娘さんを交換してください！

(りんごとバナナを持っている)

机の前に二人が向かい合って座っている。しばらく沈黙が続く

お願いします、娘さんを交換してください！

娘は交換せん！

娘さんをくれとは言いません、交換してください！

何度言っても無駄だ、娘は交換せん！帰れ！

お父さん、なんでわかってくれないんですか、僕はこんなにも彼女を愛しているのに

娘というものはな、父親にとってかけがえのない存在なんだ。替えの利かない、めったにない代物なんだ！それをどこの馬の骨ともわからない奴に交換できるはずなどない、帰れ！

確かに僕は児童養護施設で育ちました。いまだに自分の両親が誰なのかもわからない。でも僕は、そんなことが気にならないくらい勉強もスポーツも真面目に取り組んで、その甲斐もあってか、高校を卒業すると同時に、ある家族の養子に迎え入れられました。僕を拾ってくれた人はその時、施設に、夕張メロンを4つ置いていきました。

お前、夕張メロン4つと交換された人間だったのか…よくそうなるまで頑張ったな。実はな俺も昔、メロンと交換された人間だったんだ

お父さんもですか！？

まあ、俺はマスクメロン3つだったけどな

では同じ境遇同士、気が合いそうですね

んん…

どうにか娘さんを交換してくださらないでしょうか（バナナとリンゴ出す）

…もう少しなにかないのか

え？

シャインマスカットの１つや２つ寄越してくれてもいいだろ

あなたの娘さんはりんごとバナナで十分です。娘さんはアラサー真っただ中、30年近く生きているんだ経年劣化も随分されてる。腕に染みあり、おでこに線あり、膝や太ももに数か所傷あり、新品とは程遠い完全なジャンク品だ。資産のない家に産まれて、血筋もごく平凡なもの。スポーツや勉学などの素晴らしい遺伝子を親から受け継いだわけでもないし、遺伝子の突然変異で何かしらの才能を偶然持って産まれたわけでもない、希少価値は0に等しく、何より顔の状態がずっと全体的に悪い。査定結果は安い果実お二つが妥当です。

お前娘のどこに惚れたんだ？本当に娘を愛しているのか？

人が誰かを好きになるのに理由なんていりますか…？

ねじ伏せられた…！だが、その言葉が聴けて良かった。よし、お前には娘をタダでやろう