AIで作るギャルゲー開発記②「立ち絵を作る」
立ち絵はギャルゲーの華です。
この手のゲームをプレイしているとき、8割くらいの時間で画面に映っているのはキャラクターの立ち絵になることでしょう。
よって、真っ先に作らなければいけない画像はキャラクターの立ち絵ということになります。
論理の飛躍? はは。
実際のところ、キャラクターの見た目はなんとなくのイメージ止まりで、そこまで具体的になっていない子も多くいました。
イメージを固めて、デザインを確定させながら出力する作業。
となればフォーマットが固まっていて、全身が必要になる立ち絵がちょうどいいのではないでしょうか。
※作業の過程でペイントソフトがないとしんどい箇所が多々ありました。私はもっぱらクリスタを使用していますが、メディバンなど性能高めのフリーソフトでも十分作業できるはずです。
画像1枚でわかる立ち絵制作の流れ
「長い記事を読みたくない!」
そんなあなたに向けて、ダイジェスト画像をご用意しました。
では、本編に入っていきます。
メイキング
今回はヒロインのうち、柊 柚乃(ひいらぎ ゆの)の立ち絵にフォーカスしていきます。
彼女は比較的後半に立ち絵を作ったキャラクターです。なんとなくやり口がまとまってきた頃なので、紹介するのにちょうどいいかなと。
全身ラフを作る
まずは全体のベースとなる画像を出力します。
あくまでラフなので、ディティールは気にせず、低めの解像度で生成回数を回していきます。
目的はざっくりこんな感じ。
服装・髪型等のデザインを決める
大まかなポーズを確定させる
顔のディティールは気にしない
では、やっていきます。
初期はこれくらいのイメージで、それをそのままざっくりプロンプトに落とし込みます。
髪型はショートヘア。だけどボブカットではなくて、ちょっと柔らかめの髪質っぽいといいな
飲食店や喫茶店の店員イメージで、ダークカラーのエプロンをつけている。下は白シャツ
エプロンの裾は下のスカートの裾が見えるか見えないかくらい
瞳の色は紫
試しに出力するとイメージと違うところが出てきたりするので、それを見てプロンプトを調整します。
イメージしていたエプロンとちょっと違うやつが出てきちゃいました。制服っぽさはあるんですが……。
設定上、彼女が働いているのは家族経営のお店なので、もう少しありあわせで整えた感じが望ましいところ。
また、くせっ毛っぽさを出そうとして、ちょっと強く出すぎていますね。もう少しプロンプトを弱める必要がありそうです。
あとポーズ指定を忘れていました。どこからか謎の布を持ち出しています。両腕を背中の後ろにまわしている感じにしましょう。
それ一辺倒になるのは良くないですが、AIはまだ手指の生成が苦手なので、隠す構図にすると楽になります。
そんな感じでいくらかの調整を加えて、最終的に採用したラフがこちら。ここに到達するまでにだいたい100~150枚くらいのラフを切らせています。
カンペキにイメージ通りのものを狙うと大変なので、少しくらいイメージと違う場所があっても妥協するのがコツです。後で手で直しましょう。
今回のやり方だと、ワンピースタイプの服やロングコートなどの出力はちょっと大変です。やるなら覚悟を決めましょう。
彼女の立ち絵のエプロンで、ギリギリ苦労せず作れる範囲でした。
シャツとスカートなど、上半身と下半身のレイヤーがわかりやすく分かれている服は比較的やりやすいですね。
ヒロインたちの制服が夏服なのは、その辺りも少し関係しています。
背景を消して解像度を上げ、パーツごとに分解する
まず、この絵は立ち絵のため背景は不要です。消してしまいましょう。
適当な背景透過ツールを使っていいと思います。この後再生成するので、ちょっとジャギーがあっても問題になりません。AIがなんとかしてくれます。
そして画像全体の解像度を上げます。
AIがいい感じに補完してスケールアップくれるツールがあります。が、今の段階では純粋に引き伸ばしてもそこまで問題はなさそうです。
その後は、このラフ画像を何枚かに分解します。
画像生成AIは描く部位を絞るほうが、その場所に対して気合を入れた描き込みをしてくれる傾向があります。
あと、顔にこだわって服装にこだわって手足の破綻を防いで……をひとまとまりの画像で一発出力させるのは流石に非効率的です。
10連でSSR3枚抜きするより、ピックアップ10連を3つ回して3枚揃えるほうが早そうですよね。
服装のレイヤーなどに依存しますが、基本的には「顔のみ(それかバストアップくらいまで)」「首元から腰元くらいまで」「下半身」に分けて作っています。今回はこんな感じ。
また、ラフの時点でちょっと足の露出が目に毒な感じだったので、黒ストを履かせることにしました。エプロン丈と髪も少し伸ばしています。
ラフ生成でイメージに合わせきれなかった部分は、ここで調整しましょう。
AIがいい感じにしてくれるので、けっこう雑コラベタ塗りで大丈夫です。
各パーツを元画像にImg2Imgでクオリティアップ
それでは分解したパーツを元画像に指定して、クオリティを上げていきます。
ここで出力した画像はほぼそのまま立ち絵の最終形になるので、納得できるまで生成ガチャを回しましょう。
生成画像に負けないクオリティで手直しできるなら話は別ですが。
まずは顔から!
