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#16 クリア報酬のないクエスト真

義母の要介護認定通知がきた。
要介護4だった。
認定申請を出した後すぐくらいに、骨折→手術で入院してしまったので、認定のための面接などはもっと後かと思ったら、どうやら、ご時世もあったのだろうけれど、夫のところに電話、義母には入院している病院まで、認定調査の方が来て、聞き取りを行った模様。
なので、実際、義母との面談において、家族はまったく介入していない、ましてや入院中にも関わらず、要介護の認定が「4」であるという事実に、私は少なからずショックを受けた。

骨折部位を補うための手術は無事に済み、リハビリも始まったようで、義母からは、「梅干し」と「昆布の佃煮」を所望されるなど、病院が病院なこともあって、一切の面談が叶わないながらも、元気な様子ではあるようだけれど、果たして、無事に退院して、いざ家に戻ってくるとなったとき、本当にちゃんと自力(杖・歩行補助具)で歩けるようになってくれているか、帰ってきてもちゃんとリハビリを継続してくれるかなどなど、不安要素はあったけれど、要介護3くらいまでなら、なんとか頑張れるかなと、正直タカをくくっていた。
要介護4にまでは至らないだろう・・・というか、要介護レベルにいくのかな?とも思っていた。
そもそも、要介護の段階には厳しい基準がある。その最たる基準の一つが「認知レベル」。認知症とまではいかなくとも、認知レベルに一定の所見が見られると、要介護になるけれど、義母は、ちょこちょこ言動や行動に理不尽な面があっても、そういう性質の人、田舎の人だから・・・という感じで、そういうものだと思う面もあったから、認知レベルで「引っかかる」ことはないと思っていた。
当然だけれど、認定についての詳細な経緯説明はなされず、ただ、通知だけがきたので、正直、どこがどういう状況で要介護4なのかが分からないのだけれど、いずれにしても、この認定は、正直、重く受け止めざるを得ないと思った。

これで退院して帰ってきて、私は果たして、今まで通り、義母を看ていけるのかなと。

自問の答えは、「No」だった。
自信が、もてなかった。

義母と同居したのはわずか1か月半。しかし、同居動機が、義母が病を発症して、実家に一人で置いておけなかったから。しかして、その決断も、もう少し自立した動きができるのかと思っていたからで、まさかの病院へは送り迎えだけでなく、病院内での付き添いはマスト、ご飯の準備だけならまだしも、お風呂も一人では難しい気配で、同居から数週間後、ウチにきてからは、いよいよ、ほとんど自分で動くことはせず、目に見えて、どんどん色々と衰えていった気がする。
その間、夫は、義母との会話を忌み、夫と義母、双方から、それぞれの「忌み事」を聞かされ、実質的な義母の世話は私が行い、これが年単位で続くのかと思う間もなく、義母との同居が一時解除され、うっかり気づいてしまった。
病に冒され、ツライ状況の義母を慮る余り、私は自分自身に余計な負荷をかけてしまっていたことに。
そして、次に義母を受け入れるにあたって、そこを無視すると、私が壊れてしまうことも容易に想像が出来、追い打ちでの要介護認定4で、義母を看てあげたいという私の気持ちが折れてしまったことに。

夫には、ありのままを伝えた。
要介護認定4で、義母が無事に退院して、一人で歩行できるようになって帰ってきたといって、私もあなた(夫)も仕事を持っている状況で、どうしても昼間、義母が一人になってしまう。仮に、入院前のように杖(ないし歩行補助具)を使ってでも一人で歩けるようになったとしても、誰の目もないとき、歩くのがしんどいとトイレにすら行かなくなる・・・というか、行きたくないので、水分を摂らない・・・そうすると免疫力は下がるし、当然、薬効にもかかわってきて、結果、病の悪化に繋がる・・・いや、単純な話、どうしても義母が一人きりで家にいる時間があるわけで、その間、何かが起こっても、当然義母は自分で瞬時に判断したり動くことは出来ないわけで、一人にしてしまう時間が、私はとても不安で心配。気にするなと言われたって気になるし、気もそぞろになる。現に、たったの1か月半で、私の精神的なざわつきは相当だった。
さらに。私は居なくても、夫は在宅の昼間の時間。義母は容赦なく、夫に物事を頼むはず。しかし夫は、仕事柄、出勤が午後なだけ、平日が休みになるだけで、別に、「時間があるから昼間に家に居る」わけではないのだが、そんなことは、おそらく、義母はお構いなしになるだろう・・・そして、眠りの浅い夫は、職場のストレスと義母への不満から、日を置かずに、大爆発するに違いない。
そこまでを考えて、夫に率直に話した。

だから、わたしは自信がない。
お義母さんをちゃんと看られる自信がもてない。

夫の回答としては、それはそうだと、私の思いに賛同はしてくれた。
しかし、事はそう簡単なことではない。
義母には病がある。いわば、終末期の病だ。
要介護認定が4の終末期の人を受け入れてくれる施設は、お金の有無以前に、そもそもが少ない。
あと、夫からしたら、義母の気持ちも考えたのだろう。
施設の選定は行うとして、すぐに・・・ではなく、最低でも年明け、来年の春くらいまでは、家で看ていくのでいいかな・・・と。

『同居生活を楽しみにもしていただろうし・・・』

・・・それはそうなのだ。
私も、普通ならそう思う。
けれど、夫には響いていなかったのだなとも思った。
私が自信がないと言った意味について。

受け入れるのはいい。そうなるだろうと覚悟もしている。
私もなにも、退院するからといって、家に招き入れたくないと言っているわけではない。
ただ。
分かってほしかった。
受け入れるという事は、貴方もちゃんと母親と向き合ってほしい・・・ということに。

たった1か月半だったけれど、忌み事を言いたくなったり、イライラしたりするからと、家にいて、義母が居間にいる間は、ほぼほぼ、自室に引きこもって出て来ず、義母の一挙手一投足にイチイチ声や態度を荒げる振る舞いに、義母じゃなくても見ているだけで、こちらも消耗させられていたこと。
受け入れるからには、今度こそ、自分が真正面から母親の「介護」と向き合うこと。
そこを分かってほしい。

義母のことを思うと、少し切なくなってくる。
今の夫とは、年を経てからの結婚だから、結婚生活自体、まだ4年半。義母とは、年に1回会うくらいの頻度だけの人で、まだ「家族未満」の人。
それでも、家族として、「母親」として、なんとか受け入れて、私なりに頑張ろうとして・・・ただ、私は「頑張る」の加減ができない性質なので、次はもう、頑張れないかなとも思っている。
義母には申し訳ないが、夫の「家」に嫁いだ気持ちにはまだなれないし、夫には最初から、「嫁」には向かない「主婦」には向いていない私と結婚したって、そのあたりの「恩恵」はないと言ってはあるが、義母にはそんな些事は分からないだろうけれど、一人息子にやっと訪れた妻は、嫁としては不適合なので、義母の思っていた事象とは、おそらくなっていない。

クリア報酬が欲しいからクエストをがんばるというのが一般的ではあるけれど、クエスト内容が「面白い」や「楽しい」からプレイする側面もある。故に、報酬がもらえないからイヤではなく、クエスト内容が「つらい」と感じたら、それはもう、いくら報酬が良くても、そのクエストは「受けたくない」ないし「やらない」と思うのは、これまた一般的なRPGとしては当然の行動なのだが、果たしてエンディングやいかに―――。

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