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松方財政

概要

背景
①正貨(金、銀)の流出
【1】インフレの発生
【2】中央財政の逼迫
②インフレに伴う政府の財政困窮

内容
①歳入の増加
【1】緊縮財政
【2】増税
【3】官営事業払い下げ
②不換紙幣を処分し、兌換紙幣のみにする
【1】不換紙幣の処分
【2】日本銀行の設立

影響
①政府の財政好転
②企業勃興
③寄生地主制確立

ここから一つ一つについて説明していく。

背景

まず、背景として当時の日本は2つの経済的な危機に瀕していた。

①正貨(金、銀)の流出

②インフレに伴う政府の財政困窮


①正貨(金、銀)の流出
 当時の日本を含む列強各国は金本位制を採用しており(日本では実際は銀が貿易で使用されていたために事実上の金銀複本位制だった)、貿易の最終的なやりとりは金で行っていた。日本は1867年頃から輸入超過で、金や銀などの正貨が流出してしまった。国家が持つ正貨、つまり金銀の量は国家が発行しうる兌換紙幣(銀行に持っていけば金銀と交換できる紙幣、金銀によって通貨の信用が保たれている)の量を規定し、ないしは国家の財政力を左右するため正貨の減少は一大事である。

②インフレに伴う政府の財政困窮
【1】インフレの発生

 政府は1877年からの西南戦争の軍事費のため、大量のお金を必要とした。そのため政府は、発行量が正貨の量に限定される兌換紙幣ではなく不換紙幣を、また、国立銀行(国立銀行は、1872年に渋沢栄一の尽力で成立した国立銀行条例に基づき出来た銀行の総称。「国立」とは国法に基づく設立という意味で、国が運営してる訳ではない! 元々金と交換できなければいけない兌換銀行券しか発行できなかったが、1876年に兌換義務が排除されたため、国立銀行は増加した)は不換銀行券(銀行券とは銀行が発行する紙幣のこと)を大量に発行した。紙幣が大量に市場に出回ったことで激しいインフレ(紙幣の価値が下がり、物価上昇)が発生した。

【2】中央財政の逼迫

 当時の日本の財政のかなり多くの部分は農民からの地租収入によって賄われていた。地租収入は現金で収める仕組みで、米価の上下に関わらずいつも地価の3%という固定した財源が確保されている仕組みのはずだった。だが前項で述べた激しいインフレの影響で、銀などに比べた紙幣の価値が下がり、金額の上での歳入は変わらずとも、実質的に減収となってしまった。それにより中央の財政が困窮した。

内容

松方財政の狙いについて大きく2つに分けられる。

①歳入の増加

②不換紙幣を処分し、兌換紙幣のみにする


①歳入の増加
【1】緊縮財政

 緊縮財政を実施した。緊縮財政とはつまり、歳出の無駄をカットしていくという方針で、歳出ダウンとなり結果的に手元に残るお金が増加する。

【2】増税

 これはそのまま。たばこ税や酒造税などを導入し、増税して歳入増加。

【3】官営事業払い下げ 

 これは少し説明を要する。まず官営事業払い下げとは政府が当時持っていた官営模範工場を政商など民間の企業に売ることだ。これをすることによって政府はお金を得ることができ、民間企業は設備の整った工場を得ることができる。これを進めるため松方正義の前の大蔵卿(卿とは当時の日本の太政官制の中の役職名で、今でいう大臣的な役割)の大隈重信は工場払い下げ概則を発表し、官営事業払い下げを狙ったが、払い下げに必要な条件が厳しかったため、手を挙げる民間企業は少なかった。松方正義はその概則を廃止し、払い下げを容易にすることで本格的に払い下げに乗り出した。

②不換紙幣を処分し、兌換紙幣のみにする
【1】不換紙幣の処分

 上の背景でも説明したように、当時の日本では大量の不換紙幣、不換銀行券が流通しており、インフレに苦しんでいた。そこで松方正義はそれらを回収、焼却し新たな財政体制の建設に取り掛かる。

【2】日本銀行の設立

 1882年、日本銀行を設立した。日本銀行では銀兌換(紙幣が銀と交換できる)の日本銀行券を発行するようになり、日本は銀本位制に移行した。銀本位制に移行したことや、前項の不換紙幣を処分したことによって紙幣の絶対量が減り、デフレ(紙幣の価値が上がり、米価などの物価が下がる)が発生した。

影響

最後に、松方財政の影響は主に3つに分けられる。

①政府の財政好転

②企業勃興

③寄生地主制確立


①政府の財政好転
 
デフレが発生、つまり紙幣価値が上がった。紙幣価値が上がった影響で、毎年固定額で納められる地租収入の相対的価値が上がり、政府の財政が好転した。

②企業勃興
 
デフレによる紙幣価値の上昇や、紙幣を銀兌換である日本銀行券に統一したことで、紙幣の信用が確保され、民間の投資が促進された。それが結果的に株式会社の設立ブームである第一次企業勃興にも繋がった。

③寄生地主制確立
 
デフレで米や繭の価格が下がり、上の財政好転でも説明したように地租が相対的に上がった。地租が上がっても小作農が地主に払う小作料は現物納(お米で払う)なので、小作人の負担が重くなり、小作農の数が増加することに繋がった。小作農の増加に伴い、寄生地主制(地主は農業をせず、投資事業をするなど小作人に寄生している)が確立した。

松方財政のまとめ

背景
①正貨(金、銀)の流出
【1】インフレの発生
【2】中央財政の逼迫
②インフレに伴う政府の財政困窮

内容
①歳入の増加
【1】緊縮財政
【2】増税
【3】官営事業払い下げ
②不換紙幣を処分し、兌換紙幣のみにする
【1】不換紙幣の処分
【2】日本銀行の設立

影響
①政府の財政好転
②企業勃興
③寄生地主制確立

記事を書いてみて

 経済的なワードになるべく解説をいれたつもりだったが、結果的に見辛くなった感はある。やっぱり財政系の話は様々な事象が複雑に絡み合ってて難しいな〜と感じた。なんとなくわかってるつもりでも実際に文字化して柔らかく説明してみると自分が分かってない所が炙り出されて良いな〜と思う。めんどくさいけど。



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