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アセトアミノフェン3商品の比較とNSAIDsの違い:カロナールの解説


イブDXはなぜ人気の鎮痛剤になったのか

12月6日まで開催されているブラックフライデーの商品を物色していると、例年のプロテインやイヤホンとは別に、今年は次の商品の口コミをよく目にしました。

イブDXを買いました

イブクイック頭痛薬DX


過去1ヶ月で6万点以上の購入は普通ではありません。現在はセール期間中であり、更なる購入が予想されます。一方で、主成分が同じイブプロフェンで単剤のリングルは4000点しかありません。なぜ、主成分が同じなのにここまで差が開くのか。

リングルアイビーα200


この2つについては昨年解説記事を書きましたが、イブクイック頭痛薬DX(E)とリングルアイビーα200(R)を改めて比較してみます。

1.成分
R:1カプセル中、イブプロフェン200mg
リングルは錠剤ではなく、カプセルの中に液状成分が入っています。
E:2錠中、イブプロフェン200mg、酸化マグネシウム100mg、アリルイソプロピルアセチル尿素60mg、無水カフェイン80mg

2.用法用量
R:1回1カプセル、1日2回まで(再度症状が現れれば3回目あり)、服用間隔4時間
E:1回2錠、1日2回まで(3回目なし)、服用間隔6時間

3.作用機序
イブプロフェンなどのNSAIDs製剤は炎症や痛み、熱を引き起こすプロスタグランジン(PG)の生成を抑制することで抗炎症、鎮痛、解熱作用を示します。

4.使用上の注意
4-1.副作用
NSAIDsはPGの生成を抑制するために身体の各所、精神に副作用が現れることがあります。

用法用量を守り、月に10回程度の服用までなら心配ありませんが、過量摂取や長期連用を続けると副作用が現れやすく、とくに胃腸障害や腎障害に注意が必要です。

・胃腸障害:吐き気、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、胃もたれ、胸焼け、下痢、便秘など
・腎障害:尿量減少、むくみ、全身のだるさなど


4-2.高熱での解熱作用
痛みが少なく、熱を下げることが目的であればNSAIDsでなく、副作用が少ないアセトアミノフェン製剤が推奨されます。

特にインフルエンザなどのウイルス感染で高熱が出たときに、アスピリンなどのNSAIDs製剤を使用すると「インフルエンザ脳症」を発症する可能性があり注意が必要です。


心理的作用が与える鎮痛効果

心理的作用が与える鎮痛効果はすでに多くの研究報告がありますが、私たちの購買行動を振り返っても思い当たるところは多々あります。

・TVのCMで好きなタレントがその鎮痛剤を宣伝している
・TVのCMでよく流れる製薬会社がその鎮痛剤を販売している
・外箱がゴールドなどをあしらっていて高級感がある
・口コミでよく効く、すぐ効くと多くの書き込みを目にする、など

たとえばロキソニンについて、第一三共が販売する見慣れたものと、聞いたこともない会社が販売するロキソニンとどちらを選ぶかといえば、見慣れた第一三共のロキソニンを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

主成分は同じロキソプロフェンで、厚労省の承認を得て同じ鎮痛効果が期待できるはずなのに、知らない会社だと「大丈夫かな」と不安に思います。

一度不安になると、効き目が弱いのは知らない会社のせいだからだと、本来の鎮痛効果が発揮されない場合があります。

イブは現在、ロキソニンに次ぐ圧倒的なブランド力を誇っています。そのブランド力が安心感を与えて鎮痛効果を期待以上のものにしている可能性があります。

登録販売者の有資格者である私が、イブよりリングルが優れていると思う点は次のとおりです。

・1カプセル中イブプロフェン200mg、1日最大600mg服用可能。イブは1日最大400mgまで。
・イブプロフェン単剤で、アセチル尿素や無水カフェインなど余計な成分が入っていない
・液状カプセルなので錠剤より速く効く

ただし、薬は口に入れるものなので、簡単に薬の変更はできないことも理解しています。

イブを飲んで頭痛がよくなった、生理痛が楽になったのであれば、副作用が現れないかぎり飲み続けても問題ありませんが、鎮痛剤は対症療法です。

対症療法とは症状を緩和するだけで、痛みの原因を治療するわけではありません。頭痛や生理痛など多くの痛みには原因があり、それは食事や睡眠、適度な運動など生活習慣を改善するだけで体質が変わり、痛みの原因が解消されることがあります。どの鎮痛剤を選ぶかも重要ですが、鎮痛剤に頼らない身体作りのほうがより重要です。


カロナールが市販薬になっていた

23年、アセトアミノフェン製剤として医療用と同成分量の「タイレノールA」を解説しましたが、24年1月に第一三共から同じく同成分量の「カロナールA」が発売されていました。さらに調べてみると23年5月に佐藤製薬から「リングルN300」が発売されていました。

この3つはいずれも1錠中アセトアミノフェン300mg、1日最大900mg服用が可能です。では何が違うのか。

錠剤の大きさです


タイレノールA


カロナールA


リングルN300


タイレノールは丸型でなく長い錠剤で長径17.2mm、厚み4.7mm。カロナールは直径10mm、厚み4mm、リングルは小粒としか表記が見つかりませんでしたが決して大きくはありません

