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カナダグースから学んだブランディング。コンテンツ(商品)の価値を極めること

先日、-30度という極寒の地イエローナイフに行ってきたんです。それはもうめちゃくちゃ寒くて、顔とか露出してるところは痛いくらい。iPhoneは寒さで電源つかなくなったw

そんな寒い地で私を救ってくれたのが、カナダグースのダウンジャケット。これがもうすんごいあったかい。パーカー5枚重ねと普通のダウンジャケット着ても寒かったのに、ニット1枚にカナダグースを羽織っただけで暖かい!雪降ってても濡れないし。本当に救世主でした。

しかもバンクーバーに戻ってイエローナイフに行ってきたことを周りに伝えると、「ちゃんとカナダグース着て行った!?」と何人かのカナダ人に言われました。現地のカナダグースへの信頼度にも驚き。「寒いところ=カナダグースが必須」の公式が出来上がってる

という流れで興味を持ったカナダグース。調べたらとってもおもしろい会社でしたのでまとめます。

高機能な高級ダウンメーカー「カナダグース」が人気

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CANADA GOOSE Websiteより

1957年にカナダのトロント(-20度にもなる寒い都市)でスポーツウェアブランドとして誕生。元々は寒いところに住む人々向けにスノーモービルスーツやレインコートなどを作る小さなファミリービジネスでした。

その機能性の高さが徐々に人気となり、現在は東京含め世界に20店舗持つ世界的ブランドへと進化。カナダグースのメイン商品は10万円くらいする高級なダウンジャケットです。

東京そんな寒くないのに買う人いるんかと思いきや、ちゃんと改良された日本モデルが発売されてました。特にアウトドア好きな男性に需要が伸びています。

カナダグース全体の年間売上を見てみると、2019年の売上高が830.5million。(700億円くらい)
4年前の2015年からなんと約4倍も増えています。約60年前の創業時は小さなファミリービジネスだったと考えるとすごい数値ですね。

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Canada Goose's annual revenue from FY 2015 to FY 2019 (in million Canadian dollars)

極寒の地に住む人々向けの高機能ダウンジャケット。値段も10万円前後と高級。それでも売れている理由は、おそらく「どうせ買うなら上質なものを」と考える本物志向派が多くなっているからですかね。値段は高いけど、機能性もよく何年も使えるコスパがいいものを求めているのでは。

ちなみに日本でもデサントの高級ダウンジャケット「水沢ダウン」が売れてるそうですが。実はこちらもカナダと縁があり。バンクーバー冬季五輪で日本代表選手団のオフィシャルスポーツウェアとして採用されたものです。

カナダグースのダウンは高いけど、「買う価値がある」と思わせる
そのバックグラウンドにはコンテンツ(商品)への強いこだわりがあったので紹介します。


こだわり①メイドインカナダは絶対に変えない

アパレルといえば労働コストの低いアジアなどに生産拠点を移すイメージがありますが、「メイドインカナダ」にこだわるカナダグース。

国内生産は、海外より労働コストが5倍も高いんですって。それでもカナダで作り続ける理由は、ダウンジャケットを求める人々がそれを求めているから。

人々は単にお金をsaveしたいのではなく、買うなら質が高く長い間使えるコートを買いたい最高の素材と作り手が揃っているのがカナダ。そして寒い土地のカナダで作っているという事実が、信頼できる「本物」のダウンジャケットだと考えてもらえると。

わかりやすくブランド名に「カナダ」が入っていることも、ヨーロッパやアジアでの展示会の際に「ああ、あの寒いところに住む人たちが着てるコートか」という印象を持ってもらえ、これがブランドイメージの走りとなったよう。

ちなみにあのルイヴィトンもMade in Franceにこだわっていて、商品全てをフランスの工場でつくっていますね。

こだわり②新製品を作る際も常に「最高」を意識

メイドインカナダへのこだわりはすごくわかるんですが、逆にメイドインカナダに縛られない考えも持ち合わせているカナダグース。

どういうことかというと、新しい商品、例えばニットなどをラインナップに加える際にまず「最高の質の商品を作れる国はどこか?」を考えるんですって。労働コストにかかわらず、最高のニット商品ってどこだったら作れるのか。それがイタリアとルーマニアだとわかったら、生産拠点をそこに作るんです。

カナダにこだわっているというよりか、人々が求める最高の品質の服を作ることにこだわってるんですね。この徹底ぶりはすごい。

しかも売上が増えて製作者が足りないとなった時は、変に製作の質を変えるのではなく、自分たちでトレーニングプログラムを作って人を育てるところからやっています。

こだわり③ブランドに背くことは一切やらない

カナダグースは「世界で最も暖かい最高のダウンジャケットブランド」
この想いに背くような商品は作らないと決めています。例えば、デザイン重視の女性用ジャケット製作のオファーがあったのに断ったそう。自分たちは「ファッションブランド」ではない、と。

ブランディングのために「やること」だけでなく、「やらないこと」もしっかり決めているんです。アメリカ企業のマーケティング戦略でも、ブランドをベースにやること・やらないことを決め、使う言葉まで統一しているというのをよく見ます。

カナダグースは「常に最高品質を追求」し「ブランドイメージから外れることは一切やらない」ことを徹底しているからこそ、消費者から絶大な信頼を勝ち取っているんですね。

こだわり④広告はほぼ打たず「クチコミ」を大事に

ダウンジャケットの品質は、実際に着てみてからわかるもの。
カナダグースは「ダウンジャケットそのものが広告」であるとし、通常の広告はほとんど打ちませんでした。誌面広告を少し売ったくらいです。

では何をしたか?というと、
北極点に出発する探検隊や、寒い場所で撮影を行うTVクルーなどとたくさんスポンサーシップを結び、カナダグースのジャケットを提供しました。そして、その人たちが実際にジャケットを羽織って感じた口コミが自然と広がるのを待ったんです。

着たら絶対にその品質がわかるはず。周りの人に伝えたくなるはずだと。
商品へのすごい自信を感じられますね。

現在(2019年12月時点)ではFacebookのファンが約60万人、Twitterのフォロワーが4万人。WebサイトやYoutubeチャンネルでは、寒い場所で働く人々を"Goose People"と呼び、その人々にフォーカスしたコンテンツを発信しています。また、"Canada Goose Basecamp"と呼ばれるメルマガでは、Goose Peopleの紹介、製造工程や商品へのこだわりなどの背景ストーリーも配信しています。

服の宣伝よりも、寒いところで頑張る人々への応援や、ダウンジャケットへ込められた想いなどのコンテンツが多い印象を受けました。

さいごに

日本にいる時は知らなかったカナダグース。
実際に着てみてその凄さを体感しました。そのコンテンツ(商品)クオリティーを最高に活かしたマーケティングをやっていますね。

とりあえずやれることはやっちゃえ!
と、いろいろ手を出しちゃいがちな私。ちゃんとブランディングのために「やらないこと」も決めないと。


References:
The CEO of Canada Goose on Creating a Homegrown Luxury Brand
Canada Goose CEO's 'aha' moment: 'I realized the brand was real
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Canada Goose's made-in-Canada marketing strategy translates into success
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