「快適な生活と引き換えにストレス耐性が劇的に低下した」ヒトの劣化によるものと思われる。
『彼らは没個性化と非人間化というふたつの過程が最も重要だという。没個性化は自分自身の匿名性に気づいたときに起こる。非人間化は他者を人間として見ることをやめ、人間以下の存在とみなしたときに起こる。さらに著者たちは非人間化を、対象をぼんやりとしか認識できない「皮質白内障」になぞらえて説明している。相手をしっかり見ることができなくなるのだ。この状態が起こるのは「悪い奴ら」のことを話すときだ。この呼び方が相手の人間性を奪う。世の中には「悪い」人間ばかりの集団が存在し、彼らは自分たちとは違うと決めつける。この二分法では、もちろん自分たちは「正義の人たち」――倫理的に正しい判断を下す別の人間の集団となる。~さらに悲惨なことに、議論が進むと標的が「悪い人」の集団どころか人間ですらなくなった。~このように仮想敵を過度に単純化して分類することは、人を引きつけることもあり、政治の世界では繰り返しおこなわれている。指導者のわずかな後押しと、刺激的な誇張を加えれば、危険なイデオロギーはたやすく花開く。誰でもこの罠に陥ることがあるが、そんな毒のある比喩的表現に特に影響されやすい人たちもいる。~ライマンとジンバルドーによれば、没個性化と非人間化は「腹内側前頭前皮質、扁桃体、脳幹構造(すなわち視床下部と中脳水道周囲灰白質)といった脳領域のネットワークと関連している可能性がある」。わかりやすいように彼らはモデルのイメージを提供しているので、ここに再現しておく。彼らのモデルが示唆するのは、自分が大きな集団の一部にすぎないと感じると、自分は匿名の存在で、行動によって非難されないと考え、やがて他者に危害を加えるようになることだ。~<没個性化>自分自身をひとりの人間として考えるのをやめ、集団の名もなき一部として認識する。すると自分の行動に個人として責任を取らなくてもよいように感じる。このことが腹内側前頭前皮質(vmPFC(図の1の部分))の活動を低下させる。そしてvmPFCの活動低下は攻撃性とよくない意思決定につながり、脱抑制行動や反社会的行動を引き起こす可能性があるとわかっている。<非人間化>この活動低下には、脳の感情を司る領域である扁桃体(同2)の活性化が伴う。この状態は怒りや恐怖といった感情につながる。<反社会的行動>その後、こういった感情は脳幹(同3)を経由し、心拍数の増加、血圧の上昇、直感の鋭さといった他の興奮(同4)を引き起こす。このような変化は必然的に体を闘争・逃走モードに入らせる――身体に危害が加えられることを予測し、生き残るための準備に入るのだ。~ライマンとジンバルドーら研究者たちの考えでは、vmPFCが不活発になれば、道徳的判断に問題が起き、犯罪やその他の反社会的行動をおこないやすくなる。ふたりはこうまとめている。「攻撃性の研究が示唆するのは、前頭葉構造、特に前頭前皮質が不活発になったり、この脳領域に病変があったりすると、それが攻撃性の主要な原因になり得ることだ」』
<没個性化→アノニマス(匿名)化、非人間化→モノ化、反社会的行動→ヘイト&アタック>昨今のネットとリアルの犯罪や行き過ぎた言動は「快適な生活と引き換えにストレス耐性が劇的に低下した」ヒトの劣化によるものと思われる。適度なストレスとそれを克服した時の快感のバランスが滅茶苦茶に成っているのに表面上は「善良な人」を装うストレスで更に悪化しているのだ。もう自分に嘘をつき続けるのは限界で、誰もがAHに成りえる状況なのかもしれない。
動物にやさしかった子どもが史上最悪の大量虐殺を実行するに至る経路
赤ん坊のヒトラーを殺しますか?
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66950