日向ぼっこ05
「で、なんで二酸化炭素の割合がおかしいんですかね」
ナツはため息をついた。パソコンの画面にはまだできて間もない円グラフによって空気中の気体の割合が示されていた。
「…わかったかも」
クロがナツのパソコンのキーボードを叩いて気温のデータを表示させる。
「やっぱり」
クロ以外は置いてきぼりになった。
「クロどういうことだね?」
所長が口を開く。
「この機械は雨を降らす機械なんだよ」
クロはパソコンを操作しながら答える。
「雨を降らすためには空気中の水分を結露させる必要がある」
「…だから二酸化炭素か」
ナツが納得した表情でコーヒーを飲んだ。
「固体にして空気中に散布すれば気温も下がって、空気中には液体の水ができる」
一瞬パソコンのモーター音だけが聞こえた。
雨が降らせる機械
レオでも理解できることだった。
この戦争の原因。
あの忌々しい、くそったれな雨を降らす機械。
「よし、未確認物体の確認は済んだ。次の目的はーーー」
所長が沈黙を破る
「この機械の破壊、持ち主を探すことだ」
所長が席を立つ。
「ナツ、持ち主を探すぞ、一緒に来てくれ」
ナツが急いでノートパソコンを畳んでコードを手早く巻き取りはじめる。
「クロ、レオ、破壊方法を考えろ」
「りょーかーい」
「了解」
所長とナツは部屋を慌ただしく出ていった。
「レオ、出かけるぞ」
クロは肩を回しながら立ち上がった。
「どこへ?」
クロはレオの方へ振り向いた。
「お前の古巣だよ」
「いいか、私に合わせろよ」
車のキーを取りに行く時、クロはレオにそう言った。
「こんにちは」
窓口の近くには「管理人室」と書かれていた。
「ん?ああ、クロちゃんこんにちは、所長はどうしたんだい?」
窓口にはもうすぐで定年だろうと思われる老人が顔を出した。クロの身長が低いので少々乗り出し気味だった。
「所長がね、今日は残業らしいから早めに帰れって」
「そこのお兄ちゃんは?」
レオは老人と目があった。改めてみてもやはり優しそうな顔だった。
「えっ、あの、」
レオはたじろいてしまった。
「所長が1人で帰るのは危ないからって」
クロがすかさずカバーした。
「ああ、なるほどね」
老人は窓口から離れた。引き出しを引く音がし、軽い金属がチャリチャリとぶつかる音がしたあとにまた老人が顔を出した。
「ほれ、キーだ」
老人はそういうとカギを投げずに丁寧に渡した。
「安全運転でな、新人」
「わかりました」
「ほら、いくよ」
レオはクロを連れて車庫に入った。
「あの、クロさん…?さっきのは…」
ガチャッとドアを開ける。
「あ?まぁ、この容姿だからな、所長の親戚の子?だと思われてるらしくて、上手く利用してる」
そういうとドアを閉めた。
レオが乗ってないのに車のエンジンがかかる。
「ちょっとちょっと」
レオは焦った声で窓をコンコンと叩く。
窓がウィーンと開く。
「ん?何?」
運転席にクロは乗っていてハンドルを握り、運転する気満々だった。
「私が運転します」
レオは少しだけ参った。何者なんだろうと思った。
「え?いいの?悪いね」
ドアがガチャッと開く。
そういうことじゃない。
レオは心の中で静かにツッコミを入れた。