”日本外し” 世界への道を絶たれたゲーム CoD
私は怒っている。
なんて、言うのは生ぬるい感情だ。
キレた。
そして、その後には虚しさしか残らなかった。
今回はCoDというゲームをプレイしている人間だけでなく、eスポーツに携わる人間すべてに知ってほしいという観点が書いていく。
(このnoteは、5600文字 15分で読めます)
CoDのeスポーツシーン
まず、ことの発端から話していこと思うが、その前にCoDのeスポーツシーンの概要を説明していきたい。
Call of Duty という作品は、一口に言っても様々ある。本家とも言えるPCやPS機で行うFPSのチーム戦、Warzoneという流行りのバトロワ系、テンセント開発のmobile の3つがある。
今回は本家大元のお話である。
この本家は他のFPSゲームに違わず、eスポーツシーンが年々拡充されている。
eスポーツシーンのトップはCall of Duty League (CDL) である。フランチャイズ化されたプロリーグだ。
その下に、プロへの道としてChallengers が存在している。
以前のnote でも話している内容なので、手短に。
Challengers に日本のすべてのチームが属している。そのため、日本のトップチームが世界相手に戦う主戦場は、このChallengersだ。
この形は、2019-2020 年MWシーズンから始まっている。
Challengersといっても、地域ごとにわかれており、北米のNA、欧州のEU、アジア・オセアニア地域のAPAC、今シーズンからは中南米のLATAMと4つの地域でそれぞれ域内で争うことになる。
域内の大会が定期的に行われ、Challengers Pointを獲得していく。Pointによってランキング化され、上位であれば追加の大会に招待される・参加できるものである。
文字通り、プロへの道を行くにはPointを稼ぐことが第一なのだ。
そして、事件は起こる
12/4朝CDLから発表があった。
Challengersの最初の大会について、APAC地域だけまだ調整中だったが、このツイートで決まったということが発表された。
確かに、Challengers Scheduleのところに今までなかった、APAC分の日程が増えており、トーナメント管理を行うGameBattlesでもAPACトーナメントのページが増えていた。
ただ、誰もそのときは気づいていなかった。
しかし、このツイートから気づくことになる。
APACは再開されたため、私も日程以上のことは見ていなかった。
ただ
APACから、”JAPAN”が消えていたのだ。
以下のページは公式のルールブックだ。
中南米を追加したり、NAにジャマイカが追加されて拡張する中、APACだけが削減されたのだ。
そして、トーナメント管理のGameBattlesにおいても記載はなく、居住が日本の時点で、チーム作成ができなくなっている。
日本外しの意味
正直、日本だけでなく、韓国、フィリピンも外されているが、韓国やフィリピンはスケープゴートにされているだけだ。
なぜなら、APAC地域自体、オーストラリア・NZ勢(ANZ)が大半を占め、残りが日本勢という実情である。
その他の国・地域についてはあまりわからないが、韓国とフィリピンは出場がほとんどなく、反論がないという判断なのだろう。
そして、APACから日本が外されるという意味。
Challengersは、リストにある国と地域に居住しているチームが該当するNA、EU、APAC、LATAMのリスト表記のある地域に出場するということだ。
つまり、リストにないということは、日本居住である限り、APACはおろかどの地域の大会にも出場できないことを意味する。
一応、抜け道はいくつかある。
国籍の条項ではないため、日本国籍であろうともリストにある台湾や香港に居住しての参加であれば、可能ということ。
そして、Challengers Onlineに関する規定だということ。つまり、LAN=オフライン大会についての規定ではないということだ。
オーストラリアでオフライン開催のChallengersの大会があった場合、日本チームは現地参加することは、制限していないことにはなる。
ただ、読んでいれば気づくであろう。現実的ではないことに。
まず、居住を移すこと自体陸続きでない島国日本では非常にハードルが高い。これがEUの話であれば、比較的現実味はあるかもしれないが。
そして、オフライン参加。
これについては、現時点でのウイルスの流行状態では不透明すぎる話だ。
執筆時点では、オミクロン株が各国で感染者が見つかりつつある状況だ。
再流行すれば、オフライン大会など中止になる可能性は十分にある。
そもそも、オフライン大会があったとしても参加には相応のコストがかかる。APACから外されている以上、APACのオフライン大会が日本で開催されることはまずありえない。
つまり、オンライン大会は出場権がそもそも”ルール上”存在しない。
移動障壁、社会情勢によるオフライン大会の現実味のなさ。
ここから、導き出される結果はeスポーツシーンにおける日本の締め出しだ。
APACのChallengersに参加できないということは、Challengersの中でも上位の大会で出られないことになる。
CDLのプロチームに加入するのに、Challengers Pointが条件ではないものの、一つの指標にはなる上に、第一プロチームに見られる・注目されるためにもChallengersの大会は重要だ。
つまり、日本にいては、Challengersにも参加できず、CDLプロチームになる可能性が完全にゼロに等しいといっていい。
CoDにおいては、日本は世界から取り残されることになる。
日本全体で、eスポーツへの関心が俄に盛り上がりつつあるのにだ。
なぜなのか?
