令和2年予備試験憲法の問題文を読んだ時の頭の中

 令和2年予備試験憲法の問題文を読んで思い浮かんだことを言語化しました。素直に思ったことを書いているので、問題に対する正確なアプローチではない可能性がある部分や職務放棄との謗りを免れないような表現散見されますが、現実的な折り合いあきらめのつけ方として読んでいただければと思います。
 問題文を読む際にどのような事実に着目しているのか、着目した事実をどのような観点から分析しているのか、本問における事実関係と判例との関係をどのように考えているのかの参考になれば幸いです。

まず設問を読む
 問題文の最終行に設問がある。設問の表現を見るに取材活動を制限する立法の憲法適合性(いわゆる法令違憲)の検討が求められていることがわかる。「取材活動の制限」とあるので、博多駅事件は確実に言及することになる。

問題文を読む
第1段落
 「取材対象者の取材対象者の私生活の平穏の確保」に対して「何らかの対策がとられる必要性があると指摘されてきた」ということは、取材活動に何らかの制限を加えて、「私生活の平穏」を確保するという立法の必要性に関する言及だろう。目的審査における、大きな流れとして意識すべきだな。この必要性自体は疑いを挟む余地は無いし、二次被害の深刻さは日頃ニュースに触れていれば明らかに分かる。立法目的は合理的と考えていいかもしれない。

第2段落
 立法目的と被制約権利の確認ね。

第3段落
 まず、「犯罪被害者等」の定義や法令上禁止される行為が紹介されている。この法律では、報道関係者が「犯罪被害者等」に取材又は取材目的での接触をすることを禁止し、当該「犯罪被害者等」が同意した場合には取材できるという制度構築をしたらしい。犯罪被害者等に対する取材及び取材目的での接触の内訳、接触という接触全て含まれてるけどいいのか。手段のうち一部を制限するのじゃダメなのか。区別の説明が難しいから出来たら説明するくらいでいいか。
 手段の態様一般を見ると、本来国民の自由として尊重されている取材を、原則禁止して、「犯罪被害者等」が同意した場合に例外的に規制を解除する、という仕組みなので、事前抑制的手段だと評価もあり得る。表現行為に対する事前抑制は北方ジャーナル事件が強力な制限であることを前提とした評価をしていたので、その評価を参考に厳しめの審査を行うべきとの方向性で立論可能だろう。ただ、取材の自由は憲法上保障されている自由ではなく「尊重に値する」自由だし、博多駅事件は比較的緩やかな比較衡量で済ませていたので、おそらく報道の自由等と比べるとそのよう保護性は低いと考えるべきだろう。手段の強度を加味しても厳格な合理性の基準等で問題ない。
 それから、本件の法律は、「捜査機関が捜査に当たる場合、犯罪被害者等が取材等に同意するか否か確認し、報道関係者から問い合わせがあった場合には回答する」という仕組みになっているので、報道機関が犯罪被害者等に取材をすること、取材目的で接触することは、基本的に捜査機関にお伺いを立てなければならない。取材のための交渉もすることができないとなると、「犯罪被害者等」からの情報取得はほぼ不可能になる。この法律があると「犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為」である「犯罪等」に対する報道の内容は大きな影響を受けそう。取材は報道の準備行為として尊重されているので、報道への影響への配慮はあったほうがいいだろう。「犯罪被害者等」への取材から得られていたはずの情報が得られない、という事情の変動が報道自体にどのような影響を与えるかは言及しておきたい。被害者等から得られた情報がなければ当該犯罪に関する報道が十分にできないのか、捜査関係者等からの情報収集で十分なのか等。薬事法違憲判決の、職業遂行の自由への制約が職業選択の自由の制約にまで至っている場合に強力な制限と評価する手法に近いものを本問でも展開できるかもしれない。
 ちなみに、報道機関による取材の同意の有無についての問い合わせは捜査機関を介在させるという仕組みになっているが、これは正常に作用するのだろうか。問題文で与えられている事実関係を超える可能性はあるが、捜査機関による犯罪被害者等への確認は、果たして本当に確認だけなのか、捜査機関からの働きかけの余地はあるのかは非常に気になる。捜査機関が、証拠である被害者を刺激してほしくないと考えるのは当然なのでは。
 それから、この法律の仕組みを採ると、およそ全ての犯罪の被害者等に対して取材目的での接触することさえできなくなる可能性があるがいいのか。そもそも、全ての犯罪が対象となっているのは目的に関連するのか。生命身体に直接の侵害ある犯罪と財産犯では社会的影響や被害者やその親族に与える影響が質的に異なるように感じるが。
 何となく、手段の必要性を欠くので違憲、という方向性のほうが書きやすそうなので、その方針で書こうかな。

第4段落
 本件の法令の取材等の禁止に違反した場合であっても、直接に刑罰が課されるわけではなく、公安委員会から取材等中止命令が発出されることがあり、これに違反した場合には処罰されるという比較的穏当な手段を採用しているという評価をしてほしいのかな。事後規制という評価もできなくはないし,規制の態様で悩みを見せておくか。あとは手段審査で簡単に言及しておけばいい。

第5段落
 犯罪被害者等が取材等中止命令の解除を申し出ることができる、ということが、本件の法律の憲法適合性にいかなる意味を持つのかは正直よくわからない。被害者の翻意の可能性があるから完全な封じ込めではないということか?いずれにせよボリュームを見るに配点は高いとは言えない部分なので、無視しようかな…。

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