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日産サクラ、1日試乗してみた!

日産サクラ。2023年Car Of The Yearを受賞したことで知っている方もいるでしょう。軽自動車サイズのバッテリーEVです。試乗キャンペーンを利用し、1日試乗してみました!

乗車前にスペックを確認

軽自動車なので、サイズはそれなりです。全長 3,395mm、全幅 1475mm、全高は 1655mmとなっています。最高出力も 47kW(64ps)と、軽自動車の自主規制に沿っています。最大トルク 195N・m(19.9kg・m)が特筆すべきポイントでしょうか。

運転操作は、最近のクルマにありがちなレバー、ボタン操作による電動式になっています。セレクタレバーを手前に倒せばドライブ、ボタンを押しながら奥に倒せばリバース、[P]ボタンを押し込めばパーキングになります。パーキングブレーキも同様に電動式です。スイッチを手前に引けばパーキングブレーキがかかり、押し込めばパーキングブレーキががリリースされます。

操作系はインパネに集中しているので慣れれば簡単

パーキングブレーキの操作だけは、違和感が強かったですね。ステアリングコラムの左下にスイッチがあるのですが、その位置といい可動角度といい、昔の足踏み式パーキングブレーキの解除レバーに似てるんですよ。がしゃっと引くと解除される、あれ。そのせいで、解除しようとして引いてしまうというミスを何度も繰り返してしまいました。

走り出しの印象は、「そんな元気な必要ない」ほど軽快

日産ディーラーでサクラを借りて走り出した最初の印象は、「軽自動車なのにこんなに元気なんて!」でした。日産車らしい、ちょっと無駄なくらいの出足の良さでした。ただ、これにはちょっとからくりがありまして。最初から走行モードがSPORTSになっていたのです。元気なイメージを与えたかったんでしょうね。すぐに気づいてSTANDARDやECOを試しました。こちらはサイズなりの加速感でした。

試乗車のカラーはスターリングシルバー

エコを求めてサクラを買うなら、とりあえずECOモードにしておけばいいでしょう。ほとんどの道路で、十分な加速性能を持っていると思います。SPORTSモードでも十分に走れる距離しか乗らないのであれば、常時SPORTSモードにしておくのもありでしょう。EVならではの豊かなトルクを生かしたドライブを楽しめます。

元気に加速してくれるけれど、足回りとのアンバランスが気になる

加速はいいのですが、それに対してプアな印象を受けたのが足回りです。試乗したモデルは標準サイズの14インチアルミホイールに、155/65R14のタイヤを装着していました。軽自動車としてはよくあるサイズだと思いますが、パワートレーンの性格にいまいち合っていないというか。

上述の通り、SPORTSモードにすると結構元気に走ってくれて、運転している印象も軽自動車より1クラス上の車種に感じるほどです。一方で足回りは軽自動車そのもの。加速で気持ちよくなったところでステアリングを切ると、「所詮は軽でした調子こきました」ってなるんですよね。タイヤは踏ん張ってくれないし、サスペンションも仕事してるんだかしてないんだかよくわかりませんでした。

e-Pedal機能をオンにすればワンペダルドライブも可能に

EVならではの運転方法として、ワンペダルドライブというのが注目されています。回生ブレーキを強く効かせることで、アクセルペダルだけで運転できるようになるというものです。サクラではインパネにある「e-Pedal」ボタンのオン/オフで、ワンペダルドライブと従来の運転方法を切り替えることができます。

従来の運転方法では、アクセルペダルから力を抜けば空走します。
e-Pedalをオンにした状態では、アクセルペダルから力を抜くと減速します。ほぼ停止に近い状態まで減速するので、加速、減速、徐行までアクセルペダルだけでコントロールできます。より詳しく知りたい方は、日産サクラのWebサイトをご覧ください。

従来の運転方法とは感覚が違うので、慣れが必要でしょう。MT車で減速シフトをきっちり行なっている人なら、感覚はつかみやすいと感じました。

見切りが悪い訳ではないが、いまひとつつかみきれなかった車両感覚

運転していて一番気になったのが、車両感覚のつかみにくさです。軽自動車であるサクラの幅は1475ミリ、長さは3395ミリしかありません。それなのに、実寸以上に大きなクルマを運転している感覚に陥ってしまったのです。普段よりも道路の端に余裕を残して運転している自分を、この日は何度も発見しました。

1クラス上の加速感があるから? 室内空間がスクエアで実際以上に広々感があるから?理由は判然としませんでしたが、体感的には1.3〜1.5ℓクラスのコンパクトカーを運転しているような気分になってしまうのです。

