27歳まで続く日記vol.187『 ソラニンの思考実験』

先日、Bの家にいた時のことです。Bは用事があって出掛けていきました。僕はお留守番というわけです。Bは好きなものを食べていいよと言い残して去りました。僕はじゃがいもを食べることにしました。その数日前、Bの家でめちゃくちゃ美味しいじゃがいも料理が振る舞われたのですが、その際に、じゃがいもをラップでくるんでレンジでチンすればすぐに食べられることを知り、感心し、自分でもやってみたいという想いが芽生えました。早速、じゃがいもを水で洗い、ラップで包み、それからレンジのコードを差し込み、500Wの2分で加熱しました。切ったラップが若干短く、じゃがいもを覆い尽くすことはできていなかったので、熱が外に逃げてしまい、もう一回レンジでチンすることになりました。2回目が終わるとじゃがいもすっかりポテトという感じになっていました。それから皿に移し、スプーンで大まかに皮を剥ぎ、最後にオリーブオイルと塩コショウをかけて美味しくいただきました。それからお腹が少し痛くなりました。そしてこの前の、じゃがいも料理が振る舞われた時に「適当に処理したからじゃがいもの芽があったら毒で死んじゃうかもね」と言われたことを思い出しました。僕はネットで「ソラニン」と検索しました。じゃがいもの芽や皮に含まれる毒のことです。ソラニンを摂取すると、30分~1時間後に、腹痛、嘔吐などの症状が出るといった情報が載っていました。そして僕の目に飛び込んできたのは「最悪、死に至ります」という文字でした。恐ろしくてたまりませんでした。この若干のお腹の痛みが後に激しいものになり最終的に死んでしまう、そんな自分を想像して気が気でいられませんでした。Bはいませんし、もし気持ち悪くなったらすぐに救急車を呼ぼうと119という数字を頭の片隅に思い浮かべじっとしました。寒い室内にも関わらず額に汗をかきました。窮地に立たされ、そのプレッシャーを感じ、気持ち悪くなるという負のループに陥りました。いよいよ諦めの境地に達して本を読み始めたところ、いつのまにか1時間半経過していました。ただ、衛生的な問題でお腹を壊しただけなんだと自分に言い訳できるだけの時間が経ち、思わずホッとしました。その頃合いを見計らったかのようにちょうどBも帰ってきました。Bには、ここで起こったことを伝えず、じゃがいもが美味しかったことだけ教えました。

あの時の僕は量子のように体内にソラニンが回ってしまった自分と回っていない自分との重ね合わせの状態にありました。シュレディンガーの猫もあの箱の中で、生きているのか死んでいるのかわからないような居心地の悪さを体感していたのでしょうか。なんであれ、僕は生死の境界線を二度と歩きたくありません。乱雑に皮を剥いたじゃがいもを食べるのはあれが最後です。

小さい頃からお金をもらうことが好きでした