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#12 ベルンシュタインから考える⑥『動作の構築について』

前回まで、動作の起源について(③ )見てきました。

今回は、人間の発達について考えていきたいと思います。


生物発生の法則


ヘッケルという生物学者は、自然界における生物発生についての法則を挙げています。

祖先のたどってきた進化系統的発達の主要な段階のすべてが、その種の個体的発達の初期に要約されたかたちで繰り返される。


これは、どういう意味でしょうか。

少しイメージしにくいかもしれないので、人間の子どもで考えてみたいと思います。


胎児や新生児は、動物界での進化と同じ順番で、一段階ずつ成熟していきます。


胎児では妊娠から数週間はエラがついています。

また新生児では、爬虫類が可能である動作から獲得し、徐々に協調的な動作が構築されていきます。

生物の誕生の終盤に見られた、錐体路運動系の獲得や成熟には時間を要します。


このように、それぞれの個体において器官の形成と発達の過程において、自分自身で生命の誕生からの進化をたどるということを意味しています。

ひとつの生命誕生のうらに、過去の長い長い歴史が凝縮さているとは神秘的ですよね!



脳の解剖学的成熟と機能的成熟


脳は解剖学的に見れば、2年ほどで成熟するとされます。


しかし、14-15歳になるまで、完全な動作の制御ができるとは言えません。

当然、我慢することや計画立てて行動するなど、認知的な判断もそうです!

ボスベイビーのような大人びた赤ちゃんが現実にいたらビックリします!苦笑




脳の各部位が全体として調和の取れた働きをする(機能的成熟)のは、解剖学的に成熟してから、ずっと後になることが分かります。


この理由として、異なる感覚(触覚、筋-関節感覚、視覚など)を組み合わせて一つにする(統合する)ことが出来ないことが考えられます。




先ほど述べた観点からいうと、錐体路運動系の発達より、皮質の感覚野が働きはじめる方がずっと早いはずです。

しかし、それぞれの感覚を統合するまでには時間がかかるのです(>_<)



動作が飛躍するための感覚調整


哺乳類は飛躍的なスピードで運動能力を向上させ続けてきました。

その理由は、感覚による調整のうえに成り立っているのです!

新しいレベルの動作が加わると、運動はより豊かになっていきますが、それは単に動作がプラスされるということではなく、得られる感覚情報の組み合わせパターンが格段に増えていきます。

当然、この感覚情報を処理(統合)しないと新たな運動パターンは習得出来ません。

この様に感覚調整により感覚を統合する能力が飛躍的に増していったと考えられます。


以下に、感覚統合を語る前段階で確認すべきことを挙げておきます。

①動作自体(みたて)から判断する
 他の動物では、こと細かな感覚情報が不明なため、動作から判断する必要があります。

②感覚情報の処理方法が異なる
 高度に発達した脳では、知覚した感覚情報をそのまま伝えるのではなく、処理や関連付けを行って処理されます。

③運動と密接に結びついた知覚に反映される
 特定の感覚刺激は、他の感覚や動作と合わせて統合的に処理されます。
 例えば、物を見る際には、ただ視覚情報を得ているのではなく、眼筋の緊張具合や眼球運動の振幅などによって判断されます。


④ よりアクティブ!
 感覚処理が行われる際には、取捨選択が行われています。
 例として、人混みである一つの声(音)を聞き分ける事が出来るのも、能動的に感覚情報を抽出/処理しているのです。




次回から、動作のレベルを見ていきます!

運動の巧みさの本質を突いていくことになると思います。

難しい話も入ってきますが、是非お付き合いください!笑

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