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クリア報酬のないクエスト

#1 クリア報酬のないクエスト

朝の忙しない時間帯と、仕事から帰宅してすぐのお疲れピークな時間帯に、「義母の食事の世話」というクエストが常時発生している。

アラフィフともなると、否が応でも立ち上がる大きな壁に、親の介護というものがある。大抵の人がこの壁を前にすることになるだろうけれど、私も例外なく・・・と言いたいところだけれど、すでに実父は20年前に鬼籍の人となり、実は20代で一度、介護的な立場に立たされていたことがある。なので、心構えとしては、おそらくアラフィフ以降で初めて親の介護的な立場に立たされる方々よりかは、幾分、アドバンテージ(?)があるかに思っていたのだけれど。

義母との同居は、今の夫と結婚することを決めた時から折り込み済みの事ながら、実はもう少し緩やかかつ義母も元気な状態であるというのが想定されていたのだけれど、現実はというと、義母の急な発病により急遽同居が決まった経緯がある。発病ということはつまり、義母は病に伏した状態であり、その病気のせいで、最低限の動き以外の動きはほとんどできない(しない)状態での同居となったため、食事の準備や入浴の介助が必要という、いきなりのハードモードでの同居となり、常時発生するクエストを必ずクリアしなければならない状態で、スキルが乏しい私にとっては、なかなかな日々が訪れている。

当人の方がより大変なことは分かってはいる。住み慣れた土地や自宅(持ち家)を離れ、友人知人はおろか親戚筋すらいない未開の地で、体の自由もままならない状態で、実の息子や嫁に気を使いつつの生活は、私では到底想像し難いツラさだろうとも思う。

しかし。状況は理解できるし分かってあげたいとも思うのだけれど。朝の忙しい時間帯に、義母の食事の準備をしようと声を掛けると、母からの返事は、

「まだ、後でよか。今はまだ腹の空いてなかけん」

・・・あ。はい。分かってはいます。義母に他意はない。言葉通りである。が。リビングの長ソファを独占して半分横になった状態の義母の後ろを、パタパタと出勤準備で動く私、朝食の準備をしているであろう私を感じていらっしゃるかとは思うのだが、時間配分は私の行動基準に則っているとはいえ、何とも自分本位な返答で、一瞬だけ気持ちがぎゅんっと萎え下がる感触がしてしまうのは、逆に私本位なのだろうかと、ふっと過った感情で自己嫌悪気味となる。

深読みしない。勝手に相手の感情を想像しない。仮にうっかり想像してしまったりしても、それは私目線の思う事であり、その思いを相手に心の中でも当ててはいけない。そんな風に自戒してもつい、思ってしまう。

『いや、私は、介護士さんでもなんでもないですよぉう』

と。結局、朝ごはんは、おかずだけキッチンに準備して、夫がまだ在宅時間だったので、義母からの要求をそのまま伝え、そしてご飯の準備が出来ていることを告げ、その日は早々に出勤のために家を出た。最も効果的な解消方法は物理的な距離を取ることだと、1日経つごとに実感している。

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