ビジネスを決めるファクター分析

ビジネスを決める要素は実はそれほど多くない。ビジネスモデルにもよるが、飲食店であれば
通常想定売上高:総数×需要率×リピート率×常連率×単価×独占係数
特別想定売上高:認知度×効果範囲×需要率×単価
成否は主にこれで決まる。(全体に季節要因などの係数がかかる)

総数とは、常連になる可能性が十分にある人間の総数である。つまり近くを通るとか、よほどその商品を気にいるとかそういう人間のことだ。
この総数は交通の便にもよる。都心であればバス停や駅の有無、郊外であれば駐車場の有無だ。
立地で負けるケースは人間が普段から通らない所に日常的に利用する飲食店を出店するケースが多い。総数が多ければ多いほど当然勝ちやすい。

需要率
ここでは需要あれば必ず来るという前提が成り立つものと仮定する。言うまでもなく一般的には需要があれば来店率は100%だ。「行きたいとは思ってるんだけどねえ」と1年来ない人間にとって、その店は必要がない。潜在的顧客とする場合もあるが、これらに働きかけるにはクーポンの配布や新メニューなど、そもそも何らかのアプローチが必要で、つまりは現状では需要がないという結論に至る。

リピート率
一度来た顧客が通常想定内の顧客である場合、このリピート率が最も重要だ。総数の上限は決まっているので、総数×需要率が最大限の客数となる。
リピート率が0%で、人口1000人の町であれば1000人目の客がきた以降一人も客が来なくなるということだ。この場合係数は1となる。
いかに一見さんに気に入ってもらえるかということが重要で、たった一度の機会でも失敗すれば、その後何年にも渡り響いてくる失敗になる。

常連率
常連率はランダムで、その人の性質にもよる。飲食店に行くのが趣味のような人間でなければ、せいぜい月に一度行く程度のものだろう。常連になりやすい年齢層や性別など、地域の特性にもよる。

独占係数
田舎にポツンとあるファミレスがつぶれないように、「ここしかない」状況であればあるほど有利となる。これは、総数としても増加するし、リピート率も増加する。ニッチなエリアへの出店は一定の独占係数を獲得できる。

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特需
飲食店は何も近くを通る人間だけがターゲットではない。山奥の定食屋やカフェが新規客のみで回転しているケースもある。

認知度
目の前を通らないのであれば、インターネット上での認知度が高くなければならない。一定の話題性と認知度があれば、主に新規の顧客の集客につながる。
この認知度戦略は総数的な意味で立地が悪い店舗では常套手段であるし、逆に競争の激しい地域でも差別化として図られる場合も多い。しかし、大きな問題点としてリピート率が極端に低いことが挙げられる。
話題性による集客は、一度行けば満足というパターンが多く、1000人の潜在顧客がいれば、これを消化した時点で集客が難しくなる。

効果範囲
いくら話題性があっても東北から九州まで行くことは稀だ。逆に30km離れていて車で行けるような環境が整っていれば効果範囲内だと言える。
これは希少性にもよるが、一般的には20~30km圏内が有効範囲内だと言えそうだ。隣県まで行く人も稀にいるとしても、ありがちな内装のカフェや古民家カフェ、インスタ映えしそうな商品はそれほど珍しくなく、何十キロも離れてまで行く必要がない。

需要率
は説明した通り、実際に行く人間の割合だ。行く人間は1年以内に行くと仮定して考えなければ意味がない。

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戦略

総数
大手チェーンの戦略は総数に働きかけるのが基本だ。
ファミレスでもファストフード店でもカフェでも、出店する基準として、目の前を通る人間の総数が重要になる。
また、都心部でなければ駐車場を設けることも総数を大きく広げる戦略になる。近所にマンションやオフィスビルを誘致できるほどの権力者でなければここは出店した時点で決まる。
ただし、出店コストは総数が有利な立地ほどかかる上に、後述する独占係数は低くなるため、必ずしもリスクが低いとは言えない。

需要率
これは商品の幅や敷居の低さに働きかける、それまで来たことのない人間に対してのアプローチだ。
私の店はちょうどここに働きかけた段階で、それまで小麦製品だけだった所に米を増やしたことで一部のサラリーマン層獲得に成功した。

リピート率
リピート率に働きかける戦略は大手チェーンもとっているが、個人店は弱い分野だ。アプリの導入、スタンプカードの導入、定期的な発信や折込チラシ、CM、立て看板など、とにかく露出を増やすことで、ユーザーに「行かなければ」と思い出させる。CMは新規顧客へ働きかけると勘違いする人もいるが、飲食店において広告というのは基本的にリピート率を上げるためのものだ。
SNS運用は理にかなっていて、定期的に店の露出をすることもできるし、新規顧客の獲得にも寄与する。
マクロ的に考えるのであれば、新規客に対して失敗をしたからといって必ずしもリピートされないというわけではない。まず多くの人間の記憶は曖昧で、美味しそうな広告イメージを見れば、美味しかったような気がするというものだ。いつもマクドナルドのハンバーガーが小さくても、広告を見ればマクドナルドに行ってしまうようなものだ。

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