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喫茶店や民藝のような存在になりたい 

二子新地の小黒恵子童謡記念館でピアノの練習会をするのでよかったら来ませんか?とのお誘い。行く行くー♪

世界三大ピアノの一つベーゼンドルファー。
しかも普通の88鍵のものより9こ鍵盤が多い、97鍵盤。
左端の黒く塗ってある分が多い分。

なんでなんだろ。
このピアノでしか弾けない曲があるのかな?
いやいや、器の大きさが変わると響きが良くなるとかそういうことかしら。

私が大好きなシューマンのノベレッテン1番は、88鍵盤を結構フルに使う。
だから普段家で練習するときはギリギリ感があるがここのピアノは余裕があって、低音がめちゃくちゃ良い響きなのだ。

鍵盤を足そうと思った人、なぜ高音じゃなく低音を足したんだろう。
不可思議。
思議してはならぬ。ならぬということはないが
わからないままにしておこう。

でも、ありがとう。私は高音より低音の方が好き。

シューマンがノベレッテンを作った時は、ちょうど88鍵のピアノの鍵盤が世の中にでてきたあたりらしい。それまではもっと鍵盤数が少なかったのだと。で、その88鍵をフルに使ったダイナミックな曲を作りたかったのか否かはわからないけどこの曲ができた。タイミングよのお。

そんなこの曲を中学生の私に練習させてくれたその時の先生にも感謝で。だって当時はピアノの先生がこれを弾きなさいっていうものをただ弾くだけだもの。先生、ありがとう。

帰りの駅までの道のりに喫茶店がある。
店内は撮影禁止なので写真は撮ってない。
ただググれば沢山写真はでてくるので、見てみてほしい。すごーく素敵な店なのだ。

ふらっと立ち寄る。
ドアを開ける。
今の時間、食事の提供はできないけどいいですか?
今、コーヒーを淹れているのでお待ちください。

写真撮影禁止だしふらっと来たから本も持ってない。
手持ち無沙汰に店内を見回す。

蔵を改装した店内。天井が高い。
天気が良くて光が絶妙に差し込む中
控えめな音楽が心地よく響く。
目の前には素敵な焼き物に花がかざってある。
そのツルの曲線や花の表面の凹凸の美しさに目を見張る。

その時私の目の前にある行燈に灯りを灯してくれた。
実がついた葉っぱの柄かと思いきや
行燈の内側に植物をぶら下げているのだった。
灯りを灯すと葉と実が影になって柄になる。

あああああああああああ
正解!!
この店は写真撮影禁止、正解!

コーヒーが届く。
香りを嗅ぐ。
好きな曲がかかる。
涙が出そうになる。
Shazamする。
何度やっても全然認識かできない。
涙がすっと引く。笑
話し声が入るからか、響くからか。
わざと?わざとなのか?
本当に必要なものはどうしたって私の中に入ってくるのだから、ま、いっか。

shifukuのコンセプト↓

使い勝手がよく、完璧で素晴らしいことがいいわけではないと思っている。
たまにある不便さは愛おしくもあるから。

私の中で、ここは自分の五感を研ぎ澄ますための場所。
思えばshifukuもそう。

shifukuは音楽をかけていない。
最初はかけていたのだが、ふと音が途切れたときにきこえる

隣の喫茶店(今はもうない)からきこえるいろんな音、3階のレンタルスペースからきこえるコーラスの声や三味線を練習する音などなど、
この生活音が、私たちにとってのBGMだなあとおもって。
せっかく買ったハイレゾのスピーカーはインテリアと化している。それも乙。

たまたまみつけて初めて入る店に音楽がかかっていないとどうだろう。
振り子時計の音がしーんとした中にきこえるだけ。

入った店の内容に興味がなければ、拷問でしかなく、一瞬で出て行きたくなるだろう。

ただ、自分とドンピシャであれば、

わああ♡

と目の前のものに集中するから音楽がかかってるとかかかってないとか、全く気付く暇もなく。
話がふと途切れた時に振り子時計のチクタクが聴こえて

なんて良い音なの♡

となる。同じことが起こってるのに、感じる人によって全然別なものになる。

五感を研ぎ澄ます
見えるものだけではなく聴こえる音
木と革の香り、
柔らかったり硬かったりするものを
触って、着て、味わう時間。

私、こういうのが好きだったの!と
本来の自分に戻る場所

会社に着ていく服
友人と会う時に着て行く服
どこに着ていくのか謎な服

全て民藝だ。
ありふれた日常の中に美しさを見出すこと。
私たちの在り方に似ている。
偶然の産物。

何者でもないもの

民藝は日常だ。同時に特別なものだ。
特別なものにするのはそれを使う人だ。
特別なものを使うから特別な者になれるわけではない。
自分の所有物だとマウントをとるのではなく、
自分のものなど何もない、
自分も含めて世界の構成物にすぎないということ。
でもふとしたときにその美しさに気付く。

昔からずっと在る喫茶店も民藝の一部だと思う。
喫茶店や民藝のような存在になりたい。

#たまプラーザ #何やだろ#喫茶店#民藝#無音#五感

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