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対中国、韓国ビジネスの重要性(その1)

2020年6月20日
「日本は中国、韓国に長年経済援助や技術供与をして、両国の発展を助けてきた。しかし両国からの感謝が足りない。中韓は恩知らずである」などの意見をネットでよく目にします。
しかしながら技術供与の多くは日本企業がライセンス料という見返りを得る目的で行ったものですし(20年程前、私が韓国の半導体開発、製造現場で仕事をしていた時に現地で聞いたことです)、経済援助には人道支援という目的だけではなく、発展途上国を成長させて将来の日本の市場にするという目的も含まれています。先の意見はあまりに一方的で恩着せがましい短絡的なものに思えます。

近年、中国、韓国が日本にとってどれだけ大きな市場に成長したか、日本の公的機関が公表しているデータを紹介しながら確認していきたいと思います。長らく経済と産業の停滞に苦しむ日本がどれほど中国と韓国の市場に恩恵を受けてきたかが分かると思います。
このことを知れば、先のような一方的で短絡的な意見が現実を映したものではないということが分かるでしょう。加えて米中貿易戦争て単純な善悪二元論で一方的にアメリカに肩入れしたり、韓国との関係悪化にもろ手を挙げて喜んだりという、短慮なことも出来ないのではないでしょうか。

《2018年度 対外売上高(日本からの輸出額、現地日本法人売上高、訪日客消費額)》

中国(香港含む)
 日本からの輸出額 19.7兆円(24.2%)
 現地日本法人売上高 54.0兆円(18.5%)
 訪日客消費額 1.9兆円(41.6%)
 合計 75.6兆円(20.0%)

75.6兆円という金額がどれほどのものかをより実感として理解するために企業の売上高を調べていて面白い偶然を発見しました。国内自動車メーカー全て(トヨタ、ホンダ、日産自、スズキ、マツダ、スバル、三菱自、いすゞ、日野自)の売上高を合計すると74.9兆円となり、対中国売上高合計の75.6兆円とほぼ一致するのです。
あくまで思考実験ですが、もし中国とのビジネスが全てなくなってしまった場合の損失と被害は、日本の最後の砦である国内自動車産業が消滅してしまった場合のそれと同じくらいだと考えられます。関連会社や下請け会社に及ぶ被害等も考えると恐ろしいですね。考えたくないです笑。

韓国
 日本からの輸出額 5.8兆円(7.1%)
 現地日本法人売上高 5.7兆円(2.0%)
 訪日客消費額 0.6兆円(13.0%)
 合計 12.1兆円(3.2%)

日産自動車1社の売上高は11.6兆円で12.1兆円に近いです。以下説明省略します笑。

アメリカ
 日本からの輸出額 15.5兆円(19.0%)
 現地日本法人売上高 89.7兆円(30.8%)
 訪日客消費額 0.3兆円(6.4%)
 合計 105.5兆円(28.0%)

台湾
 日本からの輸出額 4.7兆円(5.7%)
 現地日本法人売上高 5.4兆円(1.8%)
 訪日客消費額 0.6兆円(12.9%)
 合計 10.6兆円(2.8%)

全体
 日本からの輸出額 81.5兆円
 現地日本法人売上高 290.9兆円
 訪日客消費額 4.5兆円
 合計 376.9兆円

ーー
上記金額をより実感として理解出来るよう、比較対象として先にあげた国内自動車メーカーの売上と、2019年度の一般会計予算を以下に載せておきます。「対韓国輸出+売り上げの合計12.1兆円は公共事業費6.9兆円の1.75倍なんだな」みたいにお使いください笑。

《国内自動車メーカー売上高》
 トヨタ 30.2兆円
 ホンダ 15.9兆円
 日産自 11.6兆円
 スズキ 3.9兆円
 マツダ 3.6兆円
 スバル 3.2兆円
 三菱自 2.5兆円
 いすゞ 2.1兆円
 日野自 2.0兆円
 合計 74.9兆円


《2019年度 一般会計予算》

歳入
 赤字国債 32.7兆円(32.2%)
 所得税 19.9兆円(19.6%)
 消費税 19.4兆円(19.1%)
 法人税 12.9兆円(12.7%)
 その他 16.6兆円(16.4%)
 合計 101.5兆円

歳出
 社会保障 34.1兆円(33.6%)
 国債償還 23.5兆円(23.2%)
 地方交付金 16.0兆円(15.8%)
 公共事業 6.9兆円(6.8%)
 文教及び科学振興 5.6兆円(5.5%)
 防衛費 5.3兆円(5.2%)
 その他 10.1兆円(10.0%)
 合計 101.5兆円

ーー
出典
輸出額:JETRO 日本貿易振興機構
現地日本法人売上髙:経済産業省
訪日客消費額:観光庁
一般会計予算:財務省

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(関連)
対中国、韓国ビジネスの重要性(その2)
https://note.com/shig_matsuoka/n/naec14e970325