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東京都のコロナ感染症の動向(2022年1月~)

 8月からアップが止まっていました。FBでは継続しているので、同時にアップするくせをつけないといけませんね。

 さて、ここ一カ月半の東京都の新型コロナ感染症の動向です。その前に重要なことを。新規陽性者数はひとつの重要な指標ではありますが、それだけで判断するものではありません。オミクロン株となってウイルスも変化しておりますし、ワクチンによる免疫学的背景の変化、検査試薬不足や未受診者の増加などの社会的状況の変化がありますので、新規陽性者だけで単純に解釈できるものではありません。デルタ株が流行した前回との比較も慎重に行う必要があります。多角的な見方を伝える良心的なメディアもありますが、相変わらず多くのメディアが煽情的な言葉とともに「数」だけ伝えています。みなさま、惑わされぬように。それでも、陽性者数をもとに考えることが役に立たないというわけではありません。オミクロン株感染は、重症度は低下するようですが、感染総数が増えれば、特に高齢者での感染が増えれば、重症者の数は多くなります。実際、多くの国で重症者が前回より増えています。

 最初の図は東京の新規陽性者の7日移動平均ですが、ピークを越えたようにも見えます(私も2/10ぐらいがピークかなと各所で書いておりました)。ただし、この判断はもう少し待つ必要があります。図の右の模式図にあるように、検査試薬の不足、受診の控えなど様々な要因により、山がきれいなピークを描かず、てっぺんが削られている可能性があります。そうなると真のピークはもう少しあとということになります。陽性率が39.9%であることも、検査が飽和していることを示唆しています。以前のFBの記事でも書いていますが、陽性率は高くて10%程度となるように行うのが適切だと思います。病床はまだ大丈夫に見えますが、後述する理由で警戒が必要です。

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2枚目の図(年代別移動平均片対数プロット)を見ると20歳代でわずかに減少傾向です。マンボウの効果は部分的にはあったかもしれませんが、自主的な抑制によるものがやはり大きいでしょう。ただ、軽い人の受診控えもあるかなとも思っています。心配なのは10歳未満でまだ増えていること、高齢者がじわりと増加してきていること。3枚目の世代別の割合を示した図でも同様の傾向がわかります。

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 マンボウは20~30歳代には効果があったかもしれません。ただ、今までの波でも、20〜30歳代の増加のあと高齢者、小児の患者が増えていることがわかっています。さらに、様々なデータから、オミクロン株が咽頭~気管支で増えやすいこと、そのため小児で増えるであろうこと(ワクチン未接種も影響すると思います)、免疫原性の変化からワクチンの効果が落ちると言われていますが、特にメモリー細胞が減りやすい高齢者では感染が起きやすく、重症化の懸念があること(他にも高齢者には、合併症を有する割合が高い、嚥下機能が弱いなど様々な悪化因子があります)などがわかっていましたので、小児や高齢者の感染が増えてくることは予想できていました。実際、4つ目の図を見ていただくと、デルタ株流行期より、今回の方が10歳未満の患者がとりわけ多いことがわかります。

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 同様に考える医師・研究者から各々の方法で行政へ危惧が伝えられていたのですが(実は医師の情報ネットワークはなかなかのものなのです)、すぐには対策に結びつかないのでしょうか。歯がゆさを感じます。欧米の先例もありましたしね。特にワクチンはもっと接種できたのかなと思います。ともかく、高齢者、教師、保育所や高齢者施設のスタッフの三回目ワクチン、小学校、保育所などでの感染対策を急ぐ必要があります。

 今後の経過はどうなるか。なかなか難しいです。私は潜伏期の短さなどの変化から、意外に収束速度は速いのかなと思っていました。しかしながら、諸外国では減少速度は増加速度の1/3程度のことが多いようです。日本でも少し遅れるかもしれません。その理由のひとつとして、今まで若者→高齢者、年少児の流れが主だったのが、今回子どもが発端者→家庭内感染の流れが加わったことが考えられます。これにより若者の感染の山に、少しずれて山が加わるので、減少が遅れる要因になります。山の形もいびつになります(てっぺんが右下がりの富士山型、ピーク後も右はなだらかに減少)。そこに、子どもがワクチンを受けていないこと、不顕性感染が多いこと、検査不足などの社会的要因が加わります。ただ、抑制を解除している諸外国と異なり、日本はマスク大国でもありますので、そこは減少の加速に寄与すると思うのですが。


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