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[こぼれ話6]藤森先生からリクエストいただいたけれども、取材できなかった唯2つの建築①

そろそろお手元に新刊「藤森照信の現代建築考」が届いた頃でしょうか?
ご購入いただけましたか??

さて、藤森先生の「現代建築考」は、全部で45の建築について先生が原稿を書かれています。
取材先は、先生からリクエストをいただいて、僕らから所有者の方にアプローチして取材オファーをしてました。

そんな中、実は先生からリクエストをいただいたけれども、取材できなかった建築が2つありました。
(言っていいのかな?とドキドキしながら書いてます。汗)
その2つはもちろん、本書に掲載されていません。

そう言われると、何がこの本に掲載されるはずだったのか、気になったりしませんか??

その一つは、宮崎県都城市にあった「都城市民会館」でした。
1966年に竣工した菊竹清訓さんの作品です。

所有者もしくは管理者の連絡先さえわかれば、先方にアプローチして、東大教授(当時)で建築家の藤森先生のお名前と、クライアントである東京ガスの名前を出せば、まず取材を断られることはありませんでしたが、都城市民会館は時期を変えて2回アプローチしてもダメでした。

理由は「老朽化で休館中」。
雨漏りする姿を見せられないし、見学するのも危険、というお話で断られました。

ただ、2回アプローチしたのは、1回目に断られた時のお話で、「所有者が変わる予定で、それが実施されたら補修整備されるはず」というコメントがあったからです。

結局、取材はできず、先生の連載も終わって数年して、解体されるという情報が別所からもたらされました。

解体直前に、限定公開の機会が設けられると聞きつけて、藤森先生が取材したかったという建築ならぜひ見に行かなければと、個人的に都城まで行ってきましたが、あの不思議な形をした大ホールを先生がどんなふうに文章に綴られようとされていたのか、今でも気になります。

ちなみに菊竹清訓さんの作品については、解体されてしまった出雲大社「庁の舎」、そしてこちらは現存している米子市にある「東光園」の取材を行い、本書にも掲載しています。

そして藤森先生は、現在、同じ菊竹さんの作品である江戸東京博物館で、館長をお務めです。


解体前の都城市民会館 外観
限定公開イベントで見た都城市民会館のホール




「藤森照信の現代建築考」表紙

藤森照信の現代建築考

文=藤森照信、撮影=下村純一 出版=鹿島出版会
2,600円(+税10%)
ISBN:9784306047013 体裁:A5・208頁 刊行:2023年8月

日本のプレ・モダニズムからモダニズムへの流れを、ライトから丹下健三、そして現代の第一線で活躍する建築家たちの作品を通して概観する。
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。

目次

まえがき:藤森照信

Group 1 モダニズムに共通する住まいの原型をつくり続けた建築家たち
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、フランク・ロイド・ライト、アントニン・レーモンド

Group 2 戦後の日本建築界をおおいに豊かにした建築家たち
本野精吾、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、白井晟一

Group 3 造形力、力動性と民族性、記念碑性を接合させたコルビュジエ派の建築家たち
前川國男、谷口吉郎、吉村順三、奥村昭雄、内田祥哉、丹下健三、片岡献、松村正恒、池辺陽、ジョージ・ナカシマ、吉阪隆正、浅田孝、ほか

Group 4 戦後モダニズムにおけるバウハウス派とコルビュジエ派の建築家たち
大高正人、菊竹清則、磯崎新、黒川紀章、仙田満、山崎泰孝、象設計集団、伊東豊雄、内藤廣、高松伸、藤森照信、ほか

取材後記 ─ あとがきにかえて:下村純一


ご購入はこちらから

https://kajima-publishing.co.jp/books/architecture/v2t7-5ee3c/


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