では、日本外しとなったのか。
まず、日本外しの内容は正式にアナウンスしておらず、サイレントの形で行われたのだ。運営元のActivisionがどのような意図でしたのかは、なおさらわかることなんてない。
そのため、この内容はCoDプロ対抗戦Rush GamingのリーダーでもあるGorou選手が話している動画をもとに話をすすめる。
ここで触れられている最も大きい問題がPingだ。
Pingとは、簡単に言えば、回線遅延の数値と考えればいい。
Pingの数値が高い=遅延が大きいことになる。
FPSの具体的な話で説明すれば、
画面上に敵を見つける
↓
プレイヤーはコントローラーを操作して、敵に合わせて射撃をする
↓
コントローラーの入力情報がゲームサーバーに届く
↓
ゲームサーバーで処理
↓
入力情報を反映、処理した結果を画面へ送り出す。
ここにおいて、回線遅延とはゲームサーバー間の回線のことを言う。
FPSは同時にいくつものプレイヤーが即座に色々なことを行う。
この状況で、相手プレイヤーと回線遅延に差があったとしよう。
相手の回線の方が遅延していると、自分の方が相手よりも先に行動できる状態だ。そのため、同時に撃ち合ったとしても実はそのつもりであって、現実には、回線有利な自分の方が先に撃っていることになる。
CoDのゲームとして、ホストを持つプレイヤーがカスタムゲームを作り、他のプレイヤーを招待してゲームを行う。
そのため、ゲームサーバーの基準はホストプレイヤーとなる。
つまり、どちらがホストをもつかで撃ち合いの有利不利に影響がある。
もちろん、Pingが低ければ、ホストをもつことの有利不利がなくなるため、フェアな戦いになる。
ただ、日本とANZで行うとPingが200以上になることが当然のレベルで回線遅延がひどい。
ANZとしてみれば、日本がホストを多くもつことになると圧倒的に不利になる。そのためANZトップ勢から不満がでた。
仮にこういうことが理由であれば、些か幼稚である。
これは、日本側からも同じであり、むしろ今までのChallengers Pointの取得から上位に割り振られているのはANZであり、ホスト回数はANZの方が持つ可能性が高い。
また、Pingの問題であれば、台湾や香港が除外されない事実もおかしい。地理的に東アジアの地域であり、ANZととの回線差は変わらないはず。
このPingの問題、日本側からも同じ状況であり、日本側としては”仕方ない”という考えが一般的だ。むしろ、過去にDDos攻撃を受けた事例があり、そちらの方が日本としては反感を買う内容だ。
なのに、ANZは不満を言う。Pingで勝てることがあるにもだ。
日本は、Pingのおかげで勝ててるという歪んだ考えのせいではないか?