錠剤は小粒で飲みやすい大きさにかぎります


私はタイレノールタイプの長い錠剤を現在も服用していますが、慣れるまではのどを通らずに苦労しました。飲みにくいと用法用量を守らずに薬を飲まなくなり、症状が悪化する原因になります。

毎回の新薬情報の投稿は難しいですが、今回のアセトアミノフェンの情報は今後の服用において重要なものになります。

それくらいアセトアミノフェンは多くの人に、多くの用途で使用されていて、これまで錠剤が大きくて敬遠していた人も、これからは不快感なく服用できるので、熱が出ても体力が回復して、明日を元気に過ごすことができるようになります。


カロナールAの成分その他詳細情報


カロナールA錠
成分
1錠中に次の成分を含有しています。
・アセトアミノフェン300mg:中枢神経に作用して熱を下げ、痛みを和らげます。

用法用量
次の量を1日3回、水またはぬるま湯で服用してください。
・15歳以上1回1錠
※なるべく空腹時は避けること。服用間隔は4時間以上あけること。

効能効果
・頭痛、生理痛、歯痛、咽喉痛、腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛、肩こり痛、など
・悪寒、発熱時の解熱

してはいけないこと
・服用前後の飲酒
・長期連用

相談すること
次の人は服用前に医師や薬剤師に相談してください。
・妊婦や高齢者
・心臓病、腎臓病、肝臓病、胃・十二指腸潰瘍の診断を受けた人
・6回程度服用しても症状がよくならない人


NSAIDsとアセトアミノフェンの作用機序の違い

NSAIDsとアセトアミノフェンは解熱や鎮痛の作用機序、つまり目的の作用に至るまでの道筋が異なります。

NSAIDsは発熱や痛みの原因物質であるプロスタグランジン(PG)の生成を抑制することで解熱鎮痛作用を示しますが、アセトアミノフェンはPG生成抑制にほとんど関与せず、異なる道筋で解熱鎮痛作用を示します。

アセトアミノフェンは脳の中枢に作用して解熱鎮痛作用を示します


アセトアミノフェンは脳の視床下部の「体温調節中枢」に作用して血管を拡張させることで解熱作用を示し、脳の視床と大脳皮質の「痛覚いき値」を高めることで鎮痛作用を示すと考えられています。

PGの生成抑制にほとんど関与しないので、NSDAIDsの副作用として現れる胃腸障害や腎障害は少ないですが、アセトアミノフェンにも副作用が現れる場合があります。


アセトアミノフェンの副作用

アセトアミノフェンは3歳から服用でき、インフルエンザなどの感染症で高熱が出たときは熱を下げるために優先的に使用される成分ですが、薬である以上リスクはあります。

用法用量を守って服用すれば問題はありませんが、次のいずれかに該当する場合は、副作用である「肝機能障害」が現れやすいといわれています。

肝機能障害:食欲不振や吐き気、嘔吐などの消化器症状、むくみや倦怠感などの全身症状、黄疸や皮膚のかゆみなどの皮膚症状、など。

1.アセトアミノフェンの過量摂取と長期連用
1回1錠で服用間隔を4時間以上あけることと指示されているのに、効き目が弱いからと1回で複数の錠剤を、短い間隔で摂取を続ければ、副作用が現れやすくなります。

注意しなければならないのは他のかぜ薬や解熱鎮痛剤との併用です


他の薬にアセトアミノフェンが含まれている場合は1日の上限を超えた過量摂取になるので注意しましょう。


2.アルコールの多量常用者
ビールの1本や2本を飲んでも多量常用者にはなりませんが、焼酎やウイスキーを何リットルも毎日飲めば多量常用者になります。

アセトアミノフェンの用法用量を守って摂取しても、アルコールを多量に飲むことで肝臓での代謝が間に合わず、毒素が増えやすくなり肝障害が起きる可能性が高まります。

高熱が出ているときにお酒を飲むことはないと思いますが、普段からお酒の飲みすぎには注意しましょう。


3.低栄養状態のとき
低栄養状態のときは、肝臓の働きが弱くなっているのでアセトアミノフェンを飲んでも代謝されず、毒素が増えやすい状態にあります。

高熱や低栄養状態のときは自分で解決しようとせず、病院で医師の診断に従いましょう。

日々健康に気をつけていても、空気が乾燥すれば鼻やのどの粘膜も乾燥してウイルスや細菌に感染しやすくなります。

感染するとのどの痛み、鼻水鼻づまり、咳、発熱など身体はウイルスを追い出そうと免疫機能が働いて風邪の症状を現しますが、私たちは感染する前にできることがあります。

風邪やインフルエンザなど感染症の予防にはうがいと手洗いが効果的です


うがいでのどを潤しながらウイルスを洗い流して、手洗いで手についたウイルスや細菌を洗い流します。

冒頭でイブDXが売れていると紹介しましたが、この時期は「加湿器」も売れています。暖房をつけると、部屋の中でも空気が乾燥するので、加湿器は乾燥を防ぐのに効果的です。

できることは全部やって、この冬は健康な日々を過ごしましょう。

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