いい感じ! イメージから大きく外れたところはなさそうですね。ここでズレがあったら、元画像を調整したりプロンプトをいじったりします。
今回はこのままいけそうなので、好みのディティールやニュアンスを求めてひたすらガチャっていきます。
回すことだいたい30生成くらい。今回は初手からイメージに近かったので短めです。
アッ可愛い!! いいですねこの適度にそっけなさそうであどけない表情!!!! 採用!!!!!!
このノリで首元~腰元と、下半身も生成していきます。手が見える構図だと手の破綻を回避するためにガチャ回数が増えがちです。
絵面がヤバすぎる。
生成したパーツを合体・微調整
ここまではAI任せで楽しかったんですが、ここからは手作業です。
この作業はAIの進歩で極力楽になってほしいところ。
前の作業で3つ(区切り方によって前後)のパーツを作りました。これをつなぎ合わせて一枚の画像にします。
つまり、ハイパーコラ画像タイムですね。
複数の画像を合わせる上で何が問題になるか。そう、つなぎ目の処理です。
この手間を最小限にするために、ロングコートやワンピース、あるいは超ロングな髪型を避け、パーツの分割位置も少し工夫しました。
それでは合体の様子を見ていきましょう。
考えてみれば当然なんですが、まずそもそも横幅が合いません。色味も合わなければ、影や光の具合も合いません。
これをなんとか馴染ませる必要があります。
レイヤー構造がはっきりした服なら、服と服が重なっている部分を継ぎ目にすることで、この作業をかなり楽にすることができます。
今回の立ち絵だと、上半身と下半身の接合がわかりやすいですね。
この通り、エプロンと脚のつなぎ目にあたる部分を、上半身側の画像のエプロンで隠してしまえばいいわけです。
あ、顔と上半身の結合はかなりしんどいので、気合でなんとかします。マフラーとか使えば少しは楽になるかもしれません。
顔だけじゃなくて胸元まで出力しておけば、つなぎ目がバレにくい場所が一つくらいは見つかるものです。
紆余曲折、細かな調整を経て……。
(気に入らないパーツを他の生成画像からキリバリしたり、色選びが変なところを周りの色に合わせて塗りつぶしたり)
できました! 立ち絵です!! それっぽい!!!!
画像生成AIはまだ透過画像を出力してくれないので、透過は手でやる必要があります。そのせいで若干ジャギってる場所もありますね。
フチの線は手でなぞり書きしたほうがクオリティが上がりそうなので、おいおい直すつもりです。
立ち絵1枚を作るのに、だいたい5~6時間くらいかかってます。
絵が上手ければ手直しで解決できる部分が増えて早くなるかもしれないし、破綻をたくさん見つけてしまいむしろ時間がかかるかもしれません。
さて、立ち絵といえば服装、ポーズ、表情と差分要素がてんこ盛り!
その辺りをどうしていくかは次回以降でお届けします。
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