日本チームは着実に実力をつけている。APACの大会でもベスト8に残れるのが普通になった。ベスト4に残ることも2,3回あった。
それを回線のせいと揶揄するのは、いささか僻みでしかない。
あるかもしれない理由
一応、他の可能性も考慮する。
その中で、一番可能性があうことは、日本のプロ対抗戦だ。
プロ対抗戦とは、昨シーズンから復活した、日本のトッププロによるリーグ戦のことだ。
こちらも詳しくは過去のnoteで取り扱っているので見てほしい。
ここでは2つ考えられる。
まずは、日本のSONYがCDLほどではないにしても、CDLのChallengersとは別の形で、開催しているということだ。
プロ対抗戦はWW2のタイミングで、開催しており、SONYとしては復活させたに近い感覚だ。
というのも、MWシーズンの途中でウイルスの流行により、すべてオンライン化にシフトした。
ただ、そのようなことがなければ、日本代表決定戦というプロ・アマ混同のオープントーナメントの大会の優勝チームをアメリカのChallengersトーナメントに派遣するものであった。
つまり、Challengersの下、付随する形で大会を開催していたのだが、派遣することができなくなってしまった。そのため、BOCWではそのようなことも含めて、プロ対抗戦の復活をさせた。
CDLを始め、Activisionが日本のSONYが独自の形をとったことが、気に触った可能性があるということ。
もう一つが、APACの途中棄権だ。
プロ対抗戦は日曜日丸一日使って試合を行う。一方APACトーナメントは土曜日曜日の2日開催で行っている。
ただ、APACに出場する日本チームがAPAC2日目に残っても、プロ対抗戦のために、2日目を棄権することが度々起こった。
規模は違えど、大会運営をする側の視点で言えば、あまり快くは思わない。
日本外しによる損失
まず、日本においては影響が多岐に渡る。
事実上、世界から切り離されることになる。
そのため、CoDのeスポーツシーンは日本国内だけとなる。
現状、最盛期と比べてCoDのプレイヤーや他のFPSとの相対的な立ち位置は下がっている。
他のeスポーツは世界に目を向けているのに、CoDだけがその逆をいくことになる。
このことの損失は致命的だ。
人もお金も、時間も熱意も、すべてCoDeスポーツから離れていくかもしれない。
eスポーツとしてのCoDは消え、ストリーマーのためのゲームコンテンツの一つに成り下がる可能性がある。
現状、CoDのeスポーツシーンはSONYが日本の公式として大会を開催。それ以外はコミュニティ大会となっている。つまり、SONYへの依存度が高いのだ。
ただ、SONYも営利企業だ。
マーケティング的な旨味がなくなれば、規模を縮小させる可能性は大いにあるのだ。
大げさすぎでは?
と思うかもしれないが、APACから外されたのだ。
次、いつ復帰できるのか定かではないのだ。
外された理由も明らかでないなら、何時なんてわかるわけがない。
そして、CDLなどActivisionにも影響はある。
APACは上でも話したが、日本を除けば主な担い手は、ANZだ。
地域的には東南アジアも含まれているが、まだまだ発展途上だ。
日本がいなくなることで、アジアの担い手がいなくなるのだ。
表現規制のため、CoDは中国ではできない。
(それを回避したのが、テンセントのmobileである)
日本、韓国、中国
が存在しないAPACとなるということは、つまりCoDのeスポーツシーンにおいてアジアはマーケティングの対象外と言っているのに等しい。
中国は別としても、現在の担い手である日本、元来eスポーツに力を入れている韓国を外すというのは、放棄したも同然だ。
地域特性で言えば、東南アジアはANZよりも東アジアとの結びつきは強い。
APACにおいて、東南アジアがANZとともに発展していくとは到底考えにくい。
マーケティングとして、アジアを捨てたeスポーツに未来はあるのか?
現に、Activisionは社内に問題を抱え、CDLにおいては12チームで行うところ、残り1チームの枠が埋まらないままだ。
CoD自体歪みがあるのだ。
これは今回とは別の話だが、現在ストリーマーで活躍するZeFa氏の動画も参考としてあげておきたい。
最後に、
CoD自体はずっと続けてきたゲームだ。廃れてほしくない。
だからこそ、このような愚行には怒りを覚える。
Activisionには、正しい行動を行ってもらいたい。
もちろん、これには日本外しの撤回のことだけではなく、
外すならその理由を明確にしてほしい。
そして、日本のCoD公式であるSONYには、ちゃんと行動をしてもらいたいし、世界との繋がりをなんとか残す努力をしてもらいたい。
(プロ対抗戦優勝チームを海外Challengersに派遣など)
CoDのみならず、eスポーツとしてみても異例のことが起こっている。他のeスポーツの方々にも、このことを覚えてほしい。
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Shiftkey について
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