僕はもう人生で食べるべきフランスパンの量をずっと前から越えています

「今の2年生ってインスタで長文送ってくるよね」「あと、なんでもすぐパクりたがるよね『カラコンなに使ってるんですか?』って」「そういえば着てる服とか全部教えてあげた」

俺が昨日、電車で盗み聞きした内容だ。そうだ、俺は電車で盗み聞きをする。

本当は隣の人たちの会話に混ざりたいが、実際は澄ました顔で数独をやっている。数独をやりながら隣の人の会話を聞いてる。

本当は「僕はもう人生で食べるべきフランスパンの量をずっと前から越えています」って言って「えー、なんでですか?」って聞かれたいが、実際は無言劇場が開幕している。

隣の人の姿を横目でチラッとは見るようなことはしない。電車から降りる時に答え合わせをする。俺の頭で思い描いていた人間が隣にいるかどうかの。

会話から推測するにおそらく高3の女子だ。最初は大学生かと思ったが、大学生は「2年生」なんて言葉は使わない。大学生は先輩か後輩かでしか人間を振り分けない。内容から察するにおしゃれ番長みたいな高3が隣に座っているのだろう。

俺は赤坂見附で降りた。隣の人の前を歩いてドアの方に向かいつつ、さりげなく横を向いてその姿、出で立ちを確認する。

嘘みたいなゴスロリを着た赤髪ボブ女が座ってた。

赤髪ボブ女の隣で数独をやりながら盗み聞きしてるやつって俺が人類で初めてだろう。神様がそう言ってた。「赤髪ボブ女の隣で数独をやりながら盗み聞きしてるやつはお前が人類で初めてだ」って。

その後、6歳年上の大学の先輩と会った。色々と喋った。俺は喋りすぎていた。「喋るの好きでしょ」と言われた。世の中で誰にも相手にされてないんで、話し相手がいるだけで超嬉しかったんだよバーカ。

ちなみにこの先輩とは大学で会ったことはない。つい最近、仕事の関係で会った人だ。今日もその先輩に会いに行く。8月中はあと何回か会うことになりそうだ。8月を過ぎればしばらく会うことはないだろう。そんなことを思いながら、今日もその先輩に会いに行く。期待に答えたいとは思ってる。柄にもなくレッドブルを飲んで気合いを入れた。

昨日は喋りすぎた。今日の俺は、あまり喋らない。




小さい頃からお金をもらうことが好きでした