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大丈夫やで〜ばあちゃん助産師のお産と育児のはなし〜


お産で大切なのは、あれこれ先回りして思い悩むことではなく、「来たものを受け止める」という決意です。


お産も子育ても、頭で考えてもうまいこといきません。起こったことを自然に受け止める力が必要なんです。親の仕事って、自分が主体となって「産む、育てる」ではないんです。赤ちゃん主体で「生まれる、育つ」のを丸ごと受け止め、助けていくことじゃないでしょうか。


人類が発生して、現在の姿になるまで、40億年かかったといわれますね。妊娠週数は40週。おなかの赤ちゃんは、40億年の進化を、わずか40週でなしとげるわけです。私には、壮絶な成長過程をたどる赤ちゃんの大変さが、お母さんにも伝わって、つわりになっているような気がしてならないのです。 


病院では、ゆっくり進むお産を「微弱陣痛」と名付けて心配します。けど、そのケースのほとんどは、赤ちゃんの側に「ゆっくり準備する理由」があることのほうが多いように思うんです。私は、赤ちゃんの本能を徹底的に信じていますから、陣痛がなかなか進まないからといって、不安やストレスを感じることはありません。
もう一つ、お産が進まない原因が、お母さんの側にある場合も。
お産が怖い、陣痛が怖いと思っていると、赤ちゃんの準備が整ってきても、陣痛が進むのをストップしてしまいます。陣痛は、赤ちゃんの「生まれる準備が整いましたよ」という合図、赤ちゃんからのノックですから、どうか恐れず、楽しみに待ってあげてください。


赤ちゃんは、絶対に自分が死ぬような生まれ方はしません。赤ちゃんに任せていたら、大丈夫なんです。
私たちにできるのは、自然の力、赤ちゃんの力を信じることなんです。そして、生まれてきた赤ちゃんにとって最良の環境を整えてあげることです。


赤ちゃんが生まれると、それまでお母さん中心だったのが、赤ちゃん中心の空気にガラッと変わります。
そんなとき、だんなさんだけは奥さんのそばにいてあげて欲しいんです。「つらかったなぁ」「俺だったら、辛抱できない」ってねぎらいの言葉をかけて欲しい。立ち会い分娩は、産んだら終わりと違うんです。私は、「お産のあとの2時間は、何が起こるかわからんから、そばにいてよく見たって」とやかましく言うんです。だんなさんからのねぎらいの言葉で、どれほど信頼度が増すことか。セックスは本能でできるけどねぎらいの言葉は本能ではかけられません。ここは、努力が必要や。



子育てでは、「問題が起こらないように」と先回りして策を講じたり、「こうなったらどうしよう」と不安を膨らませて戦々恐々とするより、起こった問題を受け止めて、どうやって解決しようかと考えるほうが大事です。
「こんなことで悩むのは自分だけ」とか「こんなささいなこと、相談するのは恥ずかしい」と思っていませんか?みな同じように悩んでいるんです。困ったことがあれば、一人で抱えこまないで、相談することです。



相談される悩みでいちばん多いのは「赤ちゃんが思うようにならん」。でもこれは当たり前のことです。
赤ちゃんは、お母さんとは別人格。「まだ小さいから」とあなどらずに、赤ちゃんのときから、ちゃんと一人の独立した人格として、赤ちゃんに接してあげてください。



「赤ちゃんが泣いて泣いて、どうにもならない」と言って、助産所に相談に来る人は、少なくありません。そんな赤ちゃんも、ここのベッドに寝かせると、不思議なほどすやすやと眠ります。赤ちゃんが寝るのは、ベッドのせいではありません。私は、ここに来た赤ちゃんと、徹底的にかかわるつもりでいるから、赤ちゃんが安心して寝られるんです。
私はお母さんに「これから一年、とにかく赤ちゃん中心の生活をしてやって」と言うんです。不思議なもんで、お母さんが私の話を受け入れて「よっしゃ、そうしよう」と決意すると、決意しただけで、何もしていないのに、赤ちゃんが変わるんです。




産後1ヶ月を過ぎたら、どんどんセックスしてください。
「1年も2年も放っておかれているだんなさんは、精神的な虐待を受けているようなもんや」って、私よく言うんです。
掃除や料理が完璧でも、夫婦で肝心な部分がつながっていなかったら、家庭は冷たい。これではダメです。私の経験では、セックスのない家庭は、経済的にもよくありません。



0才児に、道徳の観念やしつけは無用。特に3ヶ月までは盲目の愛でいいんです。
0才の赤ちゃんは、抱いて抱いて、ひたすら抱きしめて、徹底的にかわいがること。与えて与えて、与え切ってかまわないんです。そうすることで、素直な、いい子に育ちますよ。



赤ちゃんが1才を過ぎたら、しつけをする時期。その準備段階として、生後6ヶ月を過ぎたころから「盲目の愛情」を少しずつ卒業して、けじめをつけて相手をしてやるといいでしょう。
「けじめをつける」といっても、赤ちゃんにけじめを求めるわけではありません。赤ちゃんを育てている大人が、リズミカルに規則正しい生活を送ってください、という意味なんです。
お産直後は授乳時間もバラバラで、お母さんの生活リズムも乱れがち。誕生して半年たったら、気持ちを切り替えて、生活リズムを立て直していきましょう。
子どもの生活リズムを作るために肝心なのは「誰も見ていないところでも、親がきちんと暮らす」ということ。
しつけって、言葉ですることではなく、態度で示すこと。しつけっていうより、「感化」って言葉のほうが、しっくりくるかもしれんな。



叱る言葉は、短ければ短いほど、心の奥に届くんやないでしょうか。
子どもばかりでなく、相手が大人であっても、その人に聞く気がなければ、どんな言葉も届きません。くどくど説教をすると、心を閉ざして、右の耳から左の耳に抜けてしまいます。「叱るときは、言葉を少なく、威厳をもって」と、心がけてください。
筋が通ったことで叱られるなら、子どもも覚悟します。
「ここに座りよし。いいことしたと思うか、悪いことしたと思うか」
「悪いことしたと思う」
「そんなら、もうやらんな。遊んできよし」
私は、こんなふうに叱ってました。


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