp系はそれほど重要ではない」という考え方が根底にある。その理由は、例えばLow Bar SQであれば「手首や肘、腰など局所的に負担が掛かるため、他の種目に影響が出るから」とされている。また、Sumo DLであれば「ROMが短いため、Hypertrophyの効果が期待しにくい」などの理由が挙げられている。SQ系であればTempo系やPause系、High BarやSSBが代替種目(サブ種目)とすることが推奨されている。
 Strength期においてはある程度Comp系が推奨されているが、ある程度は代替種目で問題はない。具体的には以下の考え方になる。

メイン種目(以下メ)、サブ種目(以下サ)
Strength期の例)
月曜日:休養
火曜日:SQ(メ)+BP(サ)
水曜日:BP(サ)+上半身
木曜日:DL(メ)
金曜日:休養
土曜日:SBD (サ)day
日曜日:BP(メ)+上半身

 Hypertrophy期であれば、火曜日も土曜日もSQはComp系(メイン種目)に拘る必要はないが、Strength期に入ってから火曜日だけComp系、土曜日はサブ種目とするなど、種目にバリエーションを付けることで関節にストレスをあまりかけず、筋肉に刺激を与えるという内容である。
 個人的な考えを言うと、このプログラムは純粋に筋量や筋力の獲得を重視しているが、(それなりの重量を扱った上での)運動学習を通じた動作改善をやや甘く考えているようなところが見受けられる気がする。種目は自由に選択できるので、Hypertrophy期であってもComp系は選択可能であり、わたしもHypertrophy期でSQ以外Comp系を毎回取り入れるようにした。
 なお、事前のアセスメントによって弱点を選択することで推奨される種目は自動的に与えられるが、自分でカスタマイズする機能もあり、好きな種目を選択できる。ここでも個人的な考えを述べるが、例えばDLで「トップが詰まる」という弱点を選ぶと、それに適した種目とやらが与えられるが…多くは言わないが、自分で考えて種目を選択した方が良いと思う。

補助種目について

 例えば、わたしの例ではBP+上半身の日が2日あり、それぞれ肩、背中、三頭、二頭を1種目ずつ選ぶことになる。この際、かなり組み合わせが自由だが、好きな種目を適当に選ぶことは避けるように注意されたい。

BP+上半身の推奨されない例)
BP:ダンベルベンチ
肩:ミリタリープレス
背中:プルアップ
三頭:ディップス
二頭:バーベルカール

 上記は一見するとよくある上半身種目の組み合わせだが、致命的な欠点がある。それは、すべてミッドレンジ種目で構成されているということ。パワーリフターであればむしろ良さそうに思えるが、個人的には推奨しない。高強度になりやすく、ダメージの蓄積が大きいため、これを週2回やりながらSQやDLを回すのは厳しいだろう。

BP:ダンベルベンチ⇔バーベルベンチ(足上げ、3countなど)
肩:ミリタリープレス⇔サイドレイズ
背中:プルアップ⇔ラットプルダウン
三頭:ディップス⇔ケーブルプッシュダウン
二頭:バーベルカール⇔ダンベルカール

 日によって入れ替えて、ミッドレンジ種目は1セッション中に3回くらいに抑えるだけでかなり疲労度は変わるだろう。やれるなら全部高重量のミッドレンジ種目でもいいが、とても長いサイクルなので、長期的にやり続けられるよう疲労を管理するという視点を持った方が良い。

インターバル

 Hypertrophy期で3分まで、Strength期で5分~7分程度といった具合(だった気がする)。これはある程度守った方が良い。わたしはこのプログラムを始めるようになってから、タイマーで計測したり、息がある程度戻ったらすぐに次のセットに入るようになった。心肺にも負荷を掛けるイメージでやると良いかもしれない。
 また、補助種目ではもっと短くするとか、スーパーセットも使った方が良い。理由は疲労管理で、インターバルを無限(=要は完全に回復するまで休む)に取ってしまうと、相当な重量を扱えてしまうため、本来はパワー三種目で使うべきエネルギーを補助種目の注いでしまうことになってしまい、本末転倒になりかねないからである。やれるならやっても良いが、ジム滞在時間が毎回2時間超えになるだろうから、お勧めしない。その時間を睡眠に当てた方が良いと思う。

向き・不向き

  • 4週でたった1セットしかMax Repがないため、『クソつまらない

  • 序盤は軽い重量でボリュームだけ多いため、『クソつまらない

  • 試合形式(のフォーム)が少ないため、『クソつまらない

  • 4週目が必ずDeload Weekのため、『クソつまらない

 具体的に例を挙げると、わたしの肥大期の3週目でBP系だと25セット前後を合計200rep近く行ったが、すべてMAXの70%前後の重量で、うち1セットだけ80%前後の重量で8RM挑戦をするというものだった。身体的にとても疲れるが、爽快感とかは一切ない。

BPの例)
火曜日:足上げ 8×5
水曜日:ダンベル 8×6
土曜日:Spoto Press 6×6
日曜日:Comp形式 8×7

 ちなみに、わたしは普段から似たような(バカ軽い重量で)練習をしていたので違和感はなかったが、ベンチプレスがなまら好きな方々にとっては退屈極まりない内容と思われる。

で、伸びたの?

 まだプログラムが終わってないので何とも言えないが…その結果が出てから後編を書きたいと思う。あと3か月以上先になるので期待しないで待っていてくれ。
 毎度のことだが、全体的に歯抜けな記事になってしまった。この記事を見て本プログラムをやろうと思う人が居るのだろうか…後編はもうちょっと具体的な実施の際の注意点やPeaking期の話にも触れていきたい。

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