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全国私立高校の調整給に関する解説と考察

こんにちは
今回の記事は私立学校の調整給についてです。
現在、文部科学省は本俸の4%にあたる公立教員の調整額の見直しを進めていますが、私立学校においては学校によって規定が異なります。

そこで今回は「私学教職員の諸手当等に関する ア ン ケ ー ト調査報告書(高校編)」を用いて、全国の私立学校の調整給を公立と比較しながら解説・考察していきます。

まず初めに、以下は「調整給に関する規定がある」と回答した全国130校の私学の支給の有無に関する表です。この表を見ると、専任教員であれば殆どの私学で調整給が支給されていると言えるでしょう。

むしろ気になったのは、130校のうち14校では非常勤講師にも調整給が支給されているということです。基本的に非常勤の給与はコマ数に応じて支給されるため、調整給は支給されないのが一般的です。自分がこれまで勤めてきた私学でも非常勤には支給されていませんでした。確かに非常勤であっても生徒からの質問、課題のチェック、試験の採点など授業外での時間的制約を受けることがあるため、14校の私学では非常勤であっても調整給が支給されていると考えられます。非常に珍しい事例です。

次に、以下は「調整給が支給されている」と回答した私学の支給方法に関する表です。

ここでは3パターンの支給方法が挙げられており、公立教員の場合はBのパターンの本俸×4%に該当します。専任の場合、55校の私学は公立と同じ支給方法ですが、53校の私学ではC.本俸+〇〇手当×〇%の支給方法が採られており、乗率・本俸が同じ場合、Bよりも支給される調整給は多くなります。

以下はBパターンの乗率に関する表です。

23校の私学(専任)は公立に近い4%前後ですが、29校の私学では公立よりも高い乗率(5~15%)が設定されており、10~15%がボリュームゾーンであることが分かります。なかには15%以上の私学も1校ですがあります。過去の記事で調整給の割合が本給の40%の私学を紹介したことがありますが、公立よりも調整給の乗率が高い私学が多いようです(乗率が高くても本俸が低い場合があるので注意は必要ですが…)。

例えば本俸が30万の場合、公立であれば月額12,000円(30万×4%)、10%の私学であれば月額30,000円なので、年間で216,000円の差が生じます。また、基本的に賞与は(本俸+調整給+扶養手当など)×〇カ月分なので、賞与にも差が生じることになります。

続いてC.(本俸+〇〇手当)×〇%のパターンですが、〇〇手当には主に
①扶養手当
②調整額
③扶養手当+役職手当
④扶養手当+教職調整額(調整手当)
⑤扶養手当+役職手当+教職調整額(調整手当)

の5パターンが挙げられています。

以下は①のパターンに関する表です。8校の私学では本俸に扶養手当が加算された額の10%~12%が調整給として支給されています。

扶養手当の額は私学によって異なりますが、公立の場合は対象者との続柄に応じて、月額6,500円~1万5,000円が支給されます。これに準じて本俸30万、扶養手当を月額26,500円(配偶者1人と0歳〜15歳の子ども2人)とした場合、公立教員の調整給は計算に扶養手当は含まれないため月額12,000円、12%の私学では月額39,180円((30万+26,500)×12%)、年間で326,160円の差が生じることになります。

②・③のパターンに関する表が以下になります。

②の「調整額」に関する資料がないため詳細は不明ですが、本俸に加算される分、本俸×〇%のパターンより額は高くなるでしょう(本俸を同額とした場合)。③のパターンで加算される役職手当は公立であれば、主任手当(教育業務連絡指導手当)が日額200円、管理職手当が校長15~20%、副校長15%、教頭12.5~15%、部主事8%程度相当額と文部科学省のページには記載されています。こうした役職手当も私立では公立と規定が異なりますが、調整給の増額につながってきます。

教員に支給される手当等について

最後に④・⑤のパターンに関する表です。

(本俸+扶養手当+教職調整額)×14%という私学や(本俸+扶養手当+役職手当+教職調整額)×20%という私学もあり、こうした私学では公立よりもかなり高い額の調整給が支給されることになります(本俸を同額とした場合)。

全体を通して、非常勤でも調整給が支給されたり、本俸の15%が調整給として支給されたり、本俸に扶養手当・役職手当・教職調整額が加算されたりなど独自の規定を設けている私学が多く、中には公立よりも高額の調整給が支給されているであろう私学もあることが見えてきました。

ただ、あくまでもこの記事では乗率や本俸に加算される手当の面からの解説・考察であり、記事でも触れていますが調整給は本俸にも大きく左右されるため、その点には注意が必要です。

現在、公立教員の調整給の増額が検討されていますが、こうした動きが私学にどのような影響を与えるかにも注目していきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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