日産の決算からわかる、現状は、令和バブルではなく令和恐慌前夜だという話。
日経平均が3万円を超えたとのこと
日経平均がバブル期以来の3万円を突破したとのこと。
まあ、今現在も令和バブルの可能性がある。
下記の通り、株価は2020年3月19日から右肩上がりに推移しており、ほぼ倍になった。
株価は、景気の先行指標といわれるが、2021年1~3月の日本のGDPはマイナス7.4%予測とのこと。Go to トラベル、Go to イートキャンペーンによるバラマキも意味がなかった。
さらに、「ワクチン接種のスケジュールが欧米より遅い日本はサービス消費の回復が当面緩やかなものにとどまる」と指摘する声がある(大和総研の熊谷亮丸氏 日経下記記事より)。
誰もが、バブルの兆候を感じているところだろう。
株価の上昇は実態経済・企業業績を反映したものであるという一部の主張に対する反論
トヨタ、ホンダの利益が出ているほんの一部の企業を例に挙げて、第三四半期決算状況から、株価の上昇は実態経済・企業業績を反映したものであるという主張をする方がいるので注意が必要だ。
トヨタについては、私は一過性の利益をかなり無理して捻出した(費用の削減が中心)と考えているのであるが、詳細は添付記事を参照いただきたい。
トヨタ・ホンダを例に出して、製造業を中心に収益性が戻っているという主張をされるのであれば、業界全体を取り上げるべきだ。
例えば、日産、三菱自動車、マツダはどうなっているか取り上げないとミスリードになってしまう。一部の業績が良い会社だけを紹介するはやめた方がよいと思う。
ということで、今回は日産の決算を取り上げる。
日産はコロナ前から異変があった
まずはカブタンから分析スタート。
2020年3月期から、売上高が大幅に減少し、赤字に転落していることがわかる。なお、2021年3月期の業績予想では、赤字が5300億円を見込むとのこと。
さらに、四半期会計期間の推移も見ていただきたい。
コロナ前の四半期会計期間である2019年10~12月から5四半期連続で赤字を計上している。なお、2021年1~3月も間違いなく赤字になると考えられるので、6四半期連続で赤字が確定。2020年4月~6月で多額の損失を計上しているあたりは、損失を一度に出し切れていない(予測が甘い印象を受ける)。
また、2019年1~3月期、4~6月期の業績も注目すべきであり、コロナ前の時期から、利益がほとんど出ていない(2兆以上の売り上げがあっても、24億円、63億円の利益)。要は、コロナ前からとても苦しかった模様。
日産車は売れていない
別の角度からも見てみることにする。要は自動車の販売シェアがどうなっているかである。日本自動車販売協会連合会の自動車販売統計(2020年1月~12月)を見てみると上位は、ほぼトヨタ車に独占されている。
日産は、CMをかなりやっているため、意外なのですが、統計情報では、車はあまり売れていない。価格含めプロダクトとマーケットがフィットしていない可能性がある。
さらに、四半期報告書の事業の状況では、生産及び販売の状況の開示がされている。
上記より、販売台数の落ち込みがすさまじいということがわかる。日本の販売落ち込みはまだましな方で、海外(北米、欧州、アジア、その他)と全方位で売れていない。コロナによる市場の縮小にくわえ、国内であればトヨタ、ホンダ、そして海外自動車メーカーといった同業他社にシェアを奪われている。
日産は多額の固定資産をもっていることから多額の減損リスクにさらされている
最後に2021年3月期の第三四半期報告書を連結貸借対照表の資産の部を見てみよう。
2020年12月末で有形固定資産が4兆2,226億円、無形固定資産は1,091億円もある。償却費(固定費)負担が今後も重いと考えられ、かつ、2021年3月期も相当額の減損損失計上が予想される(現状の5,300億円の当期純損失からさらに下方修正するのでは、と思う)。
2021年3月期でどれほどの減損損失を計上するのかは、これからトレースすべきポイントである。
結論
自動車の市場自体が、コロナ禍において縮小していると考えられるが、日産はシェアを同業他社に奪われている。
日本における最高級のエクセレントカンパニーから、日産がシェアを奪い返すだけの企業体力が残っているかは不明。
現状の固定資産規模は大きく、従業員数の削減含むリストラクチャリングには困難が生じるため、固定費の圧縮が進まず、もはや赤字は一過性のものとは言えない状況にある。
日産が倒れると、日産に部品を供給する数多くのメーカーも倒れることになる。
令和バブルに浮かれている場合ではない。
令和恐慌が目の前に潜んでいるかもしれないのだ。
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