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免疫記憶について

新型コロナウイルスに対する抗体が減ったらどうなる?
ワクチン接種後にコロナウイルスに対する抗体ができることはご存じだと思います。この抗体がウイルスを中和し、感染を防いだり、重症化を抑制したり、感染症を治癒させたりします。抗体が半年で低下するという情報が出ておりますが、「そんなに早く効果がなくなっちゃうの」と不安になっている方は多いのではないでしょうか。

免疫記憶
抗体が減少しても、コロナウイルスに対する免疫がすべてなくなるわけではありません。人の免疫系は一度感染したことのある病原体に再度感染した時に、初回よりも迅速に抗体をつくることができます。これを「免疫記憶」といいます。それを担っている細胞にはメモリーB細胞、メモリーT細胞などがあります。再度の感染時には、すばやく反応し、抗体をつくったり、ウイルス感染細胞をやっつけたりします。メモリーB細胞は抗体を作るB細胞より長生きで、年単位~数十年単位の長期にわたって存在します。

3つの場合に分けて説明します。実際はもっと複雑ですが、あえて詳細を省いて簡潔に書きます。ワクチンはmRNAワクチンを想定しています。
① 初回の感染時(ワクチン未接種)
初回は未知の病原体ですので、免疫系が病原体を認識して抗体をつくるのに1~2週間程度かかります。その間にウイルスは増殖し、抗体が効き始める前に重症となってしまうことがあります。

② ワクチン二回接種完了から3~4か月以内
抗体は徐々に低下しますが、十分な量がある間は感染やその後の増殖をブロックします。

③ ワクチン二回接種完了から5~6か月以上
抗体はかなり減少しており、感染や増殖のブロックが徐々に難しくなってきます。しかし、抗体はメモリー細胞のおかげですぐにつくられますので、感染は起こしてもウイルスが初感染の場合ほど増殖しないうちから抗体がまた増えて効果を現します。感染は防ぎにくくなりますが、重症化の確率は減ります。

https://immunology.sciencemag.org/content/6/58/eabi6950?fbclid=IwAR0j9cam0QRp6fRbWGCfwB29YExFgqz8orqRVTKncmv1rGtv-60Y9tFfD88
リンクの論文では、mRNAワクチン二回接種後、コロナ既感染者にワクチンを一回接種した後にメモリーB細胞がしっかりつくられることを示しています。あとは、このメモリーB細胞がどれだけ長生きするかですね。

三回目の接種は?
二回接種終了後半年あたりで接種すれば、抗体は相当増加し、抗体量をキープできます。これをブースター効果といいます。ブースター効果を効率的に得るためには、どのくらいの間隔で打つべきか、接種量は今のままでいいのかなど課題はありますが、大流行している現状では半年後に一回、その後は一年に一回でいいかと思っています(その後弱毒化などによりワクチンが必要なくなるといいですね)。しかしながら、それが少し遅れても突然ウイルスに対する防御力がゼロになるわけではありません。できれば、ワクチン量が半分でも効果があるかなど検討していただきたいですね。少しでも副反応減らしたいですし。また、今後出てくるワクチンも含めて、他のワクチン接種によってもmRNAワクチン後のブースター効果があるかなどのデータもあるといいですね。

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