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「ないてる?」

いっとき、しきりに
「ないてる?」とおっしゃる利用者さんがいた。

タイミングや場所はあんまり決まってないようだったけど、
天井のかどのあたりをじっと見つめながら言われることが多かったので

きっと、いるんだよ(霊的なものが)......

という人もいたし、

実家のご家族のことを心配してるのかもね

という人もいた。


その日もまた、利用者さんは「ないてる?」とつぶやいた。

ないてる?

ないてる...

鳴いてる

どうぶつ...!

よくわからない連想ゲームの結果、とりあえずわたしは鳴いてみることにした。


「めえええ」





とてもとてもながい沈黙がおとずれた。

(よくわからないけど体感としてはあ~もうすぐ夜が明けるかな?くらいだった)



そりゃあね、急にめええとか言われてもね、
なんて平静を装うために洗濯物をたたんでいたら


「ヤギか!」


利用者さんは大真面目な顔で言った。


なのでわたしもがんばって真面目な顔をつくって


「ヒツジです!」


とこたえた。

(だって実際ヒツジを思い浮かべてたし)



こいつはなにを言ってるんだ???って、
きっと一生懸命考えてくれてたんだろうなぁ。

さっきの静寂を思い返し、こっそりにやにやした。


そのあとしばらくしてからだったか、
「ないてる?」はなくなっていったのだけど、

わたしのおかしな発想についてきてくれた!!
このひといっしょに遊んでくれる!!貴重!!!
って、ほんとにうれしかったのだった。


(その後もわたしたちの独特なあそびはつづく......)

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