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展覧会レポート 重要文化財の秘密 東京国立近代美術館

会期 2023年3月17日(金)〜5月14日(日)

近代の明治以降に指定された作品68作品中51作品を展示するこの展覧会。
重要文化財の中から、特に優れたものが国宝が選ばれるが、明治期以降の国宝は未だもって指定されていない。

会期中に展示替えがあるため、訪問日に観られた作品は51作品中36作品くらい。菱田春草の「黒き猫」の展示期間ではなかったのを残念に思ったが、それでも重文に指定されていると言われるだけあって、見ごたえ抜群。

また、重文に指定されるまでのストーリーや、時代を経て重文指定の評価基準が変化していく様子などについて、知識面で楽しむ要素も大きい展示であった。

なんといっても私にとっての一番の感動ポイントは、日本画の美しさ。
息を飲む鮮やかさと緻密さ、荒々しかったり、柔らかだったり、バリエーション豊かな表現に日本画に対しての意識を改めざるを得ないと感じた。

明治時代に西洋画が入ってきたことで「洋画」に対して「日本画」という言葉ができた。
1950年に制定された文化財保護法により、重要文化財の指定開始。
絵画としては日本画の指定から始まった。

日本画は、輪郭をはっきりと書くのが常だったところに、輪郭を明確に描かないことで、空気感や湿度感を表す朦朧体と呼ばれる新しい描き方を確立させた横山大観。全長約40メートル「生々流転」。墨の濃淡だけで現す世界観は、圧巻だった。

また、下村観山や、川合玉堂の桜の描き方の美しさ。
特に川合玉堂の「行く春」では全体に躍動感のある桜の花びらが散りばめられている。生温かい風がふわっとふいてくるよう。花1輪1輪の描き分けが素晴らしい。

川合玉堂 行く春

松岡映丘「室君」は令和2年に指定されたばかりの作品。
細部まで美しい。髪の毛の透け具合、着物の描き方に感動する。

明治から100年というタイミングで指定が始まった洋画の重文指定は、指定側がどのように評価していくか苦悩している様子が見受けられる。

黒田清輝の「舞妓」と「湖畔」は、いずれも重文ではあるが、西洋的な描き方が色濃い前者が先に指定され、日本画との融合度が高い後者は大きく遅れて指定。
当初の指定基準からの変化を感じる。

原田直次郎の「騎龍観音」は異文化との融合を模索した様相が見られるとのことで指定を受けている。時代と共に評価の基準は変化していくものだろうか。

青木繁 わだつみのいろこの宮

古事記の場面を西洋画で見事に描き切った「わだつみのいろの宮」。青木繁が自信満々で博覧会に出品し、3等だった作品。消沈した繁はその後28歳という若さで亡くなる。

また、彫刻工芸分野では、シカゴ万博に出品されたものが、重文指定されているケースが多いようだ。

 高村光雲 老猿 

西洋の写実的な描写を織り交ぜた彫刻作品。

宮川香山 褐釉蟹貼付台付鉢

本物の蟹と見紛うほどの精巧な作り。超絶技巧と呼ばれている。

未来の国宝候補展だとも言われるこの作品。
よくここまで網羅し集めたなぁと思う。

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