ボディの見切りが悪いのかというとそうではなく。車庫入れなどは軽自動車らしい簡単さ。なんだか、不思議な感覚でした。

なぜだか、ワンクラス上のボディサイズのように感じました

個人的な意見ではありますが、実寸よりコンパクトに感じる、手の内に収まるデザインがいいと思っています。たとえば現行のVWポロは3ナンバーボディを感じさせず、コンパクトカーを運転している気分になります。サクラはそういった感覚と対局にあると感じました。

善し悪しはあります。実際のサイズより大きく感じるということは、軽自動車の実際のサイズより空間に余裕を感じるということでもあります。実際、室内は大人4人が快適に移動できる空間だと感じました。慣れれば実際のボディサイズに合わせた運転もできるようになるでしょうし、ここは好き嫌いが分かれるポイントかもしれません。

気になる電費(燃費)はどうだったのか?

この日のトータルの電費は、6.64km/kWhでした。この日走ったのは一般道のみ、エアコンは遠慮なく使いました。

EVに乗り慣れていないとこの数字がどれくらいなのかわかりにくいかもしれません。実は私にもよくわかっていません。ガソリンであれば「1ℓ当たりの金額が大体これくらいだから」と計算できます。

しかしEVの充電料金は契約しているサービスや料金プランによって大きく異なります。EV充電スポットを紹介しているこちらのサイトによれば、急速充電1分あたりの料金は16.5〜99円と大きなばらつきがあります。これに加えて基本料金もあります。さらに、充電器の仕様やそのときのEVの状態によって充電速度も違うので、1分あたりの充電容量や走行距離当たりの負担を一概に示すことはできません。逆に言えば、ガソリン車と違ってプラン選びや設備投資次第で安く使えるということでもあります。

これ、地味にEV普及の壁になっている気がするんですよね。

EV、いいらしい。でも、実際にどれくらいいいのかわからない。使い慣れてプランを賢く選べばば安くなるらしいけど、いまいちよくわからない。なんか、ケータイの料金プラン選びみたいですね。

なにか目安がないかと考えましたが、わかりやすいものは思いつきませんでした。なので一例として、今回ワンショットで利用した金額を示しておきたいと思います。

今回の試乗で、途中1回の急速充電が必要でした。普段からEVを利用している人であれば各種メンバーカードなどを使うところですが、私はそのような契約がないので1日限りの契約をして充電しなければなりません。

充電時間は30分、充電した電力量は7.4kWh、料金は1,650円。単純計算すると、1kWh当たり約223円になります。この日の電費は6.64km/kWhですから、1キロ走行するのにおよそ33.5円かかった計算です。

ガソリン車で20km/ℓ走るクルマなら、ガソリン代が170円だったとしても、走行1キロ当たりのコストは8.5円です。単純比較すると、サクラは最近の低燃費車とくらべてかなり割高です。うちのE50エルグランド(燃費はおよそ7km/ℓ)でも走行1キロ当たりのコストは約24円(ガソリン価格170円を想定)ですから、それを大きく上回っています。

急速充電は1回で30分、充電される量は充電器の性能と車両の状態による

この試算から、次のことがわかります。EVをお得に使うには、自宅充電を上手につかったり、外出先での充電プランの選び方が大きく影響するということです。EV購入を検討する方は、自宅充電設備への投資が割に合うのかどうか、近所の充電設備を日常的に使ってどのくらいのコストになるのかなど、細かい検討が求められそうです。

で、結局サクラの評価は?

そもそもの話で申し訳ないのですが、私は軽自動車規格が好きではありません。税制上の優遇を得るために随所に無理が生じている気がするからです。

しかしEVには希望を持っています。通勤通学などほとんど決まったルートを走るのであれば、自宅充電を活用してコストも環境負荷も抑えたモビリティを手に入れることができそうだからです。

つまり……軽自動車ではなく、マーチやデミオみたいなガソリン車で言えば1.3〜1.5ℓクラスのEVがあればなあとずっと考えています。既存のEVはほとんどが3ナンバーで、近所を走るには大きすぎます。かといって軽自動車では心許ない。もう少しだけ大きな、普段の用事を1台でまかなえるような車種の登場を心待ちにしています。

とはいえ……?

なお、「お前の息子3ナンバーで3,500ccのエルグランドで通学してんじゃん」っていう突っ込みは今回はご容赦ください(笑)


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