見出し画像

新型コロナウイルスワクチンの抗体は3ヶ月で低下する?

藤田医科大学から、新型コロナウイルスワクチンの接種から約3カ月後に血液中のIgG抗体価が4分の1に低下したとする発表がありました。今までの報告とおおむね同程度です。これはワクチンの効果が4分の1になったっていうこと?いえいえ、そうではありません。

IgG抗体価を測定した時期は①ワクチン接種前、②1回目接種後約14日目、③2回目接種後約14日目、④1回目接種約3カ月後です。抗体価の平均値は、②の1回目接種後と比べ、③の2回目接種後に全例で大幅に上昇(②11.8U/mL→③245.4U/mLと約21倍)しましたが、1回目接種から3カ月後には65.9U/mLとピークの約4分の1にまで低下しました。えっ、そんなに下がっちゃうの?でもよくみてください。②に比べるとまだ6倍程度の量はあります。    

そもそも通常IgG抗体の半減期は23日程度ですので、4分の1というのは妥当なところで、それほど驚くことではありません。ここで大事なことは   
1 抗体価は2回目接種後に相当高くなっているので、4分の1になっても効果は十分にあること  
2 メモリーB細胞があるので、低下してもウイルスに曝露すると数日で抗体が再上昇すること  
3 ウイルスなどの抗原に強くくっつきやすい抗体は長く残る傾向があること→精鋭部隊が残りやすい(補足:ワクチンでできる抗体は一種類ではありません。抗体はワクチンによって作られるタンパクに結合して作用しますが、くっつく場所が違ったり、くっつく強さが異なったりといろんな種類の抗体の混合物なのです)  
4 今回の調査対象の経過観察では、実際ブレークスルー感染はまれで起きても症状は軽度であったこと   
5 低下後も自然感染後に比較すると高い抗体価が維持されていたこと   
です。 

抗体の低下に関して、過度に心配する必要はなさそうです。   

3回目の接種に関してはどうでしょうか。最近のイスラエルのデータはちょっと心配させるような内容です。時間の経過とともに、ブレークスルー感染が増えており、2回接種後の重症例が増えてきたとのことです。通常はメモリーB細胞ができるので、ウイルスに曝露すると迅速に抗体が作られ再上昇するのですが、高齢者などメモリーB細胞が長く残りにくい場合は抗体再上昇が十分に起こらない可能性もあります。また、デルタ株の増殖速度が早いため抗体上昇が追いつかないことも考えられます。高齢者や免疫が弱い疾患の方々には3回目の接種が必要となりそうです。3回目接種が全員に必要であると結論づけるのはまだ時期尚早かとは思いますが、私は接種したいと考えています。 

メディアの記事には内容と微妙に異なるミスリードさせるようなタイトルがつけられる場合があるのでお気をつけください

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?