5/23日記 "ジェンダーみたいな話"がしにくい
5月23日(火)
学校帰りの高校同期と新宿で待ち合わせる。「ホストどうすか~」「お姉さんたちいまからどこいくの?」という声をガン無視しないで、毎回ニコニコと対応しかける彼女が心配だ。夕飯を食べはじめてしばらくすると、友人が酔っぱらいはじめた。高校同期は中高時代の思い出や雰囲気と結びつけられているので、その友人がお酒を飲んで酔っ払うという状況がなんだかおもしろい。弱いらしく、グラス半分ほどしか飲んでいないのにうとうととしはじめてしまった。
お会計まえ、友人が「小銭しかない」と言いながら笑いはじめた。現金払いのみの店で、私も2人分まとめて払えるお金が財布にはいっていなかったので、お金を下ろしにいくことにした。前に料理を運んできた店員さんが酔った友人に「かわいいね」などと声をかけていたので、うとうとしている彼女を個室にひとりで残してくるのが気にかかった。走ってコンビニまで行って帰ってくると、友人がひとりでいたのでホッとする。でも「酔っちゃったの?ちゃんと帰れる?帰れないなら一緒に飲もう。」等としつこく声をかけられたらしい。私が心配症すぎるのだろうか。警戒心がなさそうに見える彼女を見ているとハラハラしてしまう。
店を出てしばらく歩いた。ジェンダーレストイレで話題になっていた歌舞伎町タワーに行ってみる。トイレに行きたかったので、ジェンダーレストイレとは別階にある、壁に埋め込まれて見つけづらい上に男女どちらか見分けづらいトイレに行った。なんであんなデザインにしたのか謎だ。
ところが、そのトイレは封鎖されていた。案内板をみると、歌舞伎町タワーにはジェンダーレストイレと封鎖されたトイレしかない。この大きなビルには、ジェンダーレストイレしかないことになる。
これだけ発展した、不快さを取り除くために技術を更新しつづけている社会で、すごく基本的な生活の一部である「排泄」に不自由さを感じるのってめちゃくちゃ面白いな、と思った。しかも、新しくできたガラス張りのきれいな商業施設のなかで。
トイレといえば、外でトイレに行ったときに、盗撮されていないかビクビクしなきゃいけないのもすごく疲れる。さりげなく置いてあるペットボトルが加工されていたり、釘型の超小型カメラが仕掛けられていたり、そんな話を聞いてしまってからだ。個室に入って、まずスマホで変なWi-Fiがないか確認して、不自然な位置に釘やモノが置いていないか確かめる。面倒くさいけど、それをしないほうがもっと落ち着かない。どれくらいの割合でカメラが仕掛けられているのかわからないが、なにも考えずに使っていた頃の私の映像がネットの盗撮サイトに残っているのかもな~と考えたりする。
ふと、高校生の頃マンション内で、堂々と盗撮されたことを思い出す。うす暗いマンションのなか、階段の下からスマホの懐中電灯で照らされてスカートの中を撮影された。光で気づいた私と目の合った男性が、全く動じずにスマホを向け続けたときの顔をまだ覚えている。距離は離れていたが、相手の動じなさに圧倒的な力の差を感じてしまい、怖くて固まってしまった。
「ジェンダー」や「女性の被害」に関することが、話しにくい。たとえばこの日記でも正直すごく書きにくいし、異性にはもちろん、同性にも話しにくい。みんなその手の話題に食傷気味なんじゃないだろうかと思うし、私自身が「加害者になりにくい性別」に安心感を得ているのもある。話したとしても、軽く、雑に「気にしてないんだけどさ!」という口調と雰囲気を出してしまう。
付き合っている人に、トイレにカメラが仕掛ける人がいること・確認するのがストレスだという話を何気なく愚痴ったことがあった。彼は知らなかったらしく、驚いて「女性ってすごく大変だね」という反応をした。そう言われるとすごく落ち着かない気持ちになり「いや、別に気にしないようにするわ~キリがないしね」とわざと雑に言ってその話題を終わらせてしまった。身近な男性に「女性って大変だね」という反応をされるとなんだかいたたまれなくなる。だから話しにくい。何故だろうと考えたが、彼らがどこか申し訳なさそうな雰囲気を出すからかもしれない。悪いのは犯罪を犯している人であって、彼らではないのに。
男性も女性もお互いにはわからない大変な部分があるはずなのに、時代の風潮で女性の「不自由さ」が声高に叫ばれる。男女の対立が煽られていて、分断しているような感覚がある。だから、自分の不自由さをさりげなく口にして「女性」の問題につながってしまうと、目の前にいる友人や恋人と自分の関係が「分断した・時には対立する、異なる性別同士」になってしまった感覚に襲われる。それが嫌で、自分の経験や思ったことなど関係することを口にするのすら憚られてしまうのだと思う。
自分でいろいろと考えてはみたが、複雑すぎてこんな大学生が考えたところで当然結論など出るはずがない。人の感情部分が大きく関わってくる問題はなかなか解決しづらいな、という主題からずれたことしか思いつけなかった。
一緒に遊んだ友人にはしつこいほど、お酒に気を付けるように言ってしまった。レイプドラッグの存在すら知らない彼女には、たとえわたしが「そういう話ばかりしてくる」と思われようとも、伝えたいことがたくさんある。
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