見出し画像

国の借金について(その1)

2020年6月1日

現在発行残高1100兆円に膨れ上がった赤字国債の償還の財源のほとんどは徴税権を持つ国の税収入です(他は外国債の償還利益等)。

増え続ける国債発行残高の問題は以下のようなところにあると思われます。

1) 償還期限を迎えた国債の返済のための財源の問題。 返済金額は年々増え続けるので、好景気による税収増加がないと慢性的な財政難が続き、財政支出削減と増税の必要性に迫られる。

2) 財政難のため構造改革に使える財源がなく、経済、産業、福祉、教育などのあらゆる分野で社会システムの制度疲労が起き、経済と産業の停滞と後退が続く。

3) やはり財政難のため今回のコロナ禍のような突発的な災害、事件、事故に対して十分な対応が出来ない。財政が健全な外国諸国は、一時的に大量の赤字国債を発行をして国民への給付金等の財源に出来る。しかし日本は既にGDP比で世界一大量の赤字国債を発行しているので、劇的に発行額を増やしたときのリスク(長期金利上昇等)が大きすぎてそれが出来ない。

4) 財政支出削減(福祉、医療の切り捨て等)と増税の不安に国民がさらされ続ける。

5) 市場の動向により金利が決まる国債の金利上昇リスク。国債の長期金利が上がると経済全体、日銀の財務、為替等に極めて深刻な影響が出る。

日本の赤字国債の大量発行の問題は1970年代から言われ続けています。戦後復興と経済発展の立役者である戦後レジェンドたち、本田宗一郎や土光敏夫もこの問題を深く憂慮していました。

本田宗一郎「このままでは国が機能しなくなる」 "日本の借金"を30年前から案じていた偉人の言葉 - ログミーBiz
https://logmi.jp/business/articles/33830

**
2000年代の小泉政権でも、景気対策をしながら、赤字国債発行額を徐々に減らして行き、最終的に国の財政を黒字化することが政権の重要な目標とされました。いざなみ景気などでその目標に近づきつつあったのですが、2006年の首相任期終了時に多くの国民の期待に反して小泉が退任してしまったため実現することはありませんでした。

おそらくその後の全ての政権で国の財政健全化、プライマリーバランスの黒字化は政策として掲げられてきたと思います。しかし、景気の停滞により絵に描いたモチのように諦めと冷笑の対象でしかありませんでした。

現在これがあまり深刻な問題として取り上げられることが少ない理由は様々にあると思います。ですが最も大きい理由は、国の財政、経済、為替などについて、国民の間に不安が広がってしまうと、円資産の一斉売りが起こり、国の財政破綻が現実のものになってしまうからだと思います。政府と政府の意向を受けた保守論客たちが「国の借金はゼロリスク」を言い続けるのはこのためでしょう。

2019年度の国の一般会計と借金を、実感として理解しやすくするため、手取り年収360万円の個人家計に置き換えてみました

画像1

ーー
資本移動規制について

国の財政再建失敗や日銀の財務状況悪化が市場に知れわたり、円の信用が揺らいで来ると、皆が円を海外の資産に移し変えようとするので円売りが進み、ますます円の価値が下がってしまいます。円の価値が下がってしまうと国際市場で円が流通出来なくなるので、日本の経済破綻が現実のものになります。平時であれば政策金利を上げることで資金流出を回避するのですが、一旦通貨の信用が失われてしまうとパニックが起こり、平時の対応ではもはやどうすることも出来ません。最後の手段として政府が取れる方策が、資本移動規制、いわゆる預金封鎖です。円の流出と価値低下を防ぐため、円の流通そのものを止めてしまう荒業です。
近年の海外の例ではリーマンショックと欧州金融危機後のアイスランド、ギリシャがこれを行いました。預金が引き出せなくなるので国民生活は悲惨なことになってしまいます。

参考動画は2019年3月12日の参院予算委員会の公聴会での質疑応答の様子です。資本移動規制、ハイパーインフレなどについての話しがあります。
質問者:藤巻健史(日本維新の会参議院議員)
公述人:河村小百合(日本総合研究所上席主任研究員)
https://youtu.be/URLrzXpOhts

ーーーー
2020年5月28日
通貨発行元である中央銀行が民間上場企業の株価維持のために無分別に株を買いまくっている。リスク資産である株式の大量保有ですらどこの国でもやらない禁じ手であるのに、さらに日銀は政府発行額の約半分、日本のGDPに匹敵する500兆円もの国債を保有している。
これを見た外国人投資家たちは、日本の株式市場および市場経済が健全だと思うだろうか。円を信用しようと思うだろうか。。
通貨が通貨として価値を持ち流通する理由は、発行元である中央銀行への信任があるからである。
問題は、日本国民の多くが上記問題に気付いた場合、円資産の大量売りが起こるので、あっという間に日本経済が破綻してしまうことです。
MMTや「国の借金は日本国民のものではない」などのトンデモ理論を政府が必死になって国民に信じ込ませようとしているのもこれが故です。

ーーーー
2020年5月21日
この当たり前のこと、日本国の財政危機を口にするのをこの俺ですらためらってしまうほど、政権与党の「財政危機を声高に言う者は非国民」というプロパガンダは、今や日本人の津々浦々にまで広がっていて驚かされる。政権のマインドコントロール下にある保守派がこのプロパガンダに洗脳されるのは当然だが、リベラル派までこれに巻き込まれているのは「政権は財政に余裕があるにも関わらず、不当に財政支出を渋っている」という主張をするのに都合が良いからだ。
政権与党が最も恐れているのは、国民の間に財政危機の不安が広がり、政権が唯一心の拠り所としている国の借金1100兆を大きく超える個人資産が売られ、ドルやユーロ、金や仮想通貨などに変わることである。その時円の価値は暴落し、国債の長期金利ははね上がり、財政破綻は現実のものとなる。

ーーーー
(関連)
2020年度、コロナ禍対策費を含んだ補正予算と、国の借金(その3)
https://note.com/shig_matsuoka/n/n3296253869b7

国の借金について(その2)
https://note.com/shig_matsuoka/n/n2e55861f642c