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金融商品時価開示、借入金時価計算の最速チェック法について考える

こんにちは!
呪術廻戦シーズン2により、休日のQOLが爆上がり中の筆者です。


日本の長期金利が上がっている

さて、話は変わりますが、2022年12月19日、20日2023年7月27日、28日の日銀政策決定会合以降、長期金利が上昇局面に入ってますね。

そんな世の中のニュースに最も関連があると考えられる注記が「金融商品時価開示」注記です。

金融商品時価開示について考える

ということで、今日は、金融商品時価開示について、取り上げてみたいと思います。

金融商品時価開示、特に長期借入金の時価計算については、
基本的には、将来の支払利息及び借入金返済額の支出額を期末日時点で借り入れることができたとしたら適用される利率で、割引計算をして求めると思いますが、
忙しい中、この計算をしたり、チェックをするのは、とてもしんどいですよね。

今日は、金融商品時価開示、最速チェック法を伝授したいと思います。

金融商品時価開示最速チェック法

ものすごく簡単です。
直近で起きているような、金利が上昇局面では、借入金簿価>借入金の時価になります。

これは、借入金の時価計算を行うときには、割引計算を行いますが、金利が上がる局面では、割り算の分母が大きくなっているため、計算上、時価は必ず簿価を下回るはず、という考えに基づきます。

設例で確認してみましょう。

設例①金利1%→2%への上昇シナリオ

1億円を利息1%で借りた。1年毎に利息1%分の利息支払い、3年後に1億円を返済。
直近の政策金利上昇及び当社の信用リスク上昇により、期末時点で、新規に借り入れた場合、利息は2%に上昇するケースを想定。

借入時から利率が上昇局面にあれば(今の日本の状況)、借入金簿価>借入金時価が成り立つ。
借入金簿価100,000,000円>借入金の時価97,116,117円

(参考)設例②金利1%→1%への金利不変シナリオ

1億円を利息1%で借りた。1年毎に利息1%分の利息支払い、3年後に1億円を返済。
期末時点で、新規に借り入れた場合、利息は1%から変動しないケースを想定。

借入時から利率が変動していなければ、借入金簿価と時価は一致する。
借入金簿価100,000,000円=借入金の時価100,000,000円

(参考)設例③金利1%→0.5%への低下シナリオ

1億円を利息1%で借りた。1年毎に利息1%分の利息支払い、3年後に1億円を返済する。
当社の信用リスク低下により、期末時点で、新規に借り入れた場合、利息は0.5%に低下すると考えられる。

借入時から利率が下落局面にあれば、借入金簿価<借入金時価が成り立つ。
借入金簿価100,000,000円<借入金の時価101,485,124円
ただし、今の日本は、長期金利が上昇局面であるため、このような設例の状況ではないと考えられる。


現状では、設例①のような金利上昇局面にあると想定されます。
なお、金利の上昇理由は、今回のように、①金融政策的に長期金利が上昇しているケースのほか、②個社の事情による信用リスクの増大により、金利が上昇している場合もあります。

実際に確かめてみましょう!

勝手ながら、GC注記が直近でついている企業を2社、サンプルテストしてみました。
GC注記がついている会社は、信用リスクも増大しているため、金利が上昇していると思われるからです。

ケース1:クボテック

5/15決算短信よりGC注記がついています。

有報の借入金時価情報を見てみましょう。
想定どおり、長期借入金簿価>長期借入金時価ですね。
ほらね。

借入金明細表より、金利が上昇していたのか、どうかを確かめて見ましょう。
2022年3月期期有報

2023年3月期有報

長期借入金の平均利率が0.8%→1.0%に上昇しているのが確認できたと思います。

ケース2:河西工業

こちらも5/15決算短信よりGC注記がついています

有報の借入金時価情報を見てみましょう。
私の最速チェック法では、長期借入金簿価>長期借入金時価となるはずなのですが・・・

長期借入金簿価<長期借入金時価になってますね。。。
何でだろう。

では、借入金明細表を見てみましょう(利率の情報も書いてあるので)。

2022年3月期有報

2023年3月期有報

長期借入金の平均利率が0.93%→1.08%に上昇していましたね。
余計に分からなくなりました。

普通に考えると、
コナン君のように、「あれれ~?、長期借入金の平均利率が0.93%→1.08%に上昇してるのに、長期借入金簿価<長期借入金時価になっちゃってるのどうしてだろ~?」
と言いたくはなりますよね。
そのようになったら、個別の計算シートを見に行ったり、担当者にヒアリングしてみるとよいと思います。
過去にものすごく高い金利で借りていた長期借入金を返済したから、等が回答でしたら納得できるかもしれません。

まとめ

今回は、金融商品の時価開示(長期借入金の時価計算)という、若干、神々の遊びのような、誰のための注記かよくわからないもの、を取り上げてみました。

今回の「金融商品時価開示最速チェック法」から、お伝えしたかったことは、以下2つです。

その1:当たりをつけてから業務を行うと、間違いに早く気づきやすい

日々のニュースや、会社の状況から、計算書作成者、チェック者が、自分のなかで、大まかにでもこういう数値(符号)になるのではないか、と当たりをつけてから業務を行うと、間違いに早く気づきやすいです。
金融商品時価開示は一つの例でして、為替換算調整勘定、投資有価証券時価評価、税効果あたりでも、そのようなことが多くあります。
経験則になりますが、その試みは、生産性を大きく高める効果があると思います。

その2:違和感を感じたら、計算書類の他の記載内容との整合性を確かめる

今回であれば、有報の金融商品時価開示→借入金明細表、(信用リスクの把握では短信のGC注記まで見てます)なんですけど、これをするためには、開示書類のどこに何が書いてあるのかを、大まかにでも全体を把握していく必要があります。
自分の担当に閉じ籠もるのではなく、決算短信、有報、その他IR資料、どんどん把握範囲を広げていけたらいいですよね。

本記事が少しでも参考になりましたら、嬉しいです!

PS.
呪術廻戦シーズン2というより、闇落ちしていく夏油傑の描き方が好きなんですよね。来週から、夏油傑が出てこない、となると、かなりのロスなんですが。そんなことないよね?
呪術廻戦0↔呪術廻戦シーズン2の行ったり来たりが最高だったのですが、これからは、果たしてどうなるんだろう・・・。
呪術廻戦も、アニメ、映画に加え、漫画、ジャンプと把握範囲を広げていくしかないのかなぁ

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