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速達料金はなぜ30円も値下げされたのか

1. はじめに

 2021年10月から、日本郵便のサービスに大きな変更がありました。普通郵便は土曜日の配達を止めました。(ゆうパックなどの荷物サービスはこれまで通り土日も配達します)

日本郵便のサイトから

 普通郵便はさらに配達日を1日繰り下げたために、土日を挟むと配達がずいぶん遅くなったという実感があります。(事実、北海道から東京への郵便を水曜日に出すと翌週の月曜日の配達になります)

 郵便の配達日数については、以下のサイトで調べることができます。

 日本郵便では「お急ぎの場合は速達を利用して」と呼びかけています。速達料金を追加することで、土日祝日でも配達してくれますし、速達には配達日数の繰り下げの影響はなくこれまで通りの配達日数です。

 2021年10月からの日本郵便のサービス変更については、以下のサイトで説明されています。

 さて、この普通郵便の配達の繰り下げに伴って、2022年10月1日から速達料金が値下げされました。値下げの幅は重量によって違いますが、定型郵便などに適用される最も利用頻度の高い料金が290円から260円になりました。他の重量でも概ね1割程度の値下げです。

速達料金は260円に値下げされました

 何かと値上げの今日このごろに、値下げは珍しいですね。

 この値下げ、すなおに「サービスを落とすのだからお詫びも込めての値下げをしたんだ」とも感じるのですが、本当のところは、速達に準じた扱いで土日祝日も配達する「レターパック」の存在が理由でもあると考えられます。

 レターパックは、2010年に導入された郵便サービスで、対面手渡し式のレターパックプラス(520円)と郵便受箱投函のレターパックライト(370円)があります。2017年度は1億枚以上販売したという結構売れているサービスです。

 レターパックについては日本郵便の以下のサイトにサービス説明があります。重量によらず定額で送れるだけでなく、土日祝日も配達してくれる(つまり速達と同様の扱いをしてくれる)点がメリットです。

 このレターパックの料金と比較しながら、速達料金の値下げの理由を考えます。

2. 値下げしなかったらどうなった?

 今回のサービス変更で速達料金を290円のまま値下げしなかった場合、私たちは速達サービスを利用するでしょうか。

 普通郵便の中でも最も安い「定形郵便」(普通の書状で25グラムまでのもの)の料金は84円です。これに速達サービス(290円)を追加すると374円になります。したがって、速達込みの料金はレターパックライトの370円より高くなってしまいます。

 このままですと、土日配達を望む人は速達料金を支払うよりレターパックライトを買って投函する方を選ぶことになります。

定形郵便の速達よりレターパックがお得になる

 しかし、配達する側にすれば、レターパックはA4ファイルサイズの大型封筒で、定形郵便の3倍の大きさです。定形の普通郵便を早く届けたいだけのために、大型のレターパックを使って欲しくないと考えても無理はないところです。

 郵便の無用な大型化を避けるために、速達サービスの料金は下げる必要があったのでしょう。

3. お急ぎの場合、定形郵便には速達が、定形外郵便にはレターパックがおすすめになった

 結局のところ、速達サービスの料金は30円値下げされ260円となりました。この結果速達サービス込みの郵便料金は以下のようになりました。

速達サービス込みの郵便料金

 定形郵便物の速達サービス(260円)込みの新料金は、25グラムまでの基本料金84円の場合344円に、50グラムまでの場合は354円となりました。

値下げの結果、速達の方が安くなりました

 この結果、定形郵便物については、速達を付加した料金はレターパックライトの金額370円を下回り、一方、定形外郵便については、値下げ後も380円となり、レターパックライトの方がお得な状態が残ることになりました。

 このため、定形郵便はレターパックより速達を、反対に定形外については速達よりレターパックをご利用ください、ということをこの料金は教えてくれています。

4. 30円も値下げしなくても良かったのではないか

 ところで、定形郵便で速達を使ってもらうため値下げしたのなら、260円でなく、270円にしても定形50グラムまでの速達サービスは364円となります。これでもレターパックライトより安いです。

 値下げ幅として30円は大きすぎ、20円で十分ではないでしょうか。

 20円の値下げで364円、確かに370円のレターパックライトより安いのですが、その差はわずか6円です。100円均一ショップでも定型封筒(長形3号)は1枚当たり8円近いです。

 利用者が、封筒代込みだったらレターパックの方がお得という選択を利用者がされることを日本郵便は恐れたのかもしれません。

【おまけ】速達の出し方

 手元に切手がない場合は、郵便物を持って郵便局に行って「速達で出したいです」と言えば赤い線(後で説明します)を引いたり、料金を計算してくれます。
 これが一番簡単な方法ですが、近くに郵便局がない場合は以下の点に注意して差し出して下さい。

速達サービスと基本料金両方の切手を貼る

 切手を貼ります。速達サービスは「オプション」ですので、元々の料金(封書なら84円)に260円分の切手をはります。
 切手がないよ、という方はコンビニエンスストア等の「切手類販売所」に行って下さい。260円切手がない場合は、120円、140円を1枚ずつ買うか、10円切手と組み合わせて下さい。

【大事】速達を示す赤い線を書く

 封筒(ハガキでも)には、右上部にはっきりわかる赤い線を引きます(「速達」と書く必要はないのですが、確実に速達とわかるので良いと思います)。

速達サービスの利用方法

 速達の表示方法は、以下の日本郵便のサイトに説明があります。

 赤い字で「速達」と書くだけでは本来は速達扱いにはならないことになりますが、実際は必要な料金の切手を貼っているのであれば、たいてい速達扱いしてくれます。

ポストに入れる

 切手を貼ったら、ポストに投函します。郵便局の窓口でも問題ありませんが、営業時間終了間際は避けた方が無難です(急ぐのですから、窓口の人に集める時間を聞くのが大事です)。
 ポストには取集時間が書いてありますので、なるべく早く集めに来てくれるところに投函しましょう。

取集時刻を意識しよう

 速達サービスは、「早く届けてくれる」サービスではあるのですが、配達郵便局までの輸送経路上は速達も普通郵便も変わりがないそうです。配達郵便局に届いた後、速達郵便は優先して取り扱われ、専用の配達員が担当します。

 ですので早く郵便を届けたい場合に私たちにできることは、取集をする郵便局にいかに早く集めてもらうか、にかかっています。
 具体的には、取集する郵便局の郵便窓口や「ゆうゆう窓口」に差し出す、閉まっている時間帯でもその局前のポストに投函する、という手間をかけると早く持っていってもらえるはずです。

 Webでポストの収集時刻を調べるには、日本郵便が情報を公開していないので、このサイトをお勧めしておきます。

 スマートフォンをお使いの方は、最寄りのポストが簡単に検索できるアプリ「郵便局アプリ」をお使いになると良いでしょう。収集時刻も掲載されています。(2023年10月21日追記)


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