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「札幌オリンピック冬季大会」記念シール

 札幌オリンピック冬季大会は1972年(昭和47年)に北海道札幌市で開催されたので、まもなく50年になります。これを記念した発行された「記念シール」というのがあります。

 オリンピックを記念した記念切手(3種セットと小型シート)は、今でも切手店で入手でき、珍しいものではありませんが(切手屋さんという業態が珍しいかも)、このような「記念シール」は、切手収集家もきちんと保存しておらず、意外と残っていないものです。そして、切手ではないためカタログに掲載されず、いつ発行されどのように販売されたか、その来歴が十分伝えられないことになります。

 本記事がネットの片隅にでも残され、いずれ活用されることを願っています。

記念シールの概要

 この記事でご紹介する記念シールは、5種類のシートが二つ折りの厚紙の表紙(タトウ)に挟まれております。まずこのタトウを広げたところです。

札幌オリンピックシールタトウ表

 それぞれのシートには切手同様に目打と裏糊があり4片のシールが収められています。下に示すのが札幌の名所を示す「シートA」です。

札幌オリンピックシールA

 右下には切手収集家にはおなじみの文字「大蔵省印刷局製造」が印刷されていることから分かるように、このシールは郵便切手と同じ製造設備で作られています。目打だけでなく切手同様に糊も引かれています。

 シートのサイズや目打の位置は、1964年発行の東京オリンピック記念切手と(5円切手の場所を除いて)同じであることがわかります。

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 印刷はグラビア5色。そのうちの1色は札幌オリンピックのエンブレムにも使用された銀色のインクが使われています。公式エンブレムはシートの右側に描かれています。

 5種類セットのうち「シートB」には競技会場が描かれています。

札幌オリンピックシールB

 記念シールが発行されたのはオリンピック開催の1年前。「札幌国際冬季スポーツ大会」というプレオリンピック大会が開催された会期中の1971年(昭和45年)2月9日に、北海道放送株式会社(HBC)が発行しました。新聞によると1セット250円で、40万セットが発売されたそうです。当時の封書料金15円からすると、切手の代用品としてはまあまあ妥当な価格だと思います。

 販売経路は、デパートの切手売り場だったそうですが、おそらく北海道以外では販売されず、9日から三越札幌店で開催された「世界のオリンピック切手展」会場で大部分が売り捌かれたものと思われます。

 大阪万博(1970年)の直後であり、切手収集は割とブームだった時期でしたので、実際に三越には階段にまで行列ができたそうです。

 シートCからシートEには競技ピクトグラムが描かれています。東京大会で初めて導入されたピクトグラム ですが、札幌大会でも新たにデザインされました。

札幌オリンピックシールC

 シールは12面ありますが、ピクトグラムの種類は11種類しかありません。ジャンプだけ重複してシールに登場しています。ノルディック複合にもピクトグラム があり(距離とジャンプの組み合わせ)実際に実施された種目なのですが、シールには登場していません。

札幌オリンピックシールD

 競技ピクトグラムのバックのデザインにアイヌ由来の紋様が描かれているものもあります。シールのデザイナーが誰なのかはまだ未調査です。

札幌オリンピックシールE

札幌オリンピック冬季大会について

 記念シールのタトウ内側には、札幌大会の概要が記載されています。

札幌オリンピックシールタトウ裏

 1972年(昭和47年)2月3日から13日までの11日間、主として札幌市内で実施されましたが、スキー滑降種目のみ隣接する千歳市の恵庭岳が使用されていたことがわかります。

 冬季大会の招致が決定したのは1966年(昭和41年)のことで、その後わずか5年足らずのプレオリンピックまでに競技会場は大部分が準備されました。地下鉄が開通し、高速道路整備も進みました。札幌市の主要な基盤はオリンピックをテコにして大体50年前に築かれたと言って間違いありません。

 札幌はスキージャンプのワールドカップ開催地でもあり、冬季アジア競技大会も開催するなど実績を重ねてきました。2030年オリンピック招致にも名乗りを挙げているところですが、50年前とは街の抱える課題も異なり、オリンピックへの市民の支持は大きく傷ついているように見え、「参勤交代」で散財させられた迷惑イベントのように扱われる向きもあります。

 50年前に作られたシールを見ると、招致が実現したとして同じようにオリンピックが行われることはないだろうな、と感じるばかりです。

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