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#11 クリア報酬のないクエスト改

義母が入院した。
理由は、現在罹患している病ではなく、先日の降車時による転倒が原因の大腿骨骨折(単純骨折)だ。
ただし、この事が発覚したのは、例の転倒から約一週間ほど経った通院の日で、この日も家を出る時からかなり動きが怪しかったが、何とか通院も終え、帰宅してきた家の駐車場で車を降りた後、ほぼ同じ悲劇が繰り返された。
今回は私が付き添ったので、車の乗り降りもドアの開け閉めも私が遣り、必要に応じて、腕を貸すなど介助していたのだけれど、車から何とか降り、私が車を駐車スペースに停める僅かな時間、義母はマンション入り口ドア前で立って待っていたのだけれど、これがどうして、何とか杖をついて立ってはいたけれど、体がかなり傾いている感じで、まっすぐ立てていない。まっすぐ立てないので、杖だけではどうにもできず、もう片方はマンションの壁に付いている。
そもそも、そのちょっと前、車から降りて、マンション入り口までのほんの2,3歩の距離が、うまく歩けず、私の手を借りただけでなく、1㎝あるかないかの段差が、足が上がらないと言って、うまく歩けずにいた。
これにはどうしたものかと思ったけれど、自家用の車椅子はないので、義母にはとにかく歩いてもらうしかない。
ほうぼうの体で、何とかマンション内に入ったものの、今度はエレベーターに乗れるかどうかと不安がる。エレベーター入口の凸凹段差が気になるようだったけれど、これも、何とか無理やり乗ってもらったのだけれど、やっと乗ったエレベーター、降りる時になって、いよいよ足が動かない、痛いと言って、エレベーターからうまく降りられず、私も支えている手前、エレベーターの扉をうまく制御できず、一瞬だけ、義母の背中に扉が当たってしまった。
いけない!
と思って、必死で支えたし、義母も私に捕まって転倒を避けようとしたのだけれど、如何せん、義母の腕の筋力が衰えてしまっていて、掴む力が弱すぎて、自分を支えることが出来ずに、ぐにゃんとヘタリ込んでしまい―――。
幸い、今回はへたり込んでから、後ろにゴロンと倒れた形だったので、尻餅をついた形にだけなったのだけれど、そもそも、痛い左側をかばうようにして右側にも負荷がかかっていたせいで、決定的に動けなくなってしまった。
果たして、結果、もう自分では全然動けない、立ち上がることも出来ないというので、やはり何か足に起きている可能性が高いし、動けずしかも痛がる人を動かすことは私にはできないので、通院していた病院へ連絡の後、致し方なく救急車を呼んで、救急車で通院している病院へ搬送してもらうこととなった。
このご時世下にあって、大変申し訳なく思いつつも、病院へ向かい、処置も兼ねてレントゲンを撮ったところ、骨折(というか亀裂)が見つかって、そのまま即入院となったのだった。

折れていた箇所は、懸念していた通り、病により脆くなっていた部位だった。
転倒した際、強く打ち付けた訳ではないけれど、脆くなっていた箇所に負荷がかかって、亀裂が入ってしまったのだろうという事だった。
そして、この折れた箇所は、病のせいもあるけれど、高齢ということもあり、自然治癒はほぼ見込みがなく、また自然治癒を待つ(2~3ヶ月)間、動かさずにいると、それでなくても衰えている筋力はさらに弱まり、最悪、寝た切りになってしまったり、病の進行にも拍車がかかるので、折れた箇所を補強する手術を勧められ、本人も手術を望み、近い内に手術が決まった。
手術になると、術痕(そんなに大きくはない)の回復からのリハビリを経て、病の状況を鑑みつつにはなるけれど、1,2カ月の入院にはなる模様。
同居から1ヶ月半で、思わぬ形で義母が入院となったけれど、夫とも話したのだが、やはり、義母がいないだけで、物凄く家の中での呼吸が楽になった気がした。
頭では分かっていたつもりだし、覚悟をしていたつもりでも、相当なプレッシャーがかかっていたのだと、義母不在の居間や義母の寝室を観て、改めて思った。
そして、次に義母を迎え入れるには、今の環境下では到底無理だとも思う。

答えのない、クリア報酬のないクエストは、報酬がないだけでなく、何一つ達成されることなく、次の段階を迎えようとしていた―